第168話 私のパンツを漁ったことがある(陽菜視点)
4月最初の月曜日の午後、お母さんが恭介くんの家にお呼ばれしてお昼から出かけているので私は一人で机に向かって勉強していた。
ピンポーーーーン!
チャイムが鳴らされて、誰かが来たみたい。宅配便かな?
玄関のドアの覗き窓から外を見ようとしたら「ごめんくださ~い」と恭介くんの声がしたので慌てて鍵を開ける。
「いらっしゃい恭介くん。どうしたの? 今日って水泳部のプール開きじゃなかったっけ?」
見ると恭介くんはスポーツショップのロゴが入った紙袋とドラッグストアのマークが入った紙袋を抱えていた。
「ちょっとトラブっちゃって……その、家に帰ったらさちえさんが来てるみたいだったから今なら陽菜が一人かなって思って。陽菜に協力して欲しいことがあったから」
なんだろう、恭介くんの顔がちょっと赤い気がする。お外を歩いてきて暑かったのかな?
「とりあえず飲み物出すから上がってよ。私に協力できることだったらなんだってするから」
ちょっとドキドキしながら恭介くんをうちにあげる。
看護師の若山さんの「我慢出来なかったらいつでも病院を訪ねて来てね」というセリフを思い出してひょとして我慢できなくなっちゃったのかなって思う。
心臓が凄い勢いで鼓動している。相変わらずこの心臓は私のいうことを聞いてくれない。
キッチンとリビングには今まで何度も案内してるけど、お母さんが帰ってきたらすぐに見つかっちゃうから2階の私の部屋に案内する。
男の子が自分の部屋に来るのなんて中学生になって手術をする直前に恭ちゃんがお見舞いに来てくれた時以来だ。
あの時手術直前で不安で折れそうだった私に恭ちゃんがアメジストのペンダントをくれたのがこの部屋だった。この部屋だったって言っても「元の世界」のって前置きがついちゃうけど。
部屋に案内してクッションを渡して座って貰って大急ぎで紅茶を入れるために一階に降りる。
私は紅茶が好きなのでいろんな茶葉が揃っている。今日はルフナという私の一番好きな茶葉を選んだ。スリランカ産の紅茶でちょっと甘い感じがするのが気に入っている。
ポットに茶葉を入れてお湯を注いでカップとミルクポットを一緒にお盆にのせて大急ぎで部屋に戻る。
恭介くんなら大丈夫と思うけど、元の世界にいた恭ちゃんはちょっとエッチだったので部屋に一人にしてたらタンスから私のパンツを漁ったことがあるのだ。
部屋に帰ったら小学生の恭ちゃんが私のパンツを顔に仮面みたいにかぶって「フオオオオオオオオッ!!」と叫んでいた時はドン引きした。
幼馴染で好きな人だけど本当にドン引きした。
何も起こっていませんように(特にパンツをかぶっていませんように)とちょっと焦りながら部屋に戻ると恭介くんはキョロキョロこそしていたものの大人しくクッションに座っていた。やっぱり恭ちゃんと違って恭介くんは紳士だ。
慌てて上がってきたのは信じてなかったわけじゃないんだからね。本当だよ。
この部屋には恭介くんのおちんちんのアルバムも、私の日記もあるから見られたら困っちゃうなって思っていただけだから。
テーブルに恭介くんの分と自分の分のカップを並べて紅茶を入れる
「ミルクとお砂糖は?」
「ミルクだけお願い」
そういう所は恭ちゃんとは違うんだな。恭ちゃんは紅茶はたっぷりお砂糖が入っているのが好きだったから。今も味覚が変わっていないかは分からないけど。
二人で紅茶を飲む。無言だけど気まずくない。落ち着く感じ。恭介くんと一緒の時のこういう空気感が私は好きだ。
恭介くんが改まったように正座をして私の目をまっすぐ見つめて告げてきた。
「陽菜、俺の腋毛を剃ってくれないか」
わ、腋毛!? 腋毛なんて剃ったことないよ!
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当時恭介くんは変〇仮面もしくはHKを知ったようです。渾身のモノマネは陽菜には不発で不評でした。劇場版でももう10年前なんだなぁ。
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