第19話 岩清水が何故か涙目になっていた
「次、丸川! 入室前にノックをすることを覚えろ。そしてノックの返事があるまでステイだ」
気分はもう犬のしつけである。自分のスマホを悲しそうに握りしめている白ギャルの藤岡を無視して丸川に説教を始めた。
「まるだよ」
「ん!? どういうこと?」
「だから「まる」って呼んで欲しいんだよ」
丸川のどかなのに「のどっち」とかじゃないんだ。そしてこの世界の女子マジでグイグイ来る。
これって元の世界で男子が女子に「俺のことは〇〇って呼んでよね」っていうのと同じ感じなのか?
「……え~と、まる、ドアを開けるときはノック、それと男子は恥ずかしがり屋さんが多いからあんまりガン見しちゃダメ」
説教の勢いがなくなってしまった。嬉しそうににぱーっと笑いながら「分かったー」と言われるとそれ以上何か言う気持ちもなくなってしまう。
おバカな子ってちょっと可愛いかもって思ってしまった……がこんなまるでさえも獲物を狙うを獣の目で俺の裸を見ていたのは忘れることができそうにない。
まあ、元の世界で考えるとどんな状況下でも上半身裸の女子高生がいたら男子の目は獣の目になって股間は獣のヤリになるだろう。
「え~……のどっちズルい~。それだったらアタシもミオミオとか呼んで欲しい」
藤岡が言ってくる。それ「センス無さすぎ」ってバッサリ斬られるやつだと思うけどいいの? それに藤岡みおで「みお」呼びなら二文字でいいのに文字数が倍になってるし。
「分かった……今度からは藤岡のことはみおって呼ぶから。」
半分受け入れる折衷案? ミオミオの半分でこれからは藤岡のことをみおって呼ぶことにする。
「それじゃあ、まる、みお。これからよろしくな。もうちょっと入院が続くし暇だから気軽に遊びに来てくれ」
PTSDの症状もずいぶん軽くなってるし、退院もそう遠くない(と思いたい)。
正座してる三人に立っていいよと言うと岩清水が何かを期待した目で俺のことを見てくる。
「わ、わたしのことはしずくって呼んで」小声でごにょごにょ言っているが、
「ん、委員長何か言った?」
「委員長は委員長なんだよ~」
「諦めなって……委員長……」
藤岡にポンッと肩を叩かれて岩清水が何故か涙目になっていた。
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