第8話 CHARGE ALIVE

少し前大王たいようは絶賛交戦中だった。35号の白兵戦プログラムを一時的に解除し、迎え撃つ。大王自身も手にゴツイ見た目とは裏腹に軽い拳銃と、4.6口径の旧ドイツ製のPDWを肩にかけ、征圧せんと迫る廻天自衛隊かいてんじえいたいの侵攻を地の利とハイテクを使い何とか凌いでいた。

「5時方向の天自はトラップあるから…見るべきは9時! 10秒前! そこだ!」

だだだだだだだだ! 構えた2つのグリップで構えたPDWが火を吹く。脚に当たるよう角度を調整し…

『ぐぅ!』歩けないようにして無力化。

「すまないね。行くぞ35号!」

ぴぴっ!

ゴーグルをかけると返事をした二台の35号を引き連れ廊下を進む。相手の情報はこのゴーグルに投影されるレーダーで全ての床が感圧センサーできているが故に丸わかり。手のひらの上。

と、

ごぉぉぉぉぉぉん!

「おっと…この振動は! どっちが倒れたんだ? あ〜ダメだ、抑えきれてないな。コッチも、アッチも…! センサーに反応、3時。」

角で拳銃を構える。

「ふぅ…。今!」

一気に身を乗り出し射撃!

するはずだった。

「ロボットだと!?」

二足歩行のロボットが3台ガシンガシンと音を立て向かってきていた。盾を構えている。舌打ちを1つ零すと、急いで先程まで身を預けていた角に戻る…それが命取りだった。

「なっ?!」

ヴィーンッ!

7枚のプロペラで向かってくる飛行物体。機銃付き。

「自立型の攻略ドローン! ヒトの犠牲少なくて人道的ってか!?」

ずばばばばばばばばッ!

ドローンは容赦無かった。何発かが大王のゴーグルを砕き、同胞とも言える35号が大王を庇っても撃つ手は止めなかった。

角を曲がれば盾ロボット、後ろからはドローン。

カンっ、カンっ!

かわいた音を立てて35号は耐える。

一台の35号が身を張っている間に、もう一台の35号を盾に相手の二足歩行ロボットの方へ向かう。

「達者でな!」

ピピッ!

別れを告げると盾ロボットを35号を踏み台に飛び越える。通路幅いっぱいにひろがった盾ロボットは旋回ができない。後ろから拳銃をぶっぱなす。

ゆっくりそれらは起動を停止する…が、踏み台にした35号はそこで大王の追従ができなくなってしまった。

「お前も! 休めよ!」

ぴっ!

一人で進んで行った。意外にもある身体能力をふんだんに活かし、進んでいき…

「マジかっ、静かすぎだろ最近のは!」

目の前には多数のドローン

ニヤリと笑った時、直ぐにドローンの発砲は始まった。血柱を上げて大王は倒れた。目を閉じる隙も無く絶命した。


直後基地は大規模に爆発した。主が死んだ事により、データ保護の為に爆薬で消し飛んだ。

INDCT:UN-GELインダクトアンゼルのコクピット内のディスプレイにその旨が伝えられると

「やったな!」

ふゅぉ────んッ!

「ハイロゥ出力オーバーッ!」

キッ!!!!

突如放たれた高エネルギーによって巨躯の天使は跳ね上がった。

そして地面に刺さっていたヒューズも飛び、直ぐに主の手元に収まる。

「今だ!」

そういうと大地を揺らして共にその天使の眷属たる拳銃アーティニータが山を吹き飛ばして姿を現す。現れた直後、天使は全く触れること無くそれは火を噴いた。

ウォームのトリフネをあっという間に融かし消す。

『不意打ちか、まぁ相手に言う権利はないがな』

最高出力で起動しているハイロゥは対応兵器を半径500mにおいて遠隔で起動できる。手から送る分のエネルギーを全て無理矢理大気を泳がせて伝達させる。

「許さないぞ! お前ら!」

遠隔攻撃端末となったその拳銃で的確にウォームの四肢をいでいく、胴体部だけを残し、それは地球ほしに縛り付けられる。

「ブレード展開!」

ヒューズの刃が再び展開、100mを優に超える剣となってウォームを焼きにかかる。

「ッ!」

鉄のサイクロプスはこの世界から消える。それは乗り込んだヒトを消してしまったことでもある。怒りに任せてヒトを消してしまう事になる…この揺らぎが虎氏に冷静を取り戻させた。

エネルギーを切ったヒューズはただその刃渡り分を素振りして終わった。


「やめましょう…」

『何故だ? 君を殺そうとしているのだぞ』

「無駄な事です、私はアナタ達を狩る存在では無いし、それでいて護る存在でもない…。例えルールを決めてもきっと破ります。この力を世界征服やらに使うのなら狩る存在にもなるでしょう。なのでやめましょう…」

『それはルールでは無いのかね?』

「えぇ、私の方が強い。だからルールはこちらが決めます。アナタ達は私を追跡せず、怪獣が出た時だけ……私は力を貸します。ヒト同士の争いにはどちらにも介入しません。アナタ達が破るのなら…」

『皆まで言わなくてもいい。分かった、諦める』

『司令!』

『だが、覚えておけ? ヒトは強いぞ』

「…覚えておきます。では、また」

優しい音色を奏でながら天使は空へ消えた。

緊張が解け、虎氏はコクピットで一人泣いた。


2週間…いや、3週間は余裕で経過しただろう。

田舎の村を吹き飛ばして怪獣が現れたことを直ぐに聞きつければ、虎氏は宇宙から降下し焼き潰す。終われば再び宇宙で、天使の胸の中…止まった時の中で生き続けた。空腹は訪れず、睡魔は囁かず、心さえもそのままに…。

そんな事を何ヶ月も続け、とある日だった。

一本のメールが届いた。


[[如何お過ごしかな? fromIT]]


「ッ!?」

ただその一言だけの一本のメール。

「僕に…? まさか……いや、ありえるかもしれない? あり得る! おい! いるのか? 郵便受けとして働いた白ヤギが! 35号!」

虚空に響いた、そして…

ぴっ!

そう木霊したのだった。

「35号! 手伝ってくれ、このメールがどう経由しどこから来たのかを。」

ぴぴっ! 

プロトコルが並ぶ、頭の痛くなるようなその電子の波をかき分け、35号と白き天使は叩くべき扉を探し追跡する。

回路の様に入り組んだ、そして道を間違え戻ってくる…これを無数に繰り返した。

日が昇り、日が沈み。怪獣が浮かび、大地へ沈める。

高度97kmの宇宙そらに帰っては機械の様にそれでいて爆薬の様に熱く取り組んだ。

「そのアドレスは違う…35号。こっちに行ってみよう何かあるはずだ」

ぴぴっ!

回り回り…回り回り。

「ここのにアクセスしよう遠いかもしれないが…なんだ? 今、嘘つきって言ったか? 僕にじゃない? だれに?」

ぴぴっぴ!

光が右へ左へ周期的に踊り、

「あぁ…これを、いや…もしかして?」

ぴ!

繰り返した1000兆分の1の須臾とき、それが揺れる。

「あぁ………、あった! あったぞ! やったな35号…。ぐぅっ、はははは。よし! いこうか!」

ゆっくりと、その背中に背負ったリング、ハイロゥの出力を高めていく。

真空中、音は伝わるはずがない…しかし、ハイロゥのその掠れるようなしかしどこか美しい歌声が進むべき道を繋げる。

ふゅぉお──────んっ!!!!

キュアアアンッ!

その天使は再び地上へと緩やかに飛び降りた。


「ここで終わるだろうか? いや、終わらないね?  私は天才科学者の井門 大王だ、お前を…35号アンタを造った太陽なのさ? 太陽というか、恒星というものは死んだところでそれは終わりじゃあないんだよ。始まりなんだ。35号、私はまた産まれる。その時は簡単なメールを送るよ…あぁルートマップだ。身バレってのはやっぱり好きじゃない、ちょっとは入りづらくしておく予定だよ。あぁ、心配ないさ、コウジくんなら何とかしてくれるさ。彼だって蘇ったようなものだし、私がなんで生きてたか…というより、この先死んでもなんで私が生きてて、メールまで送り付けたのか、なんて理解してくれるよ。あの天使の行き過ぎたパワーとか、デカいナイフが飛んで来たりだとか、なんかいろいろあってもしっかりと応えてレスポンスくれたからね。私は信じておくよ。また会えるってさ。」


「おかえり」



「ただいま」

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