過労死した元社員 〜転生したら公爵家の次男だったので身分偽って好きに生きます〜
禿鷲
第1話 転生します。
人生において人を恨んだことは何度あるだろうか?数えても数え切れないだろう。
この世界を生きる人間は少なくとも一度は人を恨んだことがあるはずだ。
そんな俺は、現在進行形で目の前にいる人を恨んでいる。
「はぁ?何で出来てねぇんだ!?明日の会議に必要な資料だから今日の水曜日までにって先週言ったよな!?」
「いえですから、指定の期日は明日の木曜日までと課長が」
「今日までだって言っただろうが!!お前の聞き間違いだろ!?」
(テメェが明日の木曜までだって先週口にしてただろうが!!)
「お前はいつもそうだ!俺の指示を碌に聞かないでミスを犯す!その上、自分のミスを他人のせいにする!」
(............!!!)
「お前もう一度入社面接からやり直した方がいいんじゃないか?そうすればお前のその腐れきった性格も少しはマシになると思うぞ?」
(......このクソ野郎!!)
「はぁ〜ったく、柳生明日何時に出勤するんだ?」
「...9時です」
「8時に出勤しろ。そんで朝一で俺に資料を渡せ分かったか?」
「....わかりました」
「謝罪は?」
「.....指定の期日までに間に合わず申し訳ありません.....ッ」
(何で俺が謝罪しなきゃならないんだ!畜生!!)
「ったく、能のない社員を部下に持つと俺のような上に立つ者は疲れるよ、はぁ、もういいから業務に戻れ」
「...はい」
◇◇◇◇◇
午後10:20
「はぁ、今日こそは定時退社出来ると思ったんだけどな」
俺の名前は
俺が働く職場ははっきりいってブラックだ。月の残業時間が平均20時間であり原則45時間までとされているこの世の中で、俺の職場は月の残業が1人あたり平均50時間となっている。ちなみに俺は70時間以上。
本来であれば今日は久しぶりの定時退社が出来るはずだったのだがクソ上司の理不尽な要求のせいで夜遅くまで残業する羽目になってしまった。
(あー今月も残業80時間以上かぁ。労働基準監督署に訴えてやろうかな?)
そんなことを心の中で呟きながら信号待ちしていると、
「ぉっ」
不意にクラクラして目の前の視界がぼやけた。
「おっぉっぉ」
足元がおぼつかない、前のめりになる。
(あ、これ倒れるわ、)
「危ない!」
(え?)
ドンッ!!
倒れると感じた矢先、そう発した男性の声が遠くから聞こえてきたと思えば、数秒後にはものすごい衝撃が全身に響いた。
"痛い"
それだけが脳裏に浮かぶ。
視界のぼやけがほんの少しだけ引く
(ん?なんだこの赤い液体は?)
そう思いながら、目の前にある大量の赤い液体に手を伸ばそうとするも身体が動かない。まるで全身が鉛でできているようだ。
指一本すら動かない、
呼吸も上手くできない、
(どうなってるんだ?)
不思議に思い、唯一動く目で辺りを見回すと、フロント部分が凹んだ一台の黒い車が目に映った。
(へ?)
(もしかして俺轢かれた?え、じゃあこの赤い液体って俺の血!?でもちゃんと信号待ちしてたぞ?)
(あ、クラッとして視界がぼやけた時少し前に出たかも。ん?あれ?俺どうしたっけ?)
思考が定まらない。
(あれ?今さっきまで痛かったのに痛みが消えた...?)
色んなことが立て続けに起きて頭の中がゴチャゴチャする
(ん?なんだ?)
(すごく眠い、)
痛みが引いたと思ったら、今度は強力な睡魔がおそってきた。
(あーやばい寝るわこれ、)
(え、ていうかこれ、)
(死ぬくね?)
.......ポヨン
(ん?)
(なんだ?)
'モミモミ'
(なんか柔らかいものが手のひらにある)
'モミモミ'
(何だこれ?)
真っ暗で何も見えない。
(ていうか俺どうなったんだっけ?)
「そんなに掴まなくても逃げないから大丈夫よ」
(ん?)
知らない女性の声が聞こえる。
さっきまで暗かった視界に光が差し、視界が晴れる。
と同時に俺は目の前の信じられない光景に驚く。
(ッ!?)
「私はここにいるから大丈夫よ」
目の前に片乳を晒した女性がいた。
(いや....誰ですかあんた!?)
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