第7話 これからお茶会に出席します。
「レオノア様、そろそろ支度を」
「いやまだ大丈夫、まだ大丈夫だ」
魔法書に目を通しながら、専属メイドであるカルモアにそう答える。
「いえ、これ以上は限界です。今すぐに支度を始めないと遅れてしまいます」
「ん゛〜〜あと5分、いや3分」
「遅れますと奥様からお叱りを受けてしまいますよ?」
「すぐに支度しよう!」
「レオノア様の魔法好きにも困ったものです」
「いやそこまで酷くないでしょ?」
「え、酷いですよ?」
「へ?」
「5分で支度を終えます」
「ちょとまて、俺そんなに酷いの?」
「じっとしていてくださいね」
「お姉さん質問に答えなさいよ、私そんなに酷いんですか?」
「可及的速やかに終えますので...........じっとしていてくださいね?」
「あ、はい」
(そんな怖い顔しなくてもいいじゃん。あ〜ぁ、もうなんで子供の俺がお茶会に出席しなきゃならないんだよ。子供がティーなんか飲む訳ねぇだろ!)
そう思いながら、カルモアに身支度をしてもらっている俺は現在3歳。
ゲイ様の魔法書を呼んだあの日から2年と数ヶ月が経ち、当たり前のことながら、今では身体強化を使わずとも歩けている。
魔力容量については、素の何倍増えたのか計算できないくらい増えたとだけ言っておく。
というのも、魔力枯渇をするようになって4ヶ月を過ぎた辺りから1日じゃ使い切れなくなってしまい、そこから身体強化による継続時間で魔力容量の増加分を測るという計算ができなくなってしまったのだ。
計算ができてた時期
魔力使用→使い切る→最初より何時間増えたか計算→素の魔力容量の何倍増えたか分かる
計算ができない現在
魔力使用→使い切れない→最初より何時間増えたのか測りきれない→素の魔力容量の何倍増えたのか分からない→寝る→魔力全回復→魔力使用→使い切れない量がさらに増える→最初より何時間増えたのか更に測りきれなくなる→素の魔力容量の何倍増えたのか更に分からなくなる→寝る→魔力全回復....
.......→もう完全に分からない
簡単に言うと、こんな感じ。
魔力枯渇するまで測れるのであれば、何倍になったのかわかるが、そんなことやろうもんなら睡眠不足で死んでしまう。いや死ぬ前に睡魔に襲われて寝るな。
とは言っても、計算できないとまずいってわけでもないし、なんなら6歳の儀式で、自分の魔力容量が数値化されて分かるみたいだから、なんら問題はない。
気長にその日を待てばいいだけの話だ。
「終わりました」
どうやら支度が終わったみたいだ。
(すげぇ、さっきまであったブロッコリーみたいな寝ぐせが完全に直ってる。ってか5分もかかってないぞ?早過ぎないか?)
「それでは、奥様のとこへ参りましょう」
「うぃ〜」
(あーもう本当に、なんで3歳の子供が王城にまで出向いてお茶会に出席しなきゃならないんだよ泣)
俺がこれから出席するお茶会はただのお茶会じゃない。この国の王族であるマーヴィング王家が、主催するお茶会なのだ。
(行きたくねぇ〜〜泣)
だが、俺が嫌がる理由はそこじゃない。王家主催だから嫌がってるわけではない。
俺が嫌がる理由は....
◇◇◇◇◇
馬車にて
「遅れるかと思ったわ」
「間に合ったからいいじゃない」
「良くないわよ。もっと時間には余裕を持ちなさい」
「はいはい、わかりましたよ」
「はいは一回!」
「は、はい」
「まったく......どうせ、魔法書でも読んでたんでしょ?」
「よくわかったね」
「いつもそうだもの。もしかしたら依存症なのかもしれないわね?」
「さっき、カルモアにも言われたけどさぁ、俺そんなに酷いの?そんな依存症っていう程、魔法書に釘付けになってないと思うんだけど?」
「酷いわよね?」
「「はい」」
母さんの質問に、母さんの専属メイドのナターシャと俺の専属メイドのカルモアが至極冷たい声で返事をする。
「そ、そんなハマらなくてもいいじゃん......ちょっとくらい悩んでくれてもよくない?」
「申し訳ございませんが」
「事実ですので」
どうやら、この馬車内に俺を擁護してくれる味方はゼロのようだ。
(かなしぃぃ〜)
「奥様、王城に到着致します」
御者が母さんに対して報告すると直ぐに、王城が見えてきた。
「でっか」
そんな言葉が無意識に口から溢れる。
「あー、レオは王城に来るのが初めてだったわね。どう思った?」
「どうも何も、デカいとしか言えないよ」
事実、信じられないくらいデカい。
うちの屋敷も都会のマンションかよってくらいデカいけど、その比じゃない。これ東京ドーム何個分だよ。
「こんなにデカくする意味ある?国民の税金無駄にしてるだけじゃない?」
「レオ、それここにいる者以外に言ってはダメよ」
「いやもちろんわかってるよ」
---国民の税金を無駄にしてる、そんなことを口外すれば、王族はもちろん王族派の貴族達に目の敵にされてもおかしくない。
まぁかく言う、うちも王族派なんだけどね。
「母さん」
「ん?何?」
「帰りたい」
「お母さんの体面を潰したいのならいいわよ」
「クソッ」
「いい子にしててね」
「それは相手次第ですよ」
そんな会話をしながら王城の門をくぐっていくのであった。
_______________
あとがき
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