第169話 恭介くんの勇気に応えるためだ(陽菜視点)
いろいろとある私のコンプレックスの一つなんだけど、実は私はアソコの毛と腋毛が生えていない。つるつるなのだ。しずくちゃんとお風呂に入った時にアソコに毛が生えててしずくちゃんは大人だなって思った。
「大人になったら生えてくるもん」ってずっと信じていたけど、保健の教科書で「第二次性徴……乳房が発達する。 陰毛、わき毛が生えてくる」って書いてあるのを見て愕然とした。
おっぱいはもう大きすぎるくらい大きいのに、今から第二次性徴が来て毛が生えてくれてもおっぱいがこれ以上大きくなったら困ってしまう。
逆に言うともう私には第二次性徴が来ていて、私は毛に恵まれなかったということだろう。
お母さんにちゃんと生えているのは昔お風呂に入った時に見ているから間違いないのにどうして私だけって思う。
ああ、意識が軽く現実逃避をしていた。
そう、腋毛だ! 恭介くんに腋毛を剃ってくれって頼まれたのだ。
話を聞くと今日のプール開きで恭介くんは水着選びに失敗してトラブルになったらしい。
トラブルの内容は詳しくは教えてくれなかったけどどうせ恭介くんのことだからエッチなことをして女の人を困らせたに違いない。
そして最終的に新しい水着を買って腋毛を剃ってくるように命令されて帰って来たらしい。
「明日までに腋毛を剃らなくちゃいけないんだけど腋毛なんて剃ったことがないから不安で……それに右利きだから左手で右の腋を剃るなんてできそうにないから」
一回つるつるになっていれば安全カミソリでどうにかできるんじゃないかと思うってことだった。
そう言われても私も一回も剃ったことがない。私つるつるだから。
恭介くんは当然のように私が今までに自分の腋毛を剃ったことがあって上手に剃ってくれると思っているんだろう。
ちょっと不安だから断ろうかと思ったが、そしたらどうなるかと考えてしまった。
うちのお母さんとか嬉々として恭介くんの腋を剃っている光景が思い浮かぶ。
なんだかモヤモヤしてちょっとイラっとする。腋毛の剃り方をネットで調べてどうにかしようと誓う。
これは独占欲とかじゃなくて、勇気を出して私を頼ってくれた恭介くんがもう一回恥ずかしい思いをして他の人に頼まなくて良いようにするためなのだ。
そう、恭介くんの勇気に応えるためだ。
私はぎゅっと握りこぶしを握って答える。
「分かったよ。恭介くんの腋は私がつるっつるにしてあげる!」
スポーツ用品店の袋には新しい水着が、ドラッグストアの袋には剃毛のための道具が入っているそうだ。
とりあえずお風呂場に恭介くんを連れて行き、水着に着替えて貰う間に大急ぎでスマホで「腋毛 剃毛」と検索して自分も短パンとTシャツに着替える。ふんふん、なるほどとりあえずシャワーで温めてシェービングフォームを塗ってカミソリで剃ればいいみたい。
それなら私にもできそうな気がする。
給湯器のスイッチを入れて脱衣所のドアをノックすると「ああ、着替え終わったから入っていいよ」と声をかけられる。
脱衣所に入ると上半身裸で下半身はピチピチの布地の少ない黒いパンツをはいて、なぜか両手で自分自身を抱きしめるようにして両手の平でおっぱいを包むようにして乳首を隠している恭介くんがいた。
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腋毛を剃るだけの話が1話で終わらなかった……続きます。
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