第97話 やばいよ、やばいよ
アイテムバッグの作成後、昏倒から覚めてソラとひと悶着あったが、兎に角急いで食堂に行かないと拙いと思い、ソラに魔力を3000渡して食堂に向かった。
「あれ? これまでと倦怠感が違うぞ?」
食堂に向かいながら歩いていた時に、俺の体の異変に気付いた。以前だったら魔力に余裕を持って3000魔力をソラに渡しても多少の倦怠感というか疲れのような物はあったんだが、それが今は全くないのだ。
その違和感が気になるが、今はそれどころではない。先ずは夕食を済ませて、例の話を今日するか明日にするか話さないといけない。俺としては魔道具の話もあるし、この際だからポーションの話まで全部話してしまいたいから、明日の方が良い。
勿論、風呂を作るつもりだから、その計画も説明して両親の了解を取って置くのも忘れない。
そんな事を考えながら食堂に着いたが、食堂に入る前にどうしても違和感の正体ぐらいは知りたいと思って、自分のステータスを確認してみた。すると、OH NO! やばいよ、やばいよ! こんなことがあって良いのか!
名前 マーク
種族 ドワーフ
状態 良好
職業 マイスター
レベル 32
HP 440/440
MP 5830/5830
スキル (言語理解) 生活魔法 鑑定(解析)錬金術 (アイテムボックス)
身体強化 付与魔法
魔法 火魔法 (全)
(固有スキル) (魔技)
称号 (技巧神の加護)
「ふぅ~~~、一度落ち着こう……」
あまりのステータスの変化に驚き過ぎて何をどう考えたら良いかも分からない状態だった。その時、
「マーク、早く入って来なさい! 何してるの?」
俺の足音と扉の前での独り言が聞こえたのか、母ちゃんが俺に早く食堂に入ってくるように声を掛けて来た。
俺としてはそれどころでは無いのだけど、ここで動揺してる所を見せたら、何をどう追及されるか分からない。だから、必死に平静を保って食堂に入った。
「何してたの? あまりに遅いから呼びに行こうかと思っていたところよ」
やばかったな~~、ほんの少しでも俺が昏倒から覚めるのが遅かったら、また両親がパニックに成っていたかもしれない。まぁ魔力量UPに昏倒が必要だという事は知っているから、昏倒していてもMP切れだと思うだけだろうが、俺のMPの多さを知っている今は他の意味でパニックになる可能性がある。
それだけの魔力を何に使ったのかという事でね……。そしてもし今回の原因であるアイテムバッグを俺が昏倒してる間に見られていたら、これまた大騒ぎになっている。
「ちょっと疲れていたのか寝ちゃってた」
俺が軽い気持ちでそう返事をしたら、父ちゃんが奇妙な眼差しで俺を見て来た。これは余計な事を言ったかな? 父ちゃんと別れる時にやることがあると言って別れてた後の事だから、昏倒を疑われているのか? いやいや、うちの父ちゃんに限ってそんなに勘が良い訳がない。
なら何であんな目で俺を見てくるんだ? 何かあるとすれば、お前は呑気で良いなと言う感じかな? 多分爺ちゃんが帰って来た事で、婆ちゃんが他の事は話していなくても酒の事は話した可能性があるから、父ちゃんの馬鹿さ加減に皆からまた説教されたのかも知れない。
「そうかい。それなら良いけど、あまり昼間に寝ると夜眠れないよ」
「うん、気を付けるよ」
そんな普通の会話の後、食事も久しぶりに家族五人揃って食べ終わったが、そこからが一気に何とも言えない雰囲気になって行った。俺はそれどころではないんだけどね……。
「マークよ、話があると言っていたが今からするのか?」
「爺ちゃん、その事なんだけど、明日じゃ駄目かな?」
「わしは構わんが、何やら婆さんが急いでいるみたいでの」
「私は別に明日でも良いんだけど、爺さんが早く知りたいと思っているだろうと思って言っていただけだよ」
これはもう狐と狸の化かし合いに近い様な感じだな。どちらも早めたいという気持ちはあるけど、自分でいうと焦っているように見られるのが嫌で人のせいにしてる感じか。
婆ちゃんの気持ちは分かるよ。本来なら爺ちゃんが戻る前にダンジョンでレベル上げをする予定だったのに、それすら出来ていないし、武器の試し切りも出来ていないから鬱憤が溜まっているので、それを叶える為に全てを急ぎたいんだろう。
爺ちゃんも似たような物で、自分だけ知らないことがあるのが嫌だから、一日も早く皆に追いつきたいという気持ちからだろう。
「別に僕は今日でも良いんだけど、話が長くなりそうだから、明日の方が良いなと思っているんだ。それに爺ちゃんも王都から帰って来たばかりで疲れているでしょ」
「いや、わしは疲れてはおらんぞ」
何言ってるのさ、散々俺を殺す気だったのかと俺達を攻めたくせに、疲れていない訳ないじゃん。
こうなると、狐と狸に
ん~~~、こうなると今日話すという事に成り兼ねないな。昼寝をしたという事になっているから、余計に夜でも大丈夫だろうと墓穴を掘っているから、これ以上は良い訳のしようがない。
これはやばいな。どうする……?
え~~い、こうなったらどんな事を明日話すかを暴露してしまえば、良いんじゃないか? そうすれば今からは無理と思ってくれないだろうか? 両親と婆ちゃんが知っている話だけでも相当なことがあるし、それに加えてまだ知らない話もあると言えば、父ちゃん達が後押ししてくれるかもしれない。まぁ逆になる可能性もあるが……。
ただでさえ俺は自分のステータスの異常な上昇の分析をしたいのに、今日今から色んな話をするのはしたくない。そうだ! それならこれも丸投げしよう。両親が知っている話は両親に任せて、残りは明日俺がするという事で。それにはやはり、明日暴露する話のさわりだけでも教えておいた方が良いだろう。
「爺ちゃんが疲れていないなら良いんだけど、僕から話すことが山ほどあるけど良い?」
「おいマーク、山ほどとはどう言う事だ」
よし、こういう時の父ちゃんはやはり頼りになる。期待を裏切らないよね。
「えっとね、とー達が知っている話の別に話すことが山ほどあるという意味」
「マーク、そんな事がまだあるのかい? あんたはどれだけ親の寿命を縮めたら気が済むんだい?」
「寿命が縮むかは分からないけど、一つは改良ポーションの話だね」
「ポーション……」
母ちゃんがそう口にしたまま、何も言わなくなったので、これ幸いと俺は急いで自分の部屋に戻って鍵を掛けて、今日中の暴露がない事を確定させた。
ここまで話しておけば、恐らく俺が居なくても爺ちゃんが婆ちゃん達を問い詰めるだろうから、俺がその部分について話す必要は無いだろう。
だが、何時に成ったら、ダンジョンや風呂が作れるのか? 先はまだ長いな……。
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