第99話 スマホで映画館の上映作品を調べていた

 ピンポーン! 陽菜の家のチャイムを押す。10日前にこのチャイムを押した時はすごい緊張感だったことを思い出すとたったの10日間での自分の心境の変化に驚く。


 ガチャッ

 ドアが開いて陽菜が姿を現す。今日は長い髪を一つにまとめて右側から前に流し、タートルネックの白いセーターに黒のひざ丈のスカート合わせて可愛くまとめている。

 今日はサイクルコンピューターを買いに行くと伝えているので歩くかもと考えてスニーカーを履いてくれている。

 白のショルダーバッグをかけているけど女の子のショルダーバッグってなんであんなに小さくて何も入らなさそうなんだろう。


 お化粧はナチュラルメイクって感じですっぴんとあんまり印象が変わらないから陽菜の可愛さが際立っていた。

「今日の陽菜も可愛いよ。それじゃあ行こうか。街に出るからまずは駅まで行こう」

 褒められた陽菜がちょと赤くなって恥ずかしがるのはとても可愛かった。

 こんな時に手元にカメラがないのが惜しい。後でスマホで撮ってもよかったのかと気付いてちょっと残念に思った。


「きょ、恭介くんもかっこいいよ。大人っぽくって」

 今日の俺の格好は先日の桜島先輩との買い物での失敗を反省してちゃんと透けないように下着の上にシャツを着た上でジャケットを羽織っている。下は黒のスキニージーンズ。陽菜を相手に先日のような失敗を繰り返すわけにはいかない。


 朝も乗った自転車にもう一回跨る陽菜。ジャケットを脱いで自転車の前カゴで預かって貰い軽くランニングしながら駅まで移動する。土曜日なので電車は通勤客が少ない分空いていて座ることが出来た。


「サイクルコンピューターを買う前に映画でも見ようかと思ってるけど何か見たい映画ある?」

 電車の中で陽菜に聞いてみる。事前に調べたが新作アクション映画や恋愛映画、特撮映画の新作などが公開されているようだ。


 スマホで映画館の上映作品を調べていた陽菜がトラえもんとつぶやくとにっこり笑って「トラえもんを見てみたい」と言い出した。

 一応説明しておくと向こうの世界の令和がこちらの貞操逆転世界において礼和になっていたように、むこうのネコ型ロボットはこちらではトラ型ロボットになっている。内容はほとんど同じものらしい。俺はまだ見たことがなかった。


 ショッピングモールに入っているシネコンタイプの映画館にたどりついて上映作品を見るとトラえもんの映画の新作が公開されたばかりのようだった。今年の映画は完全新作で、去年は昔の劇場版のリメイクだったらしい。

 高校生になってトラえもんを見るのはちょっと恥ずかしいけど、元の世界で陽菜と二人で初めて見に行った映画がド〇えもんだったことを思い出して懐かしくなったので二人でトラえもんを見に行くことに決めた。こっちの世界のヒナもトラえもんを多々良恭介と見たのだろうか?


 映画館でチケットを買って真ん中の少し後ろより辺りの席に座ったら、俺たちより前のほうは画面を少しでも近くで見たいお子様たちがいっぱい座っていた。

 ポップコーンを買ったので陽菜と摘まみながら映画を見ていたのだが、結構空の国のパラレルワールドとか自分の身に降りかかったことを思い出す描写も多く、意外なほど集中して見てしまった。ストーリー部分は面白かったのだが流石は貞操逆転世界、最後まですんなりを終わらせてくれなかった。


 劇場版ならではのサービスシーンでしず〇ちゃんがシャワーを浴びるかと思ったら、シャワーを浴びているのがの○太だった。

 ……何を言っているか分からないと思うがサービスはなのだ。

 そして決めゼリフはシャワーを覗いたしず○ちゃんに対して「わーーーっ!しず○ちゃんのエッチ!!」というものだった。


 あまりの驚いて手につまんでいたポップコーンを落としてしまった。

 これがサービスシーンなの? 周りの子供たち(特に女の子)がめちゃくちゃ笑ってるし……ヒナの方を見るとバッチリ書かれている君のおちんちんをビックリした目でガン見していた。いや、の〇太のおちんちんは元の世界でも結構バッチリ書かれていたけどね。

 こんなところまで貞操逆転世界は逆転してるんだなぁと感心する羽目になった。

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 どこかからツッコミが入ったら「トラえもん」も伏字にします。こういうこともあるのかなというお話。


 本日1日3話公開

 毎日朝6時と昼12時夕方18時に最新話公開中

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