第222話 俺! 爆誕!

 俺の出番はなかったし、スライムゼリーについての話までは終わったようになったけど、本当はもう一つあるのだ。それをどう伝えたら良いのか俺は迷っている。それは爺ちゃんが初めに口頭で示したこのリストに答えがある。まぁ口頭だったからみんな覚えていないとは思うけどね。


 ・ポーション

 ・酒 

 ・付与魔法 (錬成陣)

 ・魔石魔道具 (魔法陣)

 ・スライム(スライムゼリー)

 ・温度計

 ・肥料

 ・石鹸、シャンプー、リンス

 ・錬成陣による金属加工

 ・ベアリング、板バネ

 ・ダンジョン 

 

 そう、このリストの錬成陣と魔法陣の違い。これを話さないと、今後俺が作りたい魔道具が発売できないのよ。魔石魔道具と魔法陣の違い、これは大きな違いだから今後学問として研究出来る所まで国には持って行って貰いたい。そうじゃないと俺が何か作る度に、国から呼ばれたり、貴族に目を付けられたりするからね。勿論それは国内に限った事ではない。


『う~~ん、どうしようかな? やっぱり爺ちゃんに話に行こうかな……』


 俺がどうしようか口には出さずに頭で考えていた時、


「ん? マーク、さっきから何を見ている?」


「あ! これですか?」


 ん! これはチャンスか? ここで領主様に声を掛けられたのは、このリストの話に持って行き易くなるぞ。ましてこれは俺が爺ちゃんが何を話すのか気になったから、俺が独自にメモしたものだから、余計な事は一切書いていない。これなら見られても問題ないし、言い方ひとつで残りの一つに気づいて貰えるかも知れない。


「そうだ。先程からその紙を見ながら首を傾げていただろう」


「え~~そうでしたか?」


「マーク、誤魔化すでない。何か言いたい事があるんだろう」


「言いたい事と言うか、ここ話してないな~という所があるだけです」


「何? マーク、わしは何か話し忘れてるか?」


 良し、これで爺ちゃんがこの紙を見に来る。その時に爺ちゃんに錬成陣と魔法陣の違いと共通する事を話すように言えば良い。でも、これで俺の存在感が領主様により印象深くなるけどしょうがないよな。


「爺ちゃん、こことここ、錬成陣と魔法陣の違いと同じところを話さないと、これから魔道具を売れないよ」


「でもマーク、そこは魔石魔道具の話をしたから良いだろう。魔法陣の話はしなくても、魔石に魔法を付与すれば魔法陣は刻まれるんだから」


「爺ちゃん、それは駄目だよ。魔法陣を説明しないとダンジョンから出るような魔道具を作って売れないからね」


「そうは言うけど、マークも直ぐには売りに出さんのだろう。ダンジョンの方が優先だろうし……」


「ルイス、さっきからこそこそと何をマークと話しておる。マークが話していない所があると言ってるのだろう。話せば良い事ではないか」


 俺と爺ちゃんの意見が割れて、上手く話しが進まなかったので、領主様を待たせる事になり、催促が入ってしまった。


「領主様、もう暫くお持ちください」


「ほら爺ちゃん、領主様から催促が来たよ」


「いやな……。マークの言ってる事は分かるんだが、実は……、わしはまだこの錬成陣と魔法陣の違いや共通点を理解出来ていないんだ。だから……」


「え! そういう事!」


 やけに爺ちゃんらしくないなと思っていたら、そういう事だったのか。自分が理解出来ていない事だから、そっちに話が行かないようにしてたのか。それならそうと早く行ってくれれば……。あぁ駄目じゃんね。爺ちゃんでも理解出来ない事を、うちの家族で説明出来るほど理解してる人が居るとは思えない。うちの両親は論外として、婆ちゃんがギリギリどうかという所だけど、多分無理だよな。


 そうなると……、辿り着く答えは俺という事になるのか……。これって超墓穴という事かな? 今更だけど……。


「色々考えていたようだけど、分かったか、マーク」


「うん、そうなるね……」


「何か答えが出たようだな。それじゃ話して貰おうか」


 これはもう逃げられないようだ。家族がここまで俺の事を必死に隠してくれていたけど、自分で墓穴を掘る形で暴露する事になってしまった。最後の最後に……。まぁこうなったら今後の俺の身動きが良くなるように徹底的に俺の存在感を逆にアピールして、俺が居なくなると損だよと思わせるようにしよう。


 天才児マークの爆誕と行きますか!


「領主様、お待たせしました。ここからは僕がお話しします」


「あ!」「え!」「お!」「「「え~~」」」


 何だこの訳の分からん掛け声のような反応は? まぁそれを気にしてもしょうがないので、このまま俺は無視して説明に入る。


「先ず、お話ししなくてはいけないのが、ポーションや付与魔法に使われる錬成陣と先程お見せした、アイテムバッグのこの部分に描かれている模様は同じ物です。そして、その模様の事を魔法陣と呼びます。ただ同じ魔法陣ですが用途の違いで、こちらの方を錬成陣と呼び区別しています。ここまでは宜しいですか?」


「「「……」」」


「お返事はないようですが、理解して頂いたとして次に行きます」


「いや! いや! 少し待て‼ あまりの事に返事に困っただけだ。これは現実だな? マークが私達に説明するというのは?」


「領主様、現に今しておりますが」


「それは分ってるの! でもね、どうしても頭が追い付いて行かないのよ! マーク」


「そうですか? でも奥方様は、良い物を作ってくれたと僕に言いましたよ」


 そうなのだ。奥方様は初めて会った時に「良い物を作ってくれて感謝してるわ」と言ったのだ。という事は俺が石鹸やそういう物を作った張本人だと知っているという事、それなのに、これ程驚くのはおかしい。まぁあくまで俺から見ての言い分だけどね……。


「よし! 分かった! 私達も頭を切り替えよう。これまではどこかでマークの天才ぶりを甘く見ていたようだ。だからこれからは一人の大人としてみる事にする。そうしないと頭が付いて行かない。皆の者、どうしても無理なようなら、マークの姿を見ずに話だけ聞いて理解しろ。良いな!」


 わぁ~~、領主様も結構無茶を言うね。俺の姿を見ずにと言うけど、それはちょっと無理があるよ。これから話す錬成陣と魔法陣の話は物を見ないと意味が全く分からない物だからね。


 図形と魔法文字の話だよ。自分で言ったけど領主様は出来るのかな……?

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