第14話 鍛冶見習い

 と言う事で、早速父ちゃんの所へ  何がと言う事?

 刃物 は、も、の、です、刃物の調達です。 しつこい!


「とー かじおしえて」


「はぁ~、 何言ってるんだ? マークにはまだ早いだろう」


 ん~~ここはどう攻略する? 幼児の必殺上目遣い? 駄々をこねる? 真摯にお願いする? うるうるウソ泣き戦法?  はい! これですね。


「――だめなの……」


 もう今にも泣きそうな顔で、父ちゃんを見つめて、手を握り締めて泣くのを我慢してるように見せ、ただ一言呟いた。どうだ?


「ん~~、まだ早いとは思うが」


 『その時エンターはモリーの言葉を思い出す。ポンプのミチュアを作ったマークを見て、モリーはマークを普通に育ててはいけない。自由にさせようと言った言葉を……。』


「そんなにやりたいか?」


「うん」


「絶対に父ちゃんの言う事は聞くんだぞ、それが守れるなら教えてやる」


「うん! ぜったいまもる」


 よっしゃー 作戦成功! これで何とか刃物が作れる可能性が出来た。


 俺は今回の事に母モリーの言葉が影響していたことは知らなかった。


 それから毎日俺は父ちゃんの鍛冶場に行き、一から鍛冶の事を教えて貰った。


 鍛冶見習いに成って鍛冶を学びながらも、俺は森でのレベリングもやっている。


 刃物が無いから行ってないと思ったでしょ、刃物が欲しいのは将来戦利品を人に見せる時に困るからで、見せないゴブリンなんかは関係ないのよ。


 それに俺のアイテムボックスは魔力が多いから大きさも相当大きいし、時間もほぼ止まってるから、血抜きすらしてないものでもそのまま保管できる。


 ラノベのインベントリみたいに時間停止の無制限ではないのですよ。アイテムボックスは魔力量に影響されるもの、MPが多いほど大きくなり、時間がどんどん遅くなる。


 レベル上げも魔力感知で巣で眠っている魔物を見つけては戦いもせず瞬殺、イージーモードでやっています。偶には気づいて起きてくる魔物もいるけど、出会い頭に魔法をぶっ放すから、戦いにならない。


 ただレベルはそんなに上がっていない。どうも俺は普通の人より魔物討伐ではレベルが上がり難いようです。


 その代り魔法や魔力による物作りでは上がり易いようです。


 水鉄砲やポンプのミニチュアを魔法で作った時にレベルが3も上がっていましたから。

 それに紙飛行機一つ作っただけでレベルが1上がったんですよ、それから考えたらそうとしか思えません。


 現在のステータス

 名前 マーク 

 種族 ドワーフ

 状態 良好

 職業 マイスター

 レベル8

 HP 130/130  

 MP 2480/2480 

 スキル (言語理解) 生活魔法 鑑定(解析) (アイテムボックス)     

 魔法 火魔法 (全)

(固有スキル) (魔技)

 称号  (技巧神の加護)


 鍛冶見習いに成って2か月が経ちました。鉱石の見分け方から始まり、鉱石を精錬する方法、青銅のような合金の作り方、鋳造、研ぎなどを学びました。


 お気づきだと思いますが鍛造は学んでいません。鍛造と言えないのです。


 鋳造で出来た金属板を叩いて変形させているだけなんです。


 これも鍛造なんでしょうが、元日本人としてこれを鍛造とは呼びたくない。


 やはり鍛造と言えば折り返し鍛造でなくては日本人は納得しないのです。


 どうせ自分の刃物を作るなら、玉鋼から作って日本刀の作り方で作りたいじゃないですか、とういう事で砂鉄採取に川へGO!


 玉鋼も多く必要ありませんから、この世界で利用されていない砂鉄は普通に川岸に自然堆積していますからそれだけでOK。


 大量に作るならかんな流しで採取する必要があるでしょうが、今回は無し。地形も変わってしまいますから。


 たたら製鉄は粘土で窯を作って木炭と砂鉄を交互に入れて熱すればOK、温度を上げるための風は魔法で代用、簡単に言っていますが本当はもっと構造的には色々工夫がいるんです。


 これを地下でやったもんですから、製鉄が終わるまでは俺の部屋はサウナ状態、両親が部屋に近づかないようにするのが大変でした。


 空気穴の有る所に両親が行っていたら一発で見つかっていたでしょう……。


 鍛冶の流れは覚えたので、父ちゃんに試しに一人で一度ナイフを作ってみたいとお願いしてみた。


「怪我しないようにゆっくり丁寧にやるんだぞ」


 あれ? こんなにあっさりOKが出るとは思わなかったので、拍子抜けしてしまった。


 疑問に思うがOKは出たんだから、気にせず玉鋼を溶かして型に入れて板にする。


 それが出来たら、その鋼材をり返し鍛造する。


 その後は父ちゃんの作った鉄板も折り返し鍛造して、出来たもの同士をくっ付けて

 それをナイフの形にように鍛造する。


 最後に焼き入れと焼き戻しをして、研げば完成。


 この一連の作業を見ていた父ちゃんは何か言いたそうだったが、ぐっと堪えて見ない振りをしていた。横目でちょくちょく見てたけどね。


 ナイフは完成したけど、マジでこの先の事を考えるともう限界かな?


 どう見ても父ちゃんからしたら信じられない事ばかりだもんね。鍛冶を長年やってるからこそ、俺のやっていた事が異常なのは一目見れば分かる。


 どうしようかな? 誤魔化すにも限界がある、もう限界が来てるよね。


 じゃぁどう話す? 何処まで話す?


 両親はとても俺を愛してくれてるから、全部包み隠さず話しても良い様な気はするけど、一つだけ絶対に言いたくない事がある。


 それは前世で多分両親より年上だったこと、享年は覚えていないが知識量からすると50歳以上だと思うから、それだけは言いたくない。


 俺だったら自分の子供が自分より年上だったなんて聞かされたら、どう接していいか分からなくなる。


 それなら前世があると言わず、夢で別の世界をみて、その夢の通りにして作った物が今までの物というのはどうだろうか? 厳しいか?


 神のお告げ……嫌これは絶対ダメだ。使徒とか神子扱いされる。


 これはどうだろう? 別の世界で生きた記憶はあるが、名前も年齢も何もわからないし、どんな人生だったかも覚えていない。これがギリかな?


 職業と魔法については話すしかないだろう、この先隠し続けるのは無理だから。


 チートじゃなければそう問題じゃないんだけどな……。

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