第44話 「光画部」とプレートのつけられた部室
陽菜と一緒にお弁当を食べてから、午後の授業を受ける。
5限はちさと先生の現国の授業だったが、貞操逆転世界の文学史は俺の知っている文学史とは少しずつ違っている部分があったりするようなので今までの世界の記憶でそのままテストを受けないように気を付けた方がいいのかもしれない。
元の世界でも俺は今まで芸術は「神をたたえ、女性の美しさを表現する」ものだと思っていたが、こちらの世界では「男性の逞しいセクシーさ」こそ表現するべきものとしているように思えた。
これだけ感性も歴史も違うのになんで俺のクラスメイトの構成、人数、名前まで元の世界と同じなのかはよく分からない。男子17人、女子18人、不明? 1人(ゆうき)の36人。元の世界では男子18人(ゴリラを一頭含む)、女子18人だった。
俺の両親も馴れ初めは違っているようだが、幼馴染同士で結婚した事実には変わりないようだし……。
元の世界との類似性については考えても分からない。意外と元の世界で担任だったバーコードリーダー浜地と今の担任のちさと先生が別人なのが重要なことなのかもしれない。しかし、二つの世界の間の検証方法などは存在しないし相談できる相手もいないから無駄に考え事をして時間を潰しているだけだった。
退屈な文学史の授業でもちさと先生は文豪たちの性癖や身体的特徴までネタにして笑いをとっていた。
下ネタの度に女子が嬉しそうにキャッキャッと笑い、男子が真っ赤な顔をしてうつむいているというのは想像以上に見たくない光景だった。
赤面男子たちの顔が俺にとっては考えていた以上に気持ち悪いという現実から逃れるために浮かんだ、うたかたみたいな思考として俺は二つの世界のことを無駄に考え続けるのだった。
放課後、ちさと先生に呼び出されていたが少し時間をおいてから遅めの時間に来て欲しいと指定されている。
水泳部に挨拶に行くには時間があまりないから写真部に退院の報告とゆうきと行くことになってしまった「夏の写真撮影旅行 in 南の島」の相談をしておこうと思ったのだ。
写真部を探して校内をうろうろするが部室がなかなか見つからない。
一時間後のちさと先生との約束の予定時間までかかったらいけないから時短のためにその辺にいる上級生の女子生徒に声をかけた。
写真部の場所を知っているというので教えてもらうことにしたが旧校舎の方らしくいまいち場所が分かりにくい。
すると先輩が案内してあげると言ってわざわざ俺の手を握って先導してくれた。階段を上る時赤い顔をしてはぁはぁいいながら先導してくれる先輩。
心臓が悪いんだろうか? とにかく俺の手を引いてどんどんひとけがない方に向かう先輩。
この廊下の先の階段は屋上に続いているだけだと思うが俺の手をグイグイ引きながらどんどん進んでいく。「はぁはぁ……ヤレル…これはイケる…」ブツブツつぶやく先輩。
「ずいぶん離れているんですね。息が荒くなっていますけど大丈夫ですか? 本当にわざわざありがとうございます」
先輩にお礼を言うと丁度通過しようと思っていた「光画部」とプレートのつけられた部室(?)の扉がカラカラと横に開いて一人の女子生徒が顔を出した。
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