第174話 丸投げに障害
ウイスキーの試飲会の後も爺ちゃん婆ちゃん達は色々話し合っていたみたいだけど、結論は出たのかな? 出来れば俺としてはレベル上げは是非やって貰いたい。最悪パワーレベリングでも良いから上げて置いて貰えれば、武術は無理でも、魔法で何とか対処出来るからね。結界の魔石魔道具もあるしね……。
「マーク、おはよう」
「おはよう、ルベリ爺ちゃん」
「皆はもう起きた?」
「あぁもう皆起きてるぞ。そろそろ皆上がってくる頃じゃ」
う~~ん、今は気にしていないけど、今後の事を考えるとやっぱり、来客用の客間は作らないと駄目だな。今は地下に酒も貯蔵していないから良いけど、今後はやっぱり酒は貯蔵したいからね。何でもかんでも熟成魔法を使うというのも味気ないし、大量に作るとなれば、自然に作らないと、魔力的に無理がある。
「それじゃ、ルベリ爺ちゃん、朝食後はうちの馬車を見て貰うから、そのつもりでいてね」
「それは、リストに載っていた、ベアリングと板バネの事だな」
「そうだよ」
「そんなに乗り心地が違う物か?」
「乗り心地もそうだけど、荷物も沢山詰めるし、速度も速くなるよ。勿論、故障も少なくなる」
ルベリ爺ちゃんと、こんな話をしていると、俺の部屋の地下からゾロゾロと皆が上がって来た。う~~ん、やっぱりこれはいかん! 俺の部屋の床が地下室の入り口というのは、早めに改善しよう。このままでは俺のプライバシーがない。
皆が起きて来たので、朝食を済ませ、今日の初めの予定通り、馬車関係の事を説明することにした。
「マークよ、エンターは今日は参加しないのか?」
「そりゃそうだよ。うちは村に一件しかない鍛冶屋だよ。何時までも休んでなんかいられないからね」
「そりゃそうか。お前達はわしらが来る前に暫く出掛けていたんだもんな」
「そう、ルイス爺ちゃん達のレベル上げも兼ねて、森の調査とダンジョンの設置に行っていたからね」
「そう言えば、ルイスが言っておったが、渡りワイバーンが山に住み着いているそうだな?」
「そうなんだよ。でも危険は無いようだったから、放置して来たんだよ」
「そうか……。危険は無いか……」
ん? 何だこの引っ掛かる物言いは? ルベリ爺ちゃんは渡りワイバーンに興味があるの? でも爺ちゃんは商人だし、ルイス爺ちゃんほど戦闘もこなせないから、興味を持つ意味が分からない。まさか、ワイバーンを使って何か考えているのか? 俺が考えたような輸送革命を? 流石にそれはないよな……。あ! でも聞いてみる価値はあるか。ルイス爺ちゃんより長く生きてるし、王都に住んでいるんだから、情報量は多い筈。
「ルベリ爺ちゃん、ワイバーンはテイム出来るの?」
「そ、そんなこと出来る訳ないだろう!?」
やっぱりそういう返事だよね。でもそれなら何で、爺ちゃんはあんな事を言ったんだろう? ワイバーンの素材が高級品だらか? まぁその事は今は良いや。今は先ずやる事がるから、そちらを優先しよう。
「これが、ルイス爺ちゃんの馬車とうちの馬車だよ」
「ここは本当に鍛冶屋かい? 鍛冶屋が馬車を二台も持っていて、馬まで三頭もいるなんて普通じゃ考えられないよ」
「サリー婆ちゃん、一台はルイス爺ちゃんの物だからね。それにうちが馬車を持っていても不思議じゃないんだよ。うちは鉄鉱石の自由採掘権を持っているからね」
まぁこれは主に言い訳に使っているから持っているだけで、普段は俺のアイテムボックスで鉄鉱石も運んでいるから、絶対に必要な物ではない。だけど、最近買い付けやダンジョンに行ったりして良く出掛けるから、重宝してるのも確か。
「それは言い訳だろう。あんたのアイテムボックスがあるんだから、無くても問題ない筈だからね」
「それはそうなんだけど、最近は材料の買い出しなんかには必要だから、見せかけに持っている状態ではなくなりつつあるよ」
「それで、ベアリングと板バネというのはこれの事か?」
「そうだけどベアリングは見えないよね。それに、この二台の馬車に使われているベアリングは同じだけど、こっちの荷車に使われているベアリングは違うの」
「違うベアリング?」
当然こうなるよな。ベアリングなんて聞いた事も見た事もないんだから、違うということすら意味が分からないだろう。ここで予備に作ってある物を見せても良いんだけど、やはりその前に一度試乗して貰った方が、ベアリングの良さを分かって貰えると思う。
「ルイス爺ちゃん、悪いけどこっちの幌馬車の方に皆を乗せてちょっと走って来てくれる。実感して貰った方が分かり易いと思うから」
「そうじゃな。それじゃ村を一周してくるか」
そう言って皆を送り出したのは良いけど、帰って来た時の皆の反応が怖かった。当然振動も少ないし、人数が乗っているにも拘らず、スピードが出るから、帰って来るなりもう欲しいの一点張りだった。いやいや、俺としては欲しいじゃなく、売って欲しいから、構造に興味を持って貰いたいんだよ。皆が帰る時には改造はしてあげるつもりだったから、欲しいというのはもう解決してる事なんだ。
「兎に角落ち着いて、馬車の改造は帰るまでにはしてあげるから、その前にこの構造を理解してくれる」
そう言って、予備に作ってあったボールベアリングとコロ式ベアリングの両方を見せ、錬成陣でも金属加工の方法も見せて、この技術を売りたいと皆に話した。
「マーク、これは流石に直ぐには無理だ。これだけの事をさせようと思えば、ここで暫く修業しないと無理だぞ」
「それは分かるんだけど、それだとここが知られてしまうから困るんだよ」
「だからって、マークが売りたいのなら、それはどうしようもない事だぞ」
やっぱりそうなるのか……。まぁ特許登録すれば名前が公表されるから、隠しようがないのは分かるんだけど、流石にここに身内じゃない人は居れたくないんだよな。
「う~~ん……、そこまでマークが嫌なら、ここに居る誰かが覚えるしかないな」
「ルベリ、そうは言うけどそんな細かい事が出来るのは、最低でも彫金のスキル持ちか錬金術のスキル持ちだけだよ」
ロジー婆ちゃんがそう言った瞬間、一斉に彫金師の職業持ち達が目を背けた。一番この家族の中で多い職業だから、そうなるのは当たり前だけど、これは彫金師や錬金術師の仕事だろうか?
俺はやっぱり鍛冶師の仕事だと思うんだよね……。
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