第171話 魔法陣の新たな可能性
「な、何てことをするんだい! 本当にびっくりしたじゃないか!」
「まあまあ、マリアベル婆ちゃん、今皆に説明したように、これがリストにあった魔石魔道具だよ」
「マーク、これは本当に凄い物だな。ナイフのような物だけじゃなく、魔法も防ぐんだろう」
「マルクス爺ちゃんそうだよ。だけど、この魔石魔道具を作るには魔力の抜けた魔石が必要になるから、そこだけは面倒だね」
「まぁ、そういう事はどんな物にでも付き物だから、職人なら問題ないさ」
マルクス爺ちゃんのいう事は正しい。職人が物を作ろうとする過程には、多くの場合面倒な作業があるものだ。それがこの魔石魔道具の場合、魔石から魔力を抜く作業になる。ただ、これもやり用は幾らでもあるんだよね。魔道具を使って魔力を使い切る、錬成陣(魔法陣)を使って魔力を抜くとか色々ある。
「そう言えば、王都では魔道具ってどれぐらい出回っているの?」
「そうだな……、ランプの魔道具なら結構の割合で使っている家もあるが、それでもある程度の収入がある家だな」
どうしてだろう? あぁそう言えばソラのダンジョンは特別だったにしても、最下層の宝箱から出るぐらいだったから、魔道具のランプでもそう多くは流通していないのか。初級ダンジョンなら、前半はポーション、中盤以降で中級のポーションやランプの魔道具が出るくらいか。まぁこれも俺の予想だけど……。
「ルベリ爺ちゃんは王都で錬金品を売ってるんでしょ。魔道具なんかは扱っていないの?」
「扱ってはいるぞ。でもランプの魔道具ぐらいが関の山だな」
「どうして?」
「それは、多くの魔道具が専門の店で売られていて、殆どの客が貴族や豪商ぐらいだからだ。他にも珍しい魔道具は王家が殆ど買い占めるから、店頭にさえ並ばないぞ」
そうなると、アイテムバッグなんかは一切店頭に並ぶことはないから、見た事がある人の方が少ないだろうな。う~~ん、そうなると俺が考えているような魔道具を売りに出したらどうなるんだろうか? 前世の家電品は作りたいと思っているんだけどな……。
「そう言えば、皆さんも魔道具に付いている、この模様のような物が魔法陣だとは知らなかったんですね?」
「知らなかったわよ。それに錬成陣も魔法陣の一つだなんて事もね」
「それじゃ、この魔石魔道具をよく見て下さい。そこには結界の魔法陣が出ていますよ」
「この模様のような物が魔法陣なんだな。そうすると、魔法によってこの魔法陣も変わるという事だな」
俺が結界の魔道具を皆に見せると、今度は魔法陣という物を理解したようだ。それに流石は殆どの人が生産職だから、魔法によって魔法陣が変わるという事まで予測している。
「ここまで、理解出来たのなら、ここからは本格的に魔法陣について話したい来ますよ。魔法陣とは……」
同じ付与魔法でも魔石魔道具には魔法陣が浮かび洗るけど、武器等に付与した時は魔法陣が見えない。そして、魔法陣は錬成陣のように自分で書いて作る事も出来るという事を説明した。勿論、魔法陣を描くにも特殊なインクが必要だし、魔力も必要だとね。
「マーク、錬成陣を書く時は、私も出来るだけ新鮮な魔物を血を使うけど、魔法陣も同じなんだね」
「ロジー婆ちゃんは錬金術のスキルを持っているから、無理して現地で作る必要は無いけど、もし機会があったら試してみると良いと思うよ。魔法陣でも錬成陣でも効果が凄く上がるから」
「マーク、魔法陣の事で一つ聞きたいんだが、お前はアイテムバッグも魔法陣で出来ると言っていたよな。あれはどういう意味なんだ?」
「マルクス爺ちゃん、あれはね、それなりの魔力を持っている人が特殊なインクでバッグに魔法陣を魔力を流しながら書いたらという事だよ」
「そしたら、わしに魔力があれば作れるのか?」
「どうだろう? そこはまだ実験してないから何とも言えないけど、僕の予想ではこれもポーションと同じで、スキルを持っている人とそうでない人では差が出ると思うよ。幾ら魔力があってもね」
マルクス爺ちゃんは革職人だから、錬金術のスキルは持っていない。それでも、もし爺ちゃんが作ろうとしたら、物凄い魔力を使って魔法陣を書いても、性能としては物凄く劣ると思う。まして失敗する可能性すらある。それと多分だけど、革職人のマルクス爺ちゃんが錬金術スキルを発現させようとするなら、称号のランクを一つ上げる必要があるあろうね。
「マーク、魔法陣は風呂の魔道具にも使われていたな。あれはどうやって作ったんだ?」
あぁ確かにあれについては同じ魔法陣でも作り方が特殊だからな。ダンジョンコアであるソラに手伝って貰って作った物だから、普通に金属の板に魔法陣を書いた訳ではないので、作り方を俺も理解していない。あれも羊皮紙と同じように特殊なインクで書けば良いのかな?
いや! 違うな! これはあれだよ。あれとあれを使うパターンだ。ダンジョンコアのソラが手伝ったんだもの、金属に魔法陣を書く時は絶対あの二つを使う筈だ。そうミスリル合金とスライムゼリーを使うと思う。だって金属に書くなら、金属で魔力の通しやすいミスリル合金は必要だろうし、魔物の血とインクをミスリル合金を掛け合わせるのにスライムゼリーが良い役目を果たしそう。合金を一時的に固めないとかね。という事で、思い立ったが吉日、早速実験してみよう!
「マーク、急にどうしたんだ?」
「ちょっと思いついたことがあるから今から実験してみるよ! これにもし成功したら皆に高性能な錬成陣が渡せるよ」
俺が今からやろうとしているのは、金属の板に錬成陣を書く事。そしてそれを書くためのインクに魔物の血、普通のインク、ミスリルと銅の合金の溶かしたもの、そして最後にスライムゼリーの四つを混ぜた、特殊インクを使う。
ここで一番の問題になるのが、俺の予想が当たるかどうか? それは、ミスリルと銅の合金がスライムゼリーの影響で固まらないように出来るかなんだけど、その後の経過も当然確認する必要がある。時間経過で固まるのか? スライムゼリーの水分を強制的に……! あ! そうだ! スライムゼリーを初めから粉にすると言う方法もあるのか?
俺もこうなると止まらないので、爺ちゃん達への魔法陣講義をそっちのけで実験に没頭してしまった。
結果、スライムゼリーを乾燥、粉にして魔物の血と普通のインクに溶かし、最後にミスリル合金を溶かしたものと混ぜ合わせてインクを作ると、かなりの時間固まらない事が分かりました。そしてそのインクを使って金属板に錬成陣を書くと、今まで俺が使っていた、錬成陣の一番高性能だったものより一段良くなった錬成盤が出来上がったのです。
これは画期的だよ! 金属だから羊皮紙に書くより断然耐久性がある。更に魔法陣を彫ったものに中にこのインクを流して錬成盤を作れば、もっと耐久性が上がるかも……?
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