第224話 予想外の展開に
「今、お聞きになったように、ダンジョンから出ている魔道具も作る事が可能になるのが魔法陣です。ですがそれには魔法文字を研究しないと出来ません。どの文字がどんな意味を持っているのか分からないと魔法を作れませんからね」
これで、分かってくれるかな? 錬成陣、魔法陣、魔法はイメージ、この三つは全て関連しているという事を……。
「マーク殿、もう一つ聞いても宜しかな?」
「いやですから、マークで大丈夫ですよ。僕は子供ですから」
「そこまで言われるなら……。ではマーク、付与魔法で魔石に魔法のイメージを入れたものが魔石魔道具という事ですな。そうなると魔法のイメージを魔法陣にして何かに描いた物が魔道具に出来るという事で合っていますか?」
「はい、その通りです。例えばこのアイテムバッグの魔道具がそうですね。ここに模様のような魔法陣があります。それに魔力を供給する為にこの魔石がある訳です」
「魔道具は作れるのか……」
これまでは魔道具=ダンジョン産と言うのが常識だったけど、これからはその常識が壊れて、自分達で作れるという事。まぁ当然これから色々研究しないといけないし、それを作る為にはMPや必要なスキルも必要になる。
「領主様、これで魔法陣についてはお話ししましたが、ご理解頂けましたか?」
「――分かったと言えば分かったが、これはどうすれば良いんだ?」
「そうね。これはうちの領だけで収まる話じゃないわね。国に持って行く話よ」
当然、そうなるよね。でもここで俺は逃げる秘策を出すのだ。だってそうしないと、俺の事が領主様で止まらなくなるからね。
「領主様、この魔法陣の話はこの領で暫く止めてくれませんか?」
「いやマークよ、これは流石に、さっきマーガレットが言ったように国に持って行く話だぞ」
「領主様、それは分かるんですが、五歳の僕が言って誰が信用します? 領主様がたはそれ以前に色々と話を聞いているし色々見ているから、僕の話を聞いてくれますが、これがいきなりとなれば先ず馬鹿にして聞く耳なんて持ちませんよ」
「そんな事は……、ない事はないか……」
今回は領主様がここに来て、直接見て判断してるから、ここに居ない部下の人達も話せば信用するだろうけど、王様がここに居ないのに、王都にいる人たちが信用する訳がない。当然そういう人達はプライドも高いからね。
「だから、ここで暫く魔法陣の研究をしませんか? どうせダンジョンにも行くでしょ」
「成程、ここでうちの部下にある程度学ばせてから国に報告しろという事か?」
「その通りです。その方が信用度も違いますし、全く分からない所から報告するよりこの領の功績が評価されますよ」
「しかし、それにはマークお前の協力も必要だぞ」
「そこは仕方が無いですし、僕も研究したいので問題ありません」
ただ、ここからが問題なんだよ。誰がここで学ぶか? まぁ今ここに連れて来ている人達は候補だと思うんだけど、物作りに特化した人なんて居ないだろうからそこをどうするか?
「あなた、どうするの? 今回連れて来ているメンバーでは適任と言える人は少ないわよ」
「――良し! 決めたぞ! 私達がここに引っ越して来れば良いんだ!」
ひぃえ~~~、そっちに発想を持って行ったか。確かに適任者を連れて来るでも良いんだが、それよりも領主様が部下全員を連れてくれば領主様の目があるから、下手な事は出来ないし、情報も漏れにくいのは確かだ。
「そうね。この村はこれからダンジョンで変わるんだから、領主がここに居た方が良いわね……、化粧品も直ぐに手に入るし……」
最後に私情がかなりありそうな言葉が聞こえたが、奥方様は賛成のようだ。
「そうだろう。これまでは領の中心の方が何かと良いと思ってキール村に領館を置いていたが、これからはダンジョンのスタンピード対策も考えなくてはいかんから、騎士団もここに居た方が良いだろう、なぁロベルト……、ダンジョンは楽しみだな……」
「勿論です! スタンピードなど起こしたら末代までの恥ですからね。――ダンジョンで鍛えられるなんて最高だ……」
こっちも私情ありか。表面上は真面な理由を付けているが、最後には小声で聞こえないようにしてるつもりだろうが、俺には本音がちゃんと聞こえていた。
「領主様、そんなに簡単に決めて宜しいのですか? キール村の村長に相談もせずに……」
「ロドリゴの言う通り、領全体に関係する事だから一度村長全員を集めて話し合う必要があるな。それに新村の開拓もする予定だから、その候補地と新村の村長候補などについてもその時に話せると良いな」
魔法陣の話しから、とんとん拍子に領村の移転の話が出て、会議をする事が決まったが、秘密漏洩の観点からはこれが良い事なんだが、俺としては一時的拘束ではなくなりそうで少し心配だ。
何故か、それはもうその前兆が起きているからなんだよ。先程から俺に殿つけまでするような騎士が居たでしょ、あの人がギラギラとした目で俺を見つめているからだ。
「それではこれで一応僕の話は終わりますね。後の事は爺ちゃん、婆ちゃんや両親と話して下さい」
そう言って俺がその場を離れようとした時、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに、奥方様に肩を掴まれ、
「マーク、それで終わると思ってるの? 肝心な話が終わっていないわよ」
「何の話しでしょうか? 奥方様」
「それは石鹸と化粧品の話に決まっているでしょう」
「せ、石鹸の話は婆ちゃんやかーにお聞きになれば良いと思いますし、化粧品の話しとは化粧水の事ですよね。それなら特許登録しておりますのでご自由に御作りになれば宜しいかと」
「マーク、そんな事で私が誤魔化せるとでも?」
「奥方様を誤魔化すなんて滅相も無いことです。何のことを言われているのか分かりませんが……」
「そう、そこまで白を切るならハッキリ言うわ! この地下室に漂っている匂いは何なのかしら?」
え! まさかエッセンシャルオイルを抽出した時の匂いを感じ取ったの? 奥方様はうちの婆ちゃんと母ちゃん並みの嗅覚を持っているのか? 酒の匂いじゃない方面に特化した方だと思うけど……。
いや、これは奥方様だけじゃないな。奥方様の他にも鋭い視線を感じるぞ。そう俺の憧れの女性、奥方様の護衛兼侍女のカレンさんの視線だ。
カレンさんのこの視線は、怖いような嬉しいような奇妙な視線だが、気持ち良い身震いがして、五歳の俺には普通あり得ない興奮を覚えた……。
俺は変態か?
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