第143話 うちの孫娘はイイ体してるだろ? どうだい?

「結構なお手前で」


 どうにかお茶を飲み茶菓子を食べてお茶の時間を終える。

 委員長が子供を見つめるような慈愛の瞳で俺のことを見ているところをみると俺の作法はでたらめだったんだろうな。


「そういえばあの小烏こがらすひよりとかいう娘の奉納舞なかなか見事だったじゃないか。それに剣の腕も立ちそうだ。

 小烏こがらす道場とか言ったか援助してやろうか?」

 琴乃刀自から軽い感じで聞かれる。純粋なパトロンの申し出なら嬉しいがこの人の場合は裏がありそうだし。


「いえ、今自力での再建のスタートラインに立ったところですからこのまま見守ってもらえたらありがたいです。今回のイベントへのご助力、本当にありがとうございます」

 言って深く頭を垂れる。俺が下げて丸く収まるならいくらでも頭を下げよう。


「それはそうとして多々良恭介、アンタはなんだって?」


 ゲホゲホッグッ


 思わずむせてしまう。お茶を飲んでいる最中でなくて良かった。この話をお茶を飲んでる最中にされていたらお茶を噴いていたかもしれない。

 チラっと委員長の方を見ると目を丸くしているので初耳で知らなかったらしい。このババア、ワザと俺がいるタイミングで委員長に聞かせやがったな。


 口が悪くなりそうなのを必死で抑え込み答える。

「ええ、病院からはそういう診断をされています。どこからそのことを?」

 知っているのは陽菜とさちえさん、担任のちさと先生と刑事のみなもさん、それと診断を下した病院か……皆守秘義務のある仕事か俺が信頼している人ばかりだ。どうやって知られた。


「なぁに、簡単なことさね。あの病院は私が出資していてアタシは理事長だからね。個人情報保護なんてあってないようなものさ」

 うわぁ……病人の個人情報をあっさりと……本当に孫娘のためなら何でもするな。


「それで困ってることや不便なことはないのかい? うちの孫娘はイイ体してるだろ? どうだい?」

 なんの話をしてやがる! 委員長が耳まで真っ赤になってるだろ。


「きょ、恭介さんそういう病気になっちゃってたんですね。私に出来ることならば何だって協力いたします」

 真っ赤な顔をした委員長が初めて俺の病気をカミングアウトした時の陽菜とそっくりなことを言ってくる。


 よ~し、このクソババア! さちえさんと一緒に俺のブラックリスト入り決定だ! 覚悟しろよ!

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 本日1日3話公開

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