第4話 ゲイル・リックバーグ
転生してから約2ヶ月がすぎた。赤ん坊としての生活にも慣れてきて、最初は緊張していた母乳摂取も今や小中学校の給食に出てくる牛乳を飲むような気持ちで摂取している。
ペラ
そんな俺は今、自分の部屋である一つの本に熱中していた。
(ん?---魔力容量の最大値は所有者の魔力使用量の値に比例する---え?魔力容量は変わらないって魔法全書の第I巻に書いてませんでしたっけ?)
そう、皆さん大好き魔法書でございます。
3週間前に兄さんが勉強してる時に使っていた魔法書にどハマりして以来、こうして何冊か読ませてもらえるようになったのだ。
見たことすらない文字を読めた時は絶対に転生者補正あると思ったね。
ちなみに母さんはもちろんこの屋敷に住む人間は誰も、俺が文字を読めることを知らない。
じゃあなぜ読ませてもらえてるのか?
それは多分俺が可愛いからだと思う。
自分に生後2、3ヶ月の子供がいると仮定して考えてくれ。生まれてまだ2、3ヶ月の我が子が、絶対に分かってない筈なのに新聞をまじまじと見ていたらどう思う?
ちょっと可愛いなって思ったりもしなくはないだろ?
それよ。
文字を読めないであろう俺が本を読んでいる姿を見て可愛く思えて仕方ないんだと思う。多分そうだ。絶対そうだ。
じゃきゃ読ませてくれる理由がわからない。
(ほらほら、魔力容量は変わらないって書いてあるじゃん)
とまぁ、俺が魔法書を読むようになった経緯はこれくらいにしておいて、今はこの魔法書についてだ。
最初に説明しておく、原則として、魔法は魔力がなければ使えない仕組となっている。人は魔法を使う時、自分の体内にある魔力を使用して使っている。
そして、人にはこの魔力を貯めておく目に見えない器官、魔力器官が備わっていて、そこに貯めておける量を魔力容量と呼ぶのだが、全員が全員同じ量を貯めておけるというわけではない。
個々の魔力容量は生まれた時から決まっていて、生きている最中に容量が変わるなんてことは絶対にない。
それが常識だ。
魔力容量が大きければ大きい分、魔法を使える回数も多く、より強い魔法を使うことができる。その為、この世界では魔力容量が大きい者は貴重な人材として扱われる。
この世界の歴史書にも、昔から魔力容量の大きい者は優遇されているなどと書いてあった。
にもかかわらず、今俺が読んでいる魔法書には魔力容量は魔力の使用量に比例すると書いてあるのだ。
おかしくね?
魔力容量の大きさがモノを言うこの世界で、そんなことが実際にできたら人類革命もいいとこだ。
(この本書いたの誰よ?)
あまりの非現実的な話から著者の名前が気になる。
著者: ゲイル・リックバーグ
(いや誰だよ)
この3週間で魔法書の他にいくつかの歴史書にも目を通した。だから、ある程度の偉人や著名人は覚えてる。が、こんな名前は全く知らない、初めて見る。
(ん?著者からのメッセージ書いてあるじゃん)
最終部分に書いてあったゲイルという人からのメッセージに目を通す。
まずは、ありがどう。この本を読んでくれたお前に心から感謝する。
(口悪りぃな)
早速だが、魔力容量について疑問に思っただろ?お前がこれまでに読んだ魔法全書や魔法書には、魔力容量は変化しない的なことが記してあったと思うが、それは半分事実で半分嘘だ。
(どゆこと?)
"魔力容量の大きさが変わることは絶対にない"この常識が当てはまるのは6歳以上の人間に対してであり、5歳以下の子供に対しては当てはまらない。
(ッ!?)
どうやってこの答えを導き出したのかは教えてやれない。信じるも信じないもお前次第だ。
はっきり言って、この本は6歳以上の人間には価値がない。だがもし、今この本を読んでるお前が5歳以下なら、この本はお前にとって計り知れない価値を生むだろう。
一つだけ助言してやる。
今から6歳の誕生日まで毎日、魔力枯渇するまで魔法を使え。使う魔法はなんでもいい、とにかく魔力枯渇するまで使いまくれ。
化け物になることを期待している。
(...........いや......え、マジで?)
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あとがき
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