10.Summer movie


いつもと同じ雑踏に 肩を奪われて

いつもと違う僕らは 踵を突き上げて

背中を向けて 遠くへ ずっと遠くへ歩いていく

今も忘れない 夏の映画のエンドロール


この世界の果てには 君がもういない

強がった僕の言葉に 太陽が季節を分けていく

「この手を離さないでね」

僕の強がりを信じた君が 昔呟いて

ぎこちなく手をつないでいた


それだけでいい

君だけで良かったと

この恋が終わらないように 乞い願う

太陽よ まだ笑っていろよ


まばゆい光に はじけ飛んだ時間が今

君の微笑みに ぶつかって消えていく

そうか ここが世界の果て

君がいない大切なこの季節が さぁ始まるよ




いつもと違う朝食に 唇とがらせて

いつもと同じ僕には 腹が満たされない

カーテンを開けて 遠くの ずっと遠くの空見上げる

もう忘れてしまった 夏の映画のプロローグ


この世界のどこでも 僕は満たされない

弱くなった僕の心に 太陽が苦笑いをこぼす

「怖いものなんてないさ」

僕の強がりが混じった言葉 ぽつり呟いて

震える肩を抱いていた


それでもいい

僕だけで良かったと

あの恋が終ってしまったと 泣き叫ぶ

太陽よ 僕を笑うなよ


輝く笑顔と 高鳴った想いがもう

僕だけの夏に 陽炎と消えていく

そうか ここが世界の終わり

君と出会った温かなこの季節は どこにもない



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