第5話 魔法を覚えます。
(ちょと待てよ。これ事実なら俺、努力次第で本当に化け物になれちゃうやん.......)
メッセージを読み終えた俺は興奮していた。
学生の頃によく思い描いていた"強い自分"になれる可能性を前に興奮するなというほうが無理だ。
(こんなん試すしかないじゃないですか‼︎)
俺が6歳以上であれば、鼻で笑って信じなかっただろう。でも今の俺は生後3ヶ月の赤ん坊、この口の悪い著者の言ってることが真実であろうと嘘であろうと、"強い自分"になれる可能性がある以上、試さない手はない。
(と言ってもまだ何も魔法覚えてないからなぁ。何かしら覚えないと)
魔法には属性魔法と固有魔法の二つがあって、属性魔法は基本的に火・水・風・土・雷の五つの属性で構成されている。これを五大元素といい、世界では基本属性と呼ばれている。
人にはそれぞれ、自分に適性のある属性が定められている。母さんは水属性に適性があり、父さんは火属性に適性がある。適性があるとないとじゃ魔法の威力もコスパも格段に違う。適性のない属性の魔法は全く使えないなんていう人も少なからずいる。
この他にも光と闇からくる特異属性と身体強化などの無属性があるが、特異属性はあまり一般的な魔法じゃない。というのも光と闇に適性のある人間が少ないのだ。数でいうと、1万人に1人いるかいないかくらいだ。魔法書によって、1000人に1人だの、10万人に1人だの、書いてあることが違うから正確な数は分からないが、魔法全書に1万人に1人と書いてあったから、多分1万人に1人だと思う。適性のある人間が少ないだけならまだしも、特異属性は基本属性と違って使いこなすのが容易ではない為、適性がないと使えないも同然なのだ。
ちなみに、重力魔法だの空間魔法だのといったチート染みた魔法はない。もしあったら身体強化同様、無属性に分類されてただろうな。使ってみたいという気持ちはあったが、ないものはないのだから仕方ない。
固有魔法については、その名の通り、特定の人にしか使えない魔法だ。メイドのナターシャが俺に使おうとした鑑定も固有魔法の一種だ。
自分の適性や固有魔法の有無は、6歳の誕生日に教会で行われる儀式に参加すると分かる。それまでは誰にも分からないのだ。教会の人間が言うには、---適性と固有魔法の有無は我が国の神アドリアナ様によって決められしもの授かりしもの。5歳以下の子供は授かっていないが故、分からなくて当然---とのこと。
本当かどうかは知らない。
とまぁ大雑把な説明にはなったが魔法に関してはこんな感じだ。
(今すぐに覚えられるとしたら無属性の身体強化だな。体全体に魔力を流すだけの基礎中の基礎だからすぐ覚えられるだろ)
そう思った俺は早速、身体強化を覚えることにした。
◇◇◇◇◇
2時間経過
(全然できないんですけど........)
どこのどいつだ、すぐに覚えられるとか言ったやつは。
(なんとか魔力は感じ取れるようにはなったけど、体全体に流すことができない.....)
(もう....何でこんな重いんだよ....)
何でか知らないが魔力がめちゃくちゃ重い。
重すぎて動かせない。
動かせてもちょびっとしか動かせない、マジで。
(ちょびっと動かすだけでこんな苦労するのに、体全体に流すなんてできるわけないやん)
(5歳以下の子供は魔力容量を大きくすることができるって言うなら、なんで今までそれをやったっていう事例が無いんだ?って疑問に思ってたけど、十中八九これが理由だな)
5歳以下の子供にすんなり動かせる重さじゃない。下手したら6歳以上でもできない子供いるんじゃないか?
(どうにかできないもんかね?)
期待が大きかっただけに諦めきれない。
(そもそも、魔力を流すっていったってどういう経路で流すんだよ?)
ふと一つの疑問が浮かぶ。
(体全体に魔力を流すイメージとは書いてあるけどそのやり方とか経路に関しては何も書かれてないんだよなぁ。)
(流す....流す........循環......循環?ん?まてよ、もしかするとこれ自力で流さなくてもイケるんじゃないか?)
(やり方も経路も書いてないってことは言い換えれば、流せればどんな手を使ってもいいってことだろ?それなら血液とかリンパ液みたいに循環器で流せば?)
おやおや、これイケるくないか?
(魔力を心臓に繋いでそれを身体中に張り巡らす血管に送れば、理論上魔力器官から心臓に魔力を繋げるだけで、体全体に魔力を流すことができる........ッ!)
(やってみようか!)
(このクソ重い魔力をなんとか心臓まで繋げてッ......クッ...マジで重いッ!)
少しずつ少しずつ心臓へと近づいてゆく。
(もうッ.....ちょいッ.....あと少し.........ッ!よし!持ってった!!あとは血管に送るだけだ!)
心臓が収縮し魔力が血液とともに血管へと送られていく。
(お!イケたっぽいぞ!)
さっきよりも身体がすごく軽い。
(え、うそ.....歩けたよ.....歩けちゃったよ.....ッ!身体強化すげぇぇぇ!!生後3ヶ月で歩行とか人類初だろ!)
小さな足で部屋中を歩く。
(すげぇまだ歩ける、さっきまで立つことすらできなかったのに.....すげぇ、すごすきで語彙力失うわこれ.....)
そう思いながら歩き続けようとした時だった。
ガチャッ
ッ!?
「レオ〜母乳の時間よ〜」
母さんとメイドのナターシャが入ってきた。
(あっぶねぇ!!もうすこしで歩いてるとこ見られるとこだった.......)
さすがに生後3ヶ月で歩いてるとこを見られるわけにはいきませんよ。
「それじゃあお母さんの部屋に行きましょうね」
母さんに抱っこされ母さんの部屋へと連れてかれていく。
(あー、もう少しだけ歩いていたかったなぁ)
ガチャッ
そう思うのんきな赤ん坊はまだ知らない。
己が人類史に残るほどの革命を成し遂げてしまったということを。
_______________
あとがき
読んでくださりありがとうございます。メイドのナターシャの固有魔法について修正いたします。第2話にて
"スキャン"という名称で使用しましたが、"鑑定"と改めさせていただきます。何卒ご了承ください。
引き続き、過労死した元社員 〜転生したら公爵家の次男だったので身分偽って好きに生きます〜をよろしくお願い致します。
よかったら、作品フォローや☆をしていただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます