第45話 ちょ、せ、先輩そんなの困ります
その「光画部」と書かれた部室から出てきた女子は俺の顔を見ながら話しかけてきた。
「ああ、やっぱり多々良くんだ。声が聞こえたから出て来てみたけど……おひさしぶり。退院したんだね。おめでとう。
今日は部活に出てきてくれたの?」
どうやらここが写真部らしい。部室のプレートには「光画部」と書かれている。なんて読むんだろう? ひかりがぶ? なんにせよ光画部=写真部ということは間違いないらしい。
「先輩、部室まで案内してくれてありがとうございます。今度お礼を……」
言いかける俺の手を振り切ってここまで案内してくれた先輩が脱兎のように走り去って階段を下っていった。
さっきまであんなにはぁはぁいって苦しそうだったのに大丈夫かな?
「ちくしょ~っ! 高校卒業前に警戒心のないイケメンで処女を卒業するチャンスだったのにぃぃぃぃ~~~~!!」
名前も聞けなかった先輩が遠くで何か叫んでいたが廊下に反響してはっきり聞こえなかった。
「知ってる人? すごい勢いで逃げて行ったねぇ。私がいると都合が悪いことでもあったのかな?」
不思議そうな顔で光画部部員がいって、扉をスライドさせて全開にする。
「
とすごく嬉しそうににかっと笑ってくれる。背が低くて活発そうなボーイッシュな感じの女の子。髪は短くて胸はあんまり大きくなくて全体的にほっそりしている。
この学校は上履きの色で学年が分かったりする。一年の俺は青、二年生は緑で、三年生は赤だ。上履きの色が緑だったので二年生だと判断する。とりあえず名前が分かるまでは「先輩」って呼んでおこう。
あ、ちなみに上履きの色は学年ごとの持ち上がりで、来年は今年卒業する三年生の赤色が一年生に回って、俺たち二年生が青、目の前にいる先輩たち三年生が緑になる。
閑話休題
光画部の部室の中に入ると古そうなカメラが棚に何台も置いてあったり、よく分からない台の上に垂直の棒が立っていて、その上の方にレンズのついた箱が乗っている機械があったりした。
初めて見る機械だなぁと思いながら眺めてると
「そんなに真剣な顔で引き伸ばし器を眺めて……ひょっとして私と(同じようにフィルムカメラを)ヤッてみる気になったの? 嬉しい♡」
いきなり光画部先輩の圧が強くなってグイグイ来て両手を握られた。
「ちょ、せ、先輩そんなの困ります」俺は真っ赤になって断るのがやっとだった。
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