第223話 やり過ぎたかも?
「それでは、続けますね。この錬成陣と魔法陣は同じ物だとお話ししました。その証明はこの図形と文字にあります。まぁ錬成陣の方には文字と言えるものはないので、図形だけに成りますが、これは同じ物です」
「文字が無いのに何故同じ物なのだ?」
「良い質問です領主様。それはこの図形が文字の代わりをしているからです。こちらの錬成陣の図形も一種の文字なのです」
この説明は少しおかしいんだけど、この説明の方が後々説明しやすくなるので、これで通す事にする。
「図形が文字とな?」
「はい、この錬成陣に描かれている図形で魔法が増幅されることになりますから、文字と同じなのです。魔法を増幅する文字と思えばそうなるでしょ」
「魔法を増幅するというのは付与魔法の時に聞いているから、何となく分かるが文字と言うのはどうしてもピンとこんな」
これでも駄目か。ここはしょうがないかな。魔法はイメージと言うのは今後も絶対ネックになるから、ここで話してしまった方が色々と問題が無いな。
「では領主様、先程うちのとーが、いやうちの父さんが……」
「マーク、言い辛いなら普段取りで構わんぞ」
「そういう事でしたら、普段通りにさせて頂きます」
「いや、マークよ、その話し方が普通の五歳児ではないからな。私らは逆にそっちの方が気持ち悪いぞ」
そりゃそうだよな。五歳児が敬語どころか、「させて頂きます」なんて謙譲語を使っているもんな。
「じゃあ、続けます。さっきうちのとーが錬成陣で金属を分離しましたよね。あれは鉄鉱石の鉱物を鉄と言う物に分離しろという魔法を掛けたのです。ですが普通錬成陣無しではそんなことは出来ません。だけどそれが出来るようになるのが錬成陣による魔法の増幅です。そして付与魔法もこの同じ錬成陣を使います。」
「ん? それを言うならポーションも同じだな」
「その通りです。これで分かるように色んな魔法に使えますから、この錬成陣は魔法の増幅をするという文字を書いているのと同じなのです」
「確かに、やる内容は違うのに同じものを使っている。だから魔法を増幅するという文字か……」
「その事から分かる事があるんですが領主様方で分かる方はいますか?」
さぁここで魔法はイメージと言うのを理解出来るか?
「「「……」」」
駄目か、やっぱりこちらからのアプローチでは理解出来ないか。でもここで止める訳にはいかないから説明してしまおう。
「領主様、錬成陣は魔法を増幅する物だいう事は理解出来ましたね。ではその魔法はどうしています?」
「どうしてる? そう言われても私は錬金術も付与魔法も使えんからな」
「そうでは無くて、領主様が普段使える魔法です」
「私の使える魔法は風魔法だ。その魔法を使う時は……? 魔法を教えてくれた人の真似をしてるな」
やはり貴族の人とかはそうなんだな。いや父ちゃんもそうだと言っていたか。父ちゃんも鍛冶の仕事を教えてくれた人の魔法を真似ていると言っていた。でもそれならこれで分かりそうなもんなんだけどな……。
「領主様、真似るという事はどういう事です?」
「真似る? ――同じ事をするだな」
「同じことをするで正解ですが、今その人はここに居ますか?」
「居ないな」
「でも領主様は今その風魔法を使えますよね。それは何故ですか?」
「それはその魔法を思い出して使うからだ。 ん! あぁ~~~、そういう事か魔法は頭に描いた事を実行するという事か」
「その通りです。魔法は頭で考えた事を実行してるのです」
「ちょ、ちょっと待て、それが本当なら、頭で考えたことは魔法に出来るという事でもあるぞ」
漸く、魔法はイメージという所に辿り着いたな。ここまでくれば魔法陣の話に持って行っても理解が早いだろう。
「領主様は理解が早いですね。何度も言いますがその通りです。魔法は頭でイメージした事を具現化するという事です。ですがイメージ出来るなら何でもと言う訳でもないのです。その一つの例が、領主様が錬成陣で鉄鉱石から鉄を分離出来るかと言えば出来ません。それはその魔法の属性の適性がないのと、MPが足りないからです」
本当はこの適性にの所に「現状は」を付けないといけないんだけど、そこはまだ確実じゃないから付けられない。可能性はあるけどね。
「それはそうだな。私は職業が騎士だからな」
それも間違ってはいないんだけど、正解でもないんだよな。そこがさっきの現状はと関係するんだけど、例として職業に関係なくポーションは多くの人が作れるからね。領主様はやった事がないから知らないんだろうけど、恐らく品質に拘らなければ領主様でも錬成陣を使えばポーションは作れる。だけど俺が言った鉱物の分離は出来ないというだけなんだよ。こればかりはステータスにある称号が影響するからです。
そう神の加護のランクが影響すると俺は思っているのだ。何故ならそれは、俺やうちの家族のステータスを見れば分かるんだ。俺のステータスは生産系に特化してるように見えるけど、魔法は全属性使えるからね。それにうちの婆ちゃんと母ちゃんは火属性の他に闇属性の魔法も使えるように成っている。では何故そうなったのか? それは俺の神の加護が技巧神の加護だけど制限がない事、そして婆ちゃんと母ちゃんは加護のランクが技巧神の加護小に上がっているからです。
では領主様の加護である武神の加護極小が小に上がれば、使える魔法属性が増えるかも知れないし、当然HP、MPが500以上だから、出来ることが増える可能性がある。ただそれが何かは今は分からないが……。
もし、ランクが上がった後、鉱物の分離を練習したり、何かの都合で土属性の魔法を練習したことで、土属性の魔法が使えるように成ったら、鉱物の分離も出来るように成るかもしれない。錬金術のスキルがある、ないに関係なくね……。
「マーク、魔法はイメージが大事だという事は分かったわ。でもそれと錬成陣とその魔法陣が同じという事にどう繋がるの?」
「錬成陣は魔法を増幅させる魔法を図にしたものなんです。そして先ほど見られた結界の魔石魔道具の此処をよく見て下さい。ここに魔法陣があるでしょ」
「本当だ! 魔法を図にした物が魔法陣なのか!」
「御屋形様、失礼します。魔法を得意とする者からひとこと言わせてください」
「許す、何なりと言え」
「マーク殿、一つ聞きたいのだが、今までの話を総合すると魔法を図にする事が出来るという事は今現在ダンジョンで出ている魔道具も作れるという事ですかな?」
「はい、仰る通りです。ですがマーク殿はお止めください。平民の子供ですから」
「誠ですか! それは世界がひっくり返りますよ! そんな事を発見した人を呼び捨てなど出来ませんよ!」
ちょっとやり過ぎたかな……。
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