第2話 これからどうしよう、

 (いや....誰ですかあんた!?)


 (てか何でこの人俺に対して片乳晒してるんだ!?)


 (いやそんなことより俺さっき轢かれなかったっけ!?血流してなかったっけ!?痛みも完全に消えてるし...)


 (何がどうなってんだ?)


「あら?おかしいわねどうして吸わないのかしら?」


 (え?)


「いつもならもう吸ってるのに」


 (ふぁ?)


「具合でも悪いのかしら?」


 (......)


 (何をいってるんだこの人は?見ず知らずの女性のおっぱいを吸うわけないだろ、俺を性被害で訴えでもしたいのか?)


 そう心の中で呟きながら辺りを見回していると、壁に掛かっている装飾鏡に映る2つの影が目に入る。俺の目の前にいる片乳女性と小さな赤ん坊の姿だ。


 (...........)


 手を振る


 鏡に映る赤ん坊も同時に手を振る


 (...........ッ)


 片足をあげる


 鏡に映る赤ん坊も同時に片足をあげる


 (...........ッ!?)


 右手で中指を突き立てる。


 鏡に映る赤ん坊も同時に右手で中指を突き立ててくる。


 (...........)


 (なるほどそういうやつですか)


 (俺も漫画やラノベは今まで沢山読んできましたから、そういうことに関しての知識はそれなりにありますから、自分が今どういう状況下にあるのかすぐに理解できましたよ)


 (転生したねこれ)


 (柳生正治の時の俺確定で死んだねこれ)


 (もう地球じゃないねここ)


 (いや待てよ、転生はしたかもしれないけど、ここが地球じゃないという理由にはならない。何か、ここが地球なのか地球じゃないのかを決定づける証拠を....)


 (あぁ、あったわ)


 (ここ地球じゃありませんね)


 (なぜかって?だってお空に月らしき惑星が2つ浮いてるんだもの。色だって白とかグレーとかそういう類の色じゃなくて水色と緑色っていう、地球視点じゃ絶対に見ることのない色だし)


 空に浮かぶ惑星2つを窓越しにみてここが地球じゃないことを瞬時に理解する。


 (いやぁ転生かぁ)


 (異世界に転生したいと思ったことは何度もあるけど、いざ転生すると不安と寂しさしかないな)


 不安は、これからどうすればいいのだろうかという気持ちからくるもの。寂しさは、家族や友人に会えない・地球に帰れないという気持ちからくるものだ。


 (うーん.........マジでこれからどうしよう)


 今になって焦り出す。


 (いや、そもそも何をどうするか考えたところでこんな赤ん坊の身体じゃあどうしようもないだろ。それに俺が転生したこの赤ん坊鏡で見た感じ、1歳2歳とかじゃなくて新生児じゃないですか。本当に何もできないじゃないですか。これじゃあハイハイすらできませんよ?)


「レオ?」


 (あっ、)


 (そうだ今考えるべきことはこれからどうするかよりもこの片乳女性のことについてだ)


 (多分この人は、この赤ん坊すなわち俺の母親だろう。きっと授乳をしようとしていたところで転生しちゃったんだな。タイミングが悪いにも程がある)


 (この人のおっぱいを俺が吸っても何ら問題はないんだろうけどさ、だからって初めて会った人のおっぱいを吸えって言われたって緊張と恥ずかしさでできないですよ)


 (ここは飲まずにやりすごそう)


「ナターシャ」


 ガチャッ


「失礼します。お呼びですか?奥様」


 (おぉ、メイド......!)


 (本物のメイド初めて見た......!)


「あなた鑑定が使えたわよね?」


「はい。それがいかがなさいましたか?」


 (え、何ですか鑑定って?え、まさか魔法ですか?)


「鑑定ってどいうことまでの?」


「物を対象とした場合はその物の名前、性質、状態、形、大きさなどが、人を対象とした場合はその者の名前、性格、状態、年齢、身長、体重などが分かります」


 (それ絶対に魔法じゃないですか!人の名前とか性格が分かるってプライバシーの欠片もないじゃないですか!!)


「健康状態も分かるのね?」


「はい」


 (よっしゃーー!!この世界魔法が存在するぞーー!!え、マジで嬉しいんだが、さっきまでの不安と寂しさが一気に飛んだわ!)


「なら、レオを鑑定してくれないかしら?」


 (........ッ!?)


「普段ならとっくに母乳を飲んでるはずなのに、今回は飲もうとしないのよ。病気じゃなければいいのだけど」


「分かりました奥様。調べてみます」


 (マズいッ!!)


「あら?飲み始めた」


「みたいですね」


 (危なかった!鑑定ってその人の状態もわかるんだろ?そんなんしたら俺が転生者だってバレちまうじゃないか!何されるかもわからないのにバレてたまるか!)


 もしかしたらバレないかもしれないが、懸念点は払拭しておきたい。


「普段飲んでるはずの母乳を飲まなかったら転生者とバレました」なんてことになったら冗談でも笑えないからな。


「良かった。具合が悪いわけじゃなかったのね」


「鏡に向かって中指を突き立てた時はちょっと不気味におもったけど」


 (/////////馬鹿恥ずい/////////)


 (ってかこの世界にも中指のジェスチャーあるんだな)


「奥様、私は部屋の外で待機していますので、また何かありましたらお声掛けください」


「ええ、ありがとうナターシャ」


「いえ、失礼します」


 そういうとメイドはドアを開けて部屋から出ていった。


「飲み終えたら、身体洗って寝ましょうね〜」


 (あー、これからどうしよう本当にどうしよう)


 顔をほんのり赤くしつつ初対面の女性のおっぱいを吸いながら俺は心の中でそう呟いた。

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