第139話 なんとなく巫女さんが柔らかくなったような
俺と
小烏の悲願である道場の存続のために出来ることは一つでもしておきたいということでお願いしたものだ。
「凄かったよ小烏さん、多々良くん」
舞台を降りるとさんご先輩が駆け寄ってきてくれて俺のことを支えてくれた。
小烏の一閃を受けて俺も驚くほど消耗していたらしい。小烏には藤岡が手を貸していた。
二人に支えられるようにして皆で控室に戻り藤岡は小烏が羽織っていた
春先の気温の中でも重ね着しての激しい動き、いつもはない人々の視線、真剣を振るう緊張感などで小烏といえども消耗は隠せないらしい。
「小烏、右手を顔の横に上げてくれるか?」
一息つくと小烏にお願いする。右手を挙げた小烏と俺の右手でハイタッチする。
パァァンッ!
「お疲れ小烏! 本当に凄かった。努力してきたお前に軽々しく天才なんて言ったらダメだと思うけど本当にお前は天才だと思う」
「本当に凄かったよひよりっち……あーし手が震えて撮影できなくなりそうだった」
「私も見惚れちゃってシャッターチャンスを逃さないように必死だったよ」
三人が口々に褒めるがこのくらいでは全く小烏のしたことに足りない気がした。
「ありがとうみんな……皆のおかげで今の私がある」
小烏が涙ぐんでいる。巫女になった刀剣女士の涙は本当に綺麗だった。
何も言わずにさんご先輩の方に腕を伸ばす。カメラを渡してもらった。
そのまま自分でピントを合わせてシャッターを切る。俺が今日一番撮りたいと思っていた巫女の写真は泣き顔だった……嬉し涙だけどな。
その後は控室を出て俺はトイレで適当に着替えて普通のジーンズとシャツ姿になった。
控室から出てきた小烏は桜色のスカートに白いカーディガンを合わせていてなんとなく巫女さんが柔らかくなったようなイメージだった。
「今日はえらく可愛い格好なんだなひより」と俺がそのままの感想を伝えると小烏は真っ赤になって「今日は春らしい格好をだな」と言い訳しているので三人で笑ってしまった。
赤くなった小烏の写真をさんご先輩が撮っていたので後で忘れずに貰おうと思う。
その後は四人で移動して桜の木の下にレジャーシートを敷いて俺の手作りの弁当を広げた。
さんご先輩は俺が弁当を作れることにいたく驚いていたが美味しい美味しいとおにぎりを二つも食べてくれた。
おにぎりの具におかかやシーチキン、昆布などいろんなものを入れていたのだが、冗談で入れたロシアンおにぎりのワサビは見事に藤岡が引き当てた。
ヒクヒクしながら何故か嬉しそうなのは藤岡のドM体質の賜物だろうか? 喜んでもらえて何よりだが冗談でも今日の小烏に当たらなくて良かったとも思った。
おにぎりや弁当ではねぎらえないかもしれないが小烏が本当に幸せそうで頑張った甲斐を感じることが出来た。
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