第140話 スポーツ全般に関して丸川は天才

 昼ご飯を食べ終わると4人で奉納舞と剣舞で使った道具を片付けて小烏こがらすは神社に預かって貰っていた小烏家の太刀を受け取り小烏家の車に積み込んでいく。

 剣舞で切った巻き藁や木刀を持ち帰る。木刀の切り口をみるとすっぱり綺麗なまっ平らな切り口でその切れ味に少しゾッとする。


 積み込み終わってこのメンバーに関しては解散。お弁当で本当の意味でお礼になったとは思えないからまた改めて何かお礼をしたい。

 小烏はそのまま車で道場に帰り、さんご先輩と藤岡はもう少し桜の写真を撮っていくそうだ。


 俺の荷物はまだ神社で預かってもらえるということでポケットに財布と携帯だけを入れて丸川と合流する。

 朝も待ち合わせに使った鳥居の前で待っていると3時を5分ほど過ぎたところで「きょーちんっ!」と元気な声がして後ろから背中に飛びつかれた。


 小柄なので全然重くないが、いつもしているじゃれあいなので振り落とそうと回転して振り回す。するとますますしがみつくという勝負がしばらく続いて最後には丸川が自分から飛び降りた。

 丸川のは小柄で小ぶりではあるけど背中に抱きつかれると確実に小烏より大きいし存在感はある。何についての話かは小烏の名誉のために伏せておこう。


 背中から降りた丸川に向き合うとポニーテールの小柄な女の子が目の前で満面の笑みで笑っている。今日の格好はズボンにジャンパーという女っ気のない服装だった。


「カーニバルだよ! おやつの時間だよ」

 よっぽど楽しみにしていたらしい。小烏の奉納舞と剣舞を見ていたらしく「ひよよんすごかったね~」などと言うので同意すると鳥居のわきの空きスペースで丸川があの「奉納舞」を再現してみせる。


 驚くことにその奉納舞はものすごい再現度でいつもアホの子扱いしているのが申し訳ないほど神々しさを感じる。まるでさっきの小烏のミニチュアを見ているみたいだ。


 確か委員長と藤岡からスポーツ全般に関して丸川は天才なのだと聞いている。背中にしがみついている女の子を俺が本気で振り払いにかかっても振り落とさず結局自分から軽々飛び降りて綺麗に着地いるのだからその身体能力の高さがうかがえるだろう。


 放課後の通常の部活には参加していないらしいが、いくつかの部には助っ人要員として大会の時だけ駆り出されるといったマンガのスポーツ万能キャラみたないことをガチでしているらしい。もっとも個人戦には出ないから個人タイトルは持っていないらしいが。


「丸川ってなんでどこか一つの部に入らないんだ?」

 思わず聞いてしまう。今まで話には聞いていたがここまですごいとは思っていなかった。


「う~ん、まるはあんまり決められたことを毎日するとか守れないからそういうのが向いてないんだよ。だから分かってくれる人が一緒にやりたいって時だけ一緒にやるのが一番楽しいんだよ」

 体育会系の多い高校の部活動では収まらない才能の持ち主ということになるのかもしれない。弱小チームが助っ人で呼ぶ分にはいいだろうが真面目にやっている部員にとっては腹立たしい存在なんだろうな。


 今日はあんまり時間を取れないが丸川のことをしっかり楽しませてやろうと思った。

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