第9話 闇魔法練習してみるか?

 帰りの馬車にて。


「どうだった?他家の子との交流は」


「どうもこうも、最悪としか言いようがないよ」


「あらそう、それにしては皆んなとかなりはしゃいでたじゃない?」


「ソフィア王女の意向に逆らえるなら、俺も他の子もあんなはしゃいでないよ」


 あの後俺は、しっかりと20秒数えてから、身体強化を使ってすぐにソフィアを捕まえた。なのにあの王女、言い訳ばっかして悪魔になろうとしなかったのだ。


(仕方なく他の子にタッチして悪魔ごっこ続行したけどさ、本人はあれを楽しいと思ってんのかね?)


「もうほんとに、ものすごく有意義無意味な時間を時間を過ごしたよ」


「じゃあ次回のお茶会も行きましょうね」


「2度と誘わないで、お願いだから」


(気悪くするだけだあんなの。何がライトニングアローだ、ただのタックルじゃねぇか。身体強化使ってなかったら怪我して.........いや、もう考えるのやめよ、疲れるだけだ)


 極力ソフィアのことは考えないようにしよう、そう思うことにした。


(帰ったら魔法書.......いや水魔法でも練習するか)



◇◇◇◇◇


『ウォーターボール!』


 ビチャッ!


「よしッ命中!日に日に的に当てるのが上手くなってるな」


 二ヶ月ほど前から始めた基礎属性魔法の練習。今日は風呂場での水魔法の練習だ。って言っても、羽ペンで壁に的を描いて、そこに水魔法を当てるっていう単純なものだけどね。


 今日まで魔法を練習して分かったことが二つある。


 まず一つ、魔法は使えば使うほどが増すということ。ウォーターボールで例えると、威力・射程距離・大きさ・速度などが徐々に増していくといった感じだ。俺はこれをレベルアップと呼んでいる。この魔法のに限界はない。けど、毎回毎回使う度に強くなるというわけでもない。ゲーム上において、レベルを上げれば上げるほど必要経験値が増していくのと同じで、強くなるという階段を上がれば上がるほど、次へのステップが難しくなるのだ。もちろん調整すれば出力を弱めることもできる。


 そして二つ、身体強化同様魔法は子供にできる所業じゃないということ。


 その理由はみんなももう既に知ってる。


 魔力が重い、これだ。


 魔法を発動する際は手に魔力を送らなくてはならないのだが、まぁとにかく重くて手まで送れやしない。初めて身体強化を使ったあの日から3年たった今なら、あの時よりも少しは軽く感じるだろうと思ったけど全然軽くない、めちゃくちゃ重い。


 だからいつも通り、心臓と血管使って魔法を発動している。手にも血管はあるからね、難なく魔力を送ることができるってわけよ。循環器様様だ。


 だが制約もある。循環器に頼って魔法を発動するということは、決まった流れに沿って魔力を送るというわけだから、手にだけ魔力を送るという風にも行かないわけで、全身に魔力を流さなくてはならないのだ。つまるところ、魔法を発動したいのなら身体強化も使わなきゃならないというわけだ。


身体強化を使いながら魔法を発動したところで威力や速度は何ら変わらないから、もうとにかくコスパが悪くてかなわない。


仕方ないんだけどね。


『ウォーターボール!』


ビチャッ!!


「お!威力上がった!!この威力ならスライムくらいは倒せるんじゃないか?」


威力と速度がさっきよりも上がったという事実に俺は喜ぶ。今回で4度目のレベルアップだ。


「ていうかそろそろ火と雷の練習もしたいんだよなぁ」


この二ヶ月で俺が扱った基礎属性魔法は水と風と土の三つ、火と雷はまだ扱っていない。


「家でやって火事とかになったら嫌だし、かと言ってカナサス大森林に行くわけにも行かないよなぁ、行ったら絶対母さんに怒られるだろうし----どうしたもんかねぇ」


カナサス大森林とは、俺のいる国バルデリア王国の西にある魔物が住み着く森の名前だ。一国ほどの大きさがあり、森の中心に行けば行くほどより凶暴な魔物と遭遇すると言われている。兄さんが言うには、中心まで行って生きて帰ってきた者は歴史上1人もいないらしい。


「うーん、闇魔法が使えたらいいんだけどなぁ」


(闇魔法が使えれば分身を作ることができる上に容姿も変えられたりするから、俺がカナサス大森林に行ったことはバレずに済むんだよなぁ)


 独りフルチンで腕を組みながら考える。


「父さんに頼んで、秘書庫にでも行ってみるか?あの中なら闇魔法について記された書物の1冊や2冊あるだろ」


俺が持ってる書物に闇魔法について記された書物はない。もし必要とするならば公爵家の秘書庫に行くしかない。


秘書庫とは、その家の祖先達が所持していた行き場のない本を保管しておく倉庫だ。今も昔も貴族には本を好む者が多くいる為、そう言った庫が大体どこの貴族にもあるのだ。


「まぁ魔法書があったところで俺自身に才能が無かったら使えないんだけどね」


と思いつつも、風呂から出た俺は早速父さんに許可を求めに行った。





 _______________

 あとがき


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