第98話 これで終わりにしたい

 今日中の報告会からは何とか誤魔化して逃げてこれたけど、俺にはこれからすることがある。いや~~本当にやる事が多過ぎて何も進んでいないような気がするよ。


 その原因は一つの問題を解決しようとするとまた別の問題が浮上するからだ。それなら一度に全部の問題を解決するしかない。勿論、今の段階での事だけどね。この先の事は誰にも分からないんだから、今は誰もどうする事も出来ない。


「さてと、先ずは俺のステータスの分析からだな」


 名前 マーク 

 種族 ドワーフ

 状態 良好

 職業 マイスター

 レベル 32

 HP 440/440  

 MP 5830/5830

 スキル (言語理解) 生活魔法 鑑定(解析)錬金術 (アイテムボックス)

      身体強化   

 魔法 火魔法 (全) 付与魔法 

(固有スキル) (魔技)

 称号  (技巧神の加護)


 これはどういう事なんだろうか? レベルが以前に比べて一気に4ぐらい上がっている気がする。以前ステータスを見てから忙し過ぎて全く見ることがなかったから、正確じゃ無いけど、間違いなくレベルは20台から30台に上がっている。だから最低でも3以上は上がったという事だ。


 だけど、このレベルの上昇は魔物の討伐によるものじゃない事だけはハッキリしている。魔物の討伐でレベルが一気に4ぐらい上がるって相当の数の魔物を討伐するか、強力な魔物を倒すしかあり得ない。


 そうなると俺のチートである魔技と技巧神の加護によるレベルUPという事になるのだが、何が要因だろう? 一つは直ぐに思いついた。何故ならついさっき起きたばかりだから、あれしかない。そうアイテムバッグ作り。魔力全放出までして作った物だから、レベルが上がって当然だ。


 あれ以外だと細々したものだけど、確かについ最近色々作っているし、付与魔法も使っているから魔技判定され、それもレベル上昇の要因ではないだろうか。この上がり方だとレベル40ぐらいまでは簡単に行きそうだな。


「それにしてもMP5000越えか~~、いや、もう直ぐ6000は異常だよな」


 思わずそう呟きたくなるほどMPの上昇率はレベルよりも驚いた。


「だから、体が軽かったんだな」


 この原因って物作りだけだろうか? ソラに魔力をあげたことも大きな原因じゃないかな? コアを成長させるのも一種の物作りと判断されているのかも。


 ステータスに関しては細かく見ていなかった俺も悪いし、昏倒を二回も経験してるのに、確かめなかった事が一番悪い。俺の場合は他の人と違って物作りでもレベルが上がるんだから、物を作った時は逐一確認するべきだ。レベル上昇のアナウンスなんて無いのだから……。


 さて、ステータス上昇の分析は終わったけど、これも報告するべきだろうか? 明日色々な事を報告すると言った以上、何処まで話すか整理しておかないといけないが、その中にステータスの事も入れるべきか? 


「そう言えば、爺ちゃんは婆ちゃん達を問い詰めているだろうか?」


 それによって明日話す内容が変わってくるから、身体強化の応用、「遠耳」で食堂の様子を探ってみた。


「おぉ~~、凄い勢いで爺ちゃんが両親を問い詰めてる。あれだけ前振りをしてやれば、当然だよな」


 食堂の様子を聞きながら、俺は明日話す内容の始まりを決めることが出来た。この分だとソラの話まではしてくれそうだったから、先ずはポーションの話から始めることにした。これがずっと気掛かりだったことだから、一番に話さないと今後に響く。


 ポーションの話は世界を本当に変えるからね。魔石はそのままのクズ魔石(ホーンラビット、ゴブリンの魔石)でも俺の開発したポーションの作り方なら、効果が上がるから、錬金術のスキルを持っていない薬師でもそれなりのポーションが作れるようになる。結果、畑の肥料とポーション作りにしか使ってこなかったクズ魔石の需要が高まるから、物価が高騰する可能性が大だ。当然そうなれば冒険者の収入も増えるから、経済は回るけどね。


 他にも、これまで宝石代わりにしていたオーククラスの魔石などにも使い道が俺によって出て来るのだ。俺が作った結界の魔石魔道具のような物が作られるように成れば魔石の価値はもっと上がる。


「魔石バブルが起きるかも?」


 ポーションと魔石魔道具の話だけでこれだぞ。この先の魔道具の話までは今は無理かな? 実際まだアイテムバッグしか作っていないから、報告する必要はないか? 


 いや、ダンジョンで魔法陣の話まで父ちゃん達にはしたから、魔法陣による魔道具の話もしないといけないよな。ただ今は作れないと言う感じにボカシて……。


 ただそれでも、これらの話は当分内緒にした方が良いと話すべきだよな。正直時期尚早だと思うからね。だって魔道具の前に作る物がもっとあるのよ。この村でもそうだが水車一つないんだよ。そんな世界にこのまま魔道具のような物をいきなり作っても世界がそれについてこれないと思う。


 その結果、大きな争いの原因にすらなり得る。まぁ武器の強力化を始めている俺が言っても物凄く矛盾してるけどね。


 ん~~~~、ここまで話す内容を整理したら、やっぱり全部話した上で家族会議をした方が良いように感じるな。俺は色々作るけど、世の中に出す順番やタイミングは祖父母や両親に任せた方が良い気がする。そう思いながらも、俺は、


「だけど、あの人達だからな~~、本当に任せて大丈夫か?」


 不安の残る家族であるのも確かだから、最終的にコントロールするのは俺になるのかも……?


『さっきから何をうなっているんですか? それに色々駄々洩れですが」


『え! ソラ聞いてたの?』


『はっきりした原因は分かりませんが、私の近くでマスターが深い思考に入ると聞こえるのかも知れません』


『それでどの辺から聞こえてたの?』


『……』


 答えんか~~い! まぁ答えないという時点で、初めからという事を肯定しているようなものだけどな。


『別に答えなくても良いんだけど、聞いていたなら分かっていると思うけど、ソラを特級ダンジョンに出来るだけの魔力を俺が持っているという事を少し考えた方が良いんじゃない。成りたくないなら別に良いんだけど……』


『マスターもお人が悪いですね。当然初めから聞こえていたから返事をしなかっただけですよ。聞いてはいけない事があった時に知らない振りをするのも部下の勤めでしょ』


 都合の良い様な誤魔化しだが、少しは考えるようになったようだな。ねじが一本嵌まったか……?

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