5.するめ


温かな縁側 足をのばして おなか鳴らす

炭で焼いている 深い海の香り

鼻はもう慣れて わたしの目は輝く

隣のあなた ぽつぽつと

思い出 濡らしていく


「いつか好きな人が出来たら」なんて

この味は わたしだけのもの

この場所は わたしとあなたのもの

噛み締める すっぱいような甘い物語


「遠い昔のあたしはもっと綺麗だったよ」

まるで海にきらめく 人魚のような

セピア色の写真 眺めて

ほっと息をつく


この味は いつまでも無くならない

これからも わたしと一緒に

日差し浴びて 生きていこう

温かな居場所 深い思い出に浸りながら




温かな日差し こぶしかざして 肩を揺らす

炭が爆ぜている 舞い散る塩の香り

風が少し吹き あなたの目が曇る 

隣のわたし 「大丈夫?」と

背中 さすって撫でる


「いつかあたしが年を取って」なんて

その言葉は まだ言わないで

その場所は まだ遠いはずだから

抱き締める 苦いような悲しい物語


「近い未来のあなたはもっと綺麗になるねぇ」

まるで空に輝く 一番星のような

大人のわたし 想像して

ほっと息をつく


この背中 いつまで温かいかな

これからも 優しい顔のまま

生きていたいと 思えるような

温かな居場所 踊る未来を語っていこう




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る