第13話 トンネル開通

 魔道具が作れることは解っても今はそんな事をしてる暇はないのです。


 ポンプを作らなければいけないし、トンネルも掘らないといけません。


 魔道具の研究はそういうのが全部片付いてからじっくり腰を据えてやらないとね。


 ポンプはこの際ゆっくりやろうと思っています。水が必要になるのは地下で物作りを始めてからだと思うから、それよりも今はトンネルです。


 レベル上げが早急に解決する必要のある、喫緊の課題だからです。


 もう500m位は掘ってるんだけど、まだかな? この世界の単位だと500メルです。


 どうして森に届いていないのが分かるかって? 


 だって村から森までの間って草原だから、木の根っこが無いんです。木の根っこが多くなれば完全に森の中だって判断できるでしょ。


 この世界の長さの単位

 1ミル → 1mm

 1セル → 1cm

 1メル → 1m

 1キル → 1km


 頭文字にルが付いただけか~~い 突っ込みを入れたマークでした。 


 5日後、漸く木の根っこが増えてきました。直進はここでストップ、ここから真横に傾斜を付けて掘って行きます。


 森の入り口に近過ぎてもいけませんが、奥過ぎるとこれも問題です。いきなり強い魔物が出て来ても困ります。


 何といっても初戦闘ですからね。初めは最弱定番のスライムかホーンラビットぐらいが希望なのです。ゴブリンというのもありでしょうが流石に初めてが人型はね……。


「ふ~ようやく かいつうか」


 トンネルが開通して安堵した開放感で何も気にせずトンネルの外に出た瞬間


「ぐぎゃー」


 というという鳴き声のような物が聞こえたので、振り返ると、そこには凄い形相の漫画などで御馴染の姿をしたゴブリンが俺に向かって走って来ていました。


「う! うぃんどかったー」


 手を自分の前にかざして、咄嗟とっさにそう叫んでいました。


 それは一瞬だったのか、何秒か掛かったのか分かりませんがゴブリンの身体を胴から真っ二つにしてしまいました。


 いきなりですよ。俺も油断していましたがトンネルを出て直ぐ、ゴブリンに襲われるとは思ってもいなくて、もう何が何だか、咄嗟に魔法が打てて良かったですが出来なかったらと思うと背筋が冷たいです。


 いや~、 ホント勘弁して欲しいです。こういうのは平和な国に暮らしていた人間の危機感の無さなんでしょうね。


 特に日本人はそうですね。人でも動物でも海外だと危険だという認識が常にあります。日本だって犯罪はありましたが、海外ほど身近では無かったですからね。


「うわ~グロ、たいえきはみどりかよ」


 初めての魔物討伐ですが、グロイとは思いましたが、吐くようなことは無かったです。


 これは漫画やアニメの影響でしょうか? 魔物は悪という認識が刷り込まれているので、殺すのが当たり前という認識で罪悪感が薄いのかもしれません。


 それに5年という短い期間ですけど、この世界はそういうものだと頭が理解してるんでしょうね。


「あ! そういえばまものにはませきがあるんだよな、どうやってとろう?」


 刃物も無いしどうしようかと考えた結果、魔法でやることにしました。


 光のビーム? 水の超高圧水流? ウインドカッターで細切れ? 燃やしたら魔石は残る?


 ここは一番無難そうなビームかな? 焼き切るからこれ以上体液も出ずらいだろうし。


 と言う事で、この世界では俺しか使えない光魔法でビームをイメージしてゴブリンの心臓辺りを切開、何とか魔石を見つけ、取り出しは細い木の棒を箸のように使ってつまみ出しました。


 こういう時便利だよね前世日本人だから箸はお手の物だから……。


「ませきって、こんなかんじか、まるくはないんだな」


 魔石は漫画などの物とは違って凸凹とした歪な形をしていましたが、見た目は違ってもこれが魔石だという認識は出来る物でした。


「ませきはとりあえず、あいてむぼっくすにしまっておこう」


 兎に角今はトンネルの出口を隠さないといけません。この森は冒険者が出入りしていますからね。


「かくすといってもどうやろう?」


 1 板で塞いで土でカモフラージュ? 板何てね~し

 2 一度埋め戻して毎回掘り直す? ちょ~面倒

 3 大きめの石で塞ぐ? これ!  


 大きな石をアイテムボックスで出し入れすれば問題解決。早速、周りを警戒しながら、手ごろな石を見つけて実行、超簡単に隠す事に成功! やったね!


 今日はちょっと時間を掛けすぎたので、急いで戻る事にしました。


 俺の秘密工作は最高2時間を限界に設定しています。5歳児が親の目から離れていられる時間がこれ位が限界だと思っているからです。


「マーク 何処にいるの?」


 思った通り母ちゃんが探しています。部屋に戻って窓から外に出て、何食わぬ顔で登場しましょう。


「かー ここだよ」


 母ちゃんはそこはさっき探したわよというような顔をしていましたが、そこは5歳児、うろうろしてたと誤魔化した。


 バレテルかな? 母ちゃんは諦めたようにそれ以上の追及はし無かった。


 その日の夕食後、これからの計画を考えた。


 今回のようにどんなに用心しても、不測の事態で帰りが遅くなるという事を想定して、森でのレベル上げは夜行うことにした。


 夜は危険だとは思うが、夜の方が冒険者に会うことも無いだろうし、余裕を見て行動すれば、滅多なことでは両親に気づかれることは無いだろう。


 問題は夜行動するためには睡眠時間を確保しないといけないという事だ。


 一番不自然じゃないのは、早く寝て朝というか夜中に起きて森に行くのがベストなんだろうが、これにも問題がある。


 魔物だって寝るのだ。当然巣をつくるような魔物だと巣に籠ってしまう、そうすると見つけられない。


 そこで解決策は、魔力感知! ソナー魔法が作れたんだから、魔力で魔力を感知することは出来るだろうということで、早速実験。


 見事に成功しました。昼間森に行ってトンネル出口で魔法発動、魔力のある場所を感知できたので、魔物か冒険者がいる事は分かりました。


 森に行くのにもう一つ必要な物があります、それは刃物です。 


 ビームでも良いのですが、ビームだと焼き切ってしまうので、これからの事を考えると不自然にならない方が良いので、刃物です。


 獲物は当分見せる事はないとは思うんですが、もしもと言う事はあると思うので、石橋を叩いて渡ります。

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