第11話 萎えるんですけど
『シャドウクローン』
.........スゥ
目の前に俺の分身が現れる。
「よ!」
「よ!」
(自分と会話すんのって変な感じだな)
「俺これからカナサス大森林に行くからさ、その間・・・・・・」
「分かってる分かってる、留守番役だろ?任せろ、いつものように魔法書読んで過ごしとくよ」
「すご、俺のやって欲しいこと完全に理解してるじゃん」
「当然。誰だと思ってんだよ、俺お前の分身だべ?」
「はははは、たしかにそうだな」
さすが自分、話がスムーズだわ
『シェードガイス』
「.......うん、完璧」
鏡で姿が変わった自分を見て、そう呟く。
「後になって思ったけど、この魔法めちゃくちゃ気の利く魔法だよなぁ。自分の容姿だけじゃなく着てる服まで変えてくれるんだからな」
魔法を解けば容姿はもちろん服も着てた元の服に戻る仕様になってる。
どういう仕組みか知らないけど、ほんとに素晴らしい魔法ですわ。
「そんじゃ、行くとしますかね!カナサス大森林!」
「行ってら〜死ぬなよ〜」
分身のそんな言葉に親指を立てて、身体強化を使いながら部屋の窓から飛び降りる。
(正門から行ったら門番に止められるだろうからな、外壁から出るとしよう)
◇◇◇◇◇
カナサス大森林手前にて
「思ったより着くの早かったな」
バルデリア王国を出てからものの30分で到着した。
「スライムとかゴブリンあたりが出てきて欲しいな、強い魔物と出会したら生きて帰れる自信ないぞ」
そして、森の中へと入っていく。
◇◇◇◇◇
「........この辺りでいいだろ、これ以上はちょと怖い」
10分ほど歩き進んだところで足を止める。
(どごからどこまでが俺にとって危なくないゾーンなのか分かってればいいんだけどな)
と思ったその時---
ガサガサッ
「ッ!?」
音がした方へ目を向ける。
ポヨンッポヨンッポヨンッ
そんな擬音を連想させるかのような軽い足取りで水色の丸い物体が茂みの中から出てくる。
スライムだ。
「おぉ.....これが本物のスライムか!なんか感動!結構可愛いじゃん」
画面越しでしか見ることのできなかった生物に会えたことに胸を打つ。
しかし.....
ブルッブルブルッブルブルブルッ
「ん?なんだ、なんかブルブルし始めたぞ?うんちか?」
.........ビュッ!!
「ぬわッ!?」
スライムが噴射した液体を間一髪で避ける。
「な、なんだよ急に.....」
いきなりの行動にびっくりしつつ液体のかかった木をみれば......
ジュゥゥゥゥッ
なんか溶けてるじゃないですか
「こ、こいつやりやがった.....ッ!今こいつ完全に殺りにきたぞ!?」
あたりめぇだろ、魔物だぞ?
そんな言葉がどっかから聞こえる気がするようなしないような。
「感動とかほざいてる場合じゃない!『ウィンドウカッター!!』」
ブシャッ!
まるで水風船が破れたかのようにスライムが散る。
「よし!上手くできた、練習しといて正解だな!」
コロッ
「ん?」
スライムを倒した場所に、光沢のある石---魔石が落ちる。
「あ、結構小さいんだな。親指サイズはあると思ってたのに」
直径1センチほどしかない。
「これじゃあ親指じゃなくて親指の爪だよ」
魔石の質と大きさは魔物の強さや大きさに比例する。今拾ったこの魔石は小さい上に質も見るからに悪そう。これが何を意味するか、
今倒したスライムが魔物としてめちゃんこ弱かったってことだ。
「そんなスライムに殺されかけるとか........萎えるんですけど」
油断禁物とはまさにこのことだ。
「まぁ、まだ始まったばかりだからね。こっからよ」
◇◇◇◇◇
「ゔっ.....やべまた吐き.....おぅッ......ゴクッ」
目の前に転がるゴブリンの死体を見て戻しそうになるがなんとか飲み込む。
「はぁはぁ.......、これじゃあさっきのスライムとやってること同じじゃねぇか」
もう既に二度、酸を噴射している。
ゴブリンの首をウィンドウカッターで斬り飛ばした時と、首を斬り飛ばしたそのゴブリンの死体をナイフで裂いて魔石を取り出そうとした時だ。
二度も吐いてんだからもう止まってもいいだろ?と思うが、いつまで経っても吐き気がおさまらない。食道を行ったり来たりしてる。
今は2匹目のゴブリンの死体から魔石を取り出そうとしている最中だ。
「.......早く終わらゔぇッ......ゔッ.......おゔッ.......クソ泣」
---魔石を取り出せたのは、それから10分ほど経ってからだった。
「はぁはぁ.......、やっとおさまった(吐き気が)。思ってたよりもくるな」
前世で、グロい映画をよく見ていたからこういうことには多少なりとも耐性があると思ったのだが、結果はこの有り様だ。
映画と現実は違うってことを思い知らされたよ。
「ゴブリンの死体裂いてたせいで手が血だらけだ。洗わないと」
『ウォッシュ』
指先から手首全体を覆うように水が現れ、ゴブリンの血を洗い落とす。
「ふぅ、これでよし。石鹸があれば匂いも落とせたな」
少し血なまぐさいがそれは仕方ない。
(スライムとゴブリンなら今の俺でも充分倒せるって分かったことだし、魔物狩りはこの辺で終わりにして今日はもう帰ろう。ちょっと、いやかなり重すぎた)
とにかく今は、精神的に疲れたからすぐに休みたいそう思うのだった。
「魔法の練習はいつでもできるし、また今度にしよう」
_______________
あとがき
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過労死した元社員 〜転生したら公爵家の次男だったので身分偽って好きに生きます〜 禿鷲 @Hide_0225
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