ドワーフ転生 物作りって楽しい

第96話 アイテムバッグ

『ソラ、お待たせ。それじゃさっき言っていたアイテムバッグを作ろうか』

『はい、マスター。それにしてもマスターのご家族は大変だな……』

『何が大変なの？』

『それは私同様苦労されているなと思ったからで～～す』

　こいつ未だにチョコチョコ言葉遣いがおかしくなるな。まぁ俺がかなり脅したから、この程度まで矯正出来たけど、元が元だからな……。

『ソラ、コアって半分に分割出来たりするの？」

『ど、どうしてそんな事をお聞きに成りたいのですか？」

『ちょっとうるさくて生意気なコアがあるから、半分にしたらどうなるかな～～と思ってね。それにそれが出来るなら、ダンジョンを二つ作る事も出来るじゃん』

『……、冗談ですよね』

『冗談でこんな事言うと思う。ソラが答えないなら、一度試してみるしかないかな。壊れて使えなくなるなら、それはそれで仕方が無いし、どうしても必要だと思えば、またどこかのダンジョンに行けば良いだけだからね』

『す、すみませんでした～～～、コアを半分にする事は出来ません。もしそんな事したら、私は消滅します』

　ほうほう、そういう事なのね。コアの分割は出来ないと。本当にそうなのかな？　ソラの消滅するという言葉はソラと言う自我が無くなるという事じゃないのかな？　だって魔力をソラに与えてもサイズが変わらないんだから、コアの大きさと魔力量やレベルに関係性はないという事だよね。

　それから考えられることは壊れた時に魔力が全て抜けてしまうから、ソラが死んでしまうという事じゃないかな。そして割れたコアにまた魔力を与えたら新たな自我が芽生えるとか？　ありそうじゃない？

『ソラ、俺に嘘は駄目だよ。こういう事じゃないの……」

　俺がさっき考えた仮説をソラに話して聞かせたら、

『ギク……』

　今時自分でギクなんて言うやつはいないけど、ねじが何本か抜けているソラだからな～～。本当に分かりやすい奴。

『ソラ、この先を言わなくても分かるよね』

『はい～～～』

　よし、これで当分は大丈夫だろう。だが暫くしたらまた同じようになるだろうから、その都度脅しを入れないといけないだろうな。次は少し削ってみるか……。

『ソラのせいで無駄な時間が掛かってしまったから、罰として暫くダンジョンは作らないからね。勿論、その間に減った魔力の補充も無し』

『そんな～～～～』

　こんな事を言ってもダンジョンが作れないのは、ソラも俺達の話を聞いて知っているので効果は無いだろうが、色んな事がすんなり進まないとダンジョンを作るのが遅くなるという事は理解出来ただろう。その為には俺の言う事を素直に聞くことが早道だという事も同時に理解した筈。

『それじゃあ、さっきの続きをやるよ。このバッグをアイテムバッグにするから宜しくね。ついでに俺のイメージをソラに送るから、それで作ってみて』

　これは一種の実験です。俺のイメージがソラに伝わり、それをソラが現実に出来るかというね。もしそれが出来たら、これから何でも俺のイメージする魔道具がソラによって作れるという事だ。ただ今の状態だと俺の魔力量とソラの魔力量次第だと思うから、何でもという事にはならないけど……。

　マジックバッグの製作に魔力量がどの位いるだろう？　容量無制限の時間経過無しなんてイメージしたら俺の魔力量だと絶対無理なような気がする。容量を馬車二台分ぐらいとして、時間経過無しなら出来るかな？　

　既存のバッグとオークの魔石を用意して、

『ソラ、行くよ！』

『嘘～～～ン、無理無理無理！』

　ソラのその言葉を最後に俺は意識を失った。そして次に目覚めたのはもう夕食になる寸前だった。

「やべ！　もう外は真っ暗じゃん！　急いで食堂に行かないと母ちゃんが呼びに来る。あ！　そう言えばソラは大丈夫かな？」

『ソラ、生きてるか？』

『酷い！　マスターなんて嫌い！』

『文句が言えるなら生きているという事だな』

『生きてはいますが、魔力が殆どありませんから、死ぬ一歩手前です』

　成程、こいつは俺の魔力を全部使っても、自分の魔力は少し残してアイテムバッグを作ったんだな。そんな状態で出来たアイテムバッグはどんな物だろう？

「鑑定」

　ふむふむ、そういう事ね。俺のイメージは容量馬車二台分で時間経過無しだったが、出来上がっているアイテムバッグの鑑定には、容量馬車二台分は成功しているけど、時間経過四分の一だった。という事は一日しか持たない物でも四日は持つという事だ。

　いやいや、今はそんな事を言っている場合じゃないな。先ずはソラに魔力をあげないと本当に死んでしまう。俺は昏倒から目覚めているから魔力は全回復してるので魔力3000は与えても問題ない。

『ソラ、お前の生存本能は大したものだね。しっかり調整して自分だけ生き残るようにしたんだから』

『それは仕方が無いじゃないですか』

『いや、別に責めている訳じゃないよ。それはソラの生存本能だし、俺は魔力が無くなっても昏倒するだけだからね』

　恐らく、前回ダンジョンで俺が魔力を使い切っても昏倒しただけだったから、ソラはそれで大丈夫だと判断し、自分の魔力の限界まで使って出来る範囲の物を制作したんだろう。それから考えればソラはよく頑張った方だ。多分作る前にした脅しが効いたんだろうが……。

『マスター、言い難いんですが、もう少し常識を学んでください。幾ら何でも時間経過無しなんて魔力が物凄く必要です。特級のダンジョンで作れる物ですよ』

　成程、それならダンジョンがあればソラでもそれに近いものは作れるという事だ。あくまでダンジョンがあればだが……。それにソラは容量については何も言わないが容量無制限とかも時間経過無しと同じで恐らくダンジョンなしでは作れないだろうな。

　容量無制限、時間経過無しというのは一種の亜空間世界を作り上げるのと同じ事なんじゃないかな？　今回は容量を指定して、時間の経過だけならその範囲だけの時間操作だから今回ギリギリ経過を四分の一までに出来たという事じゃないかな？

『ソラ、常識が俺にあると思う方が間違いだよ。俺にそれを求めるなら、ソラが教えてくれないと。俺は五歳児だからね』

『常識を教えるなんて分かりませんから、この次からは作る前にどう言うイメージをするか教えて下さい。そしたら出来るか出来ないかを言いますから』

　おぉ～～、その手があったな。次からはそうしよう。

『ソラ、取り敢えず俺はこれから食事に行かないといけないから、魔力を3000だけ渡しておくよ。それなら良いだろう』

『マスター、御託は良いですから、早く下さい』

　こいつまた言葉遣いがおかしくなっているけど、今は緊急事態だからスルーして、後でお仕置きだ……。