第185話 パワーレベリング?

「とー、こ、これはね、何と言えば良いか……。」


「マーク! わしにも使わせろ!良いな!?」


「う、うん。良いよ」


 ふぅ~~、助かった。今回は使わせろの方だったぜ。これは性能が良過ぎたことが幸いしたんだろうな。そうじゃなきゃ、絶対使わせろじゃなく、余計な物を作ったになっていた筈。ただでさえ色々作り過ぎていて、この先の事がまだ何も解決してないんだからな。


「それじゃ皆、少しの時間だけどここでスリングショットの練習をしよう。的は僕が作るから、合図したら場所を変わってね」


 俺はスリングショットで狙う的を三か所ほど場所を離して作って、皆に一つの的を、一定時間ごとに移動させたが、これは俺が弾の回収をする為だ。だって幾ら予備に作っていたと言っても放置出来るほどは作っていないので、壁にめり込んで変形した弾でも回収してもう一度錬成し直せば使えるようになるからです。


 それから大体30分ほどして練習は終了したんですが、俺は物凄いバカな事をしたことに気が付きました。


『ソラ、この弾と同じ物をボス部屋の宝箱に一杯詰めてくれる? 一度で良いから」


『マスター、気づくのが遅いですね……」


『分かってるよ! どうせ俺は抜けてますよ』


 くぅ~~、本当に俺って抜けているよな。形状が難しい物や特殊な魔道具じゃなければソラにこういう物だと言えば作ってくれるし、今回のようにただの鉄の玉だったら、物凄く簡単に、まして大量に作って貰える。


「いよいよ、ボス部屋に入るけど、やり方は大丈夫だね。中のボスはオークジェネラルが一体だけだから、落ち着いてやれば危険は無いからね」


「オークジェネラルなんてわしらは見た事も無いし、噂でしか強さは分からんが、エンター達は簡単に倒すんじゃろ?」


「まぁ慣れればそう難しい相手ではないな。ただし、マークの作った武器があればの話だがな」


「ルベリ爺ちゃん、そんなに心配なら、一度目はとーとかーにやって貰う?」


「いや、大丈夫じゃ。わしらでもこの武器があれば倒せるかも知れんのじゃろ?」


「そうだね。頭に当れば可能性はあるね」


『スリングショットでヘッドショット、なんちゃって!』


『はぁ~~、マスター恥ずかしくないですか……?」


『煩いよそこ。偶にはこういう親父ギャグも言いたい年頃なの』


 ボス部屋に入る前から、何だかルベリ爺ちゃんを筆頭にみんなの目つきがおかしいんだが、これってうちの家系が潜在的戦闘狂という事の証明だろうか……? 


 ――深く考えてもしょうがない、なるようになるよね。先ずは一戦、これで全てが明らかになる。


「ピギャー!」


「今のは誰!? あれじゃパワーレベリングにならないんだけど」


「「「…………」」」


 誰も返事をしない。そんな事しても俺には分かるんだぞ。ボス部屋に入る前に皆のステータスを記録しているから、変化が一番早い人が犯人だ。しかし、いきなり俺の恐れていたことが起きたな。う~~ん、さっきのルベリ爺ちゃんの言葉を軽くあしらわずに、狙うなと言うべきだった。狙えば倒せる可能性があるなんて言ってしまったから、軽い気持ちで狙ったのだろう。それにしても一発で命中させるなんて、どんな腕だよ……!?


「マーク、次だ次!」


 流石は戦闘狂の父ちゃん、何も出来なかった事で、やはりご立腹のようです。まして宝箱を開けて見ればスリングショットの弾がびっしり。これじゃそうなっても無理はないよね。


「とー、これは最初だけだから安心して。次からはちゃんとしたお宝が出るようになってるからね。それじゃ、一旦この転送陣でボス部屋の前に戻るよ」


「お前は本気だな……」


 勿論、俺は本気でボスラッシュをやるつもりだから、最短コースで行けるようにソラと打ち合わせをしている。本来ボス部屋にある転送陣は一階の入り口に繋がっているのですが、今回はボス部屋の外の特別転送陣に繋げている。


「次は絶対頭は狙わないでね。今度やったら本当に犯人捜しをするからね」


 俺が今度はちゃんと釘を刺したので、その後のボス戦はそれなりに時間を掛けて討伐出来、皆に経験値が入った。


「マーク、そろそろ一旦休憩にしようか?」


「そうだね。もう大分倒したし、レベルの上がってる人も居るから一旦休もう。丁度お昼も過ぎている頃だしね」


 タイミング的にも丁度良かったし、父ちゃんの提案で休憩を入れることにしたんだが、その休憩が俺にとっては物凄い災難になってしまった。


(セガール爺ちゃん)「マーク、このスリングショットを売りに出さんか!?」


(マリアベル婆ちゃん)「そうよ! これなら私達でも魔物に対抗出来るもの!」


(ロジー婆ちゃん)「マーク! この素材何なんだい!?」


(ルベリ爺ちゃん)「マーク、これはわしが貰って良いんだよな?」


(サリー婆ちゃん)「私はこの年になって初めて魔物を倒すのが楽しくなったよ」


(マルクス爺ちゃん)「マーク! この伸びる素材は他にも使えそうだな」


「ちょ、ちょっと待って! いっぺんに言われても答えようがないよ」


 これは拙い事になった。ボスラッシュのせいで興奮状態が続いていたからか、皆のテンションが非常に高いので、それぞれが言いたい放題に成っている。だが、それだけではない。ここに参加していない父ちゃん達も何か言いたそうな顔はしている。


 そうりゃそうなんだよな……。スリングショットを見せた時には好奇心の方が勝ったのか、その素材については誰も追及して来なかったが、これが何から出来ているのか? 興味がない訳がない。まぁ父ちゃん達はある程度の予測は立っているんだろう、だから躍起になっては聞いてこない。


 良く考えたら、父ちゃん達にはスライムとスライムゼリーの説明はしたけど、王都組が来た時に作り直したリストにも載っているんだが、王都組には説明していない。どうしよう? ここで話し始めると長くなるぞ。だけど話さないとまだ秘匿しないといけない物だと説明出来ない。


 スライムの浄化もまだ発表していないのに、その前にスライムゼリーを広める訳にはいかない。ましてまだ俺がスライムゼリーの研究を始めたばかりだし、この状況で今乱獲が始まっても拙い。



 しょうがない、お昼を食べている間だけで、秘匿しなければいけない事だけ話そう。今はレベル上げが優先だからね……。

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