第12話 特許

「こんにちは、こちらが井戸のポンプを作ったお店でしょうか?」


 ポンプと命名したのは俺、父ちゃんにこれ名前あるのかと聞かれたから、ポンプと答えた。


 どういう意味だと聞かれたから、意味はない何となくで誤魔化した。


 外来語だからね、オランダ語のpomp からの借用語。 流体を移動する装置 。


 これは説明できない……。


「そうじゃが 何ようかな?」


「私はグーテン領でパーシブ商会を営んでおります、ライデンと言います」


 ライデンはザック男爵領の取引先の商店からポンプの話を聞き、是非商会で販売したいと家の店を訪ねたらしい。


 この国には特許の法律があるらしく、人の作った物を勝手に作って売ってはならないという。


 それは前世でも同じだけど、こちらは特許の登録をしていないので今なら作れそうだと思うが、ライデンが特許を登録した後にうちが申請すると調査が入り、どちらが先に作ったかばれると、二度と特許の申請はできないし商売の信用を無くすからそれは出来ないそうだ。


 今回は特に多くの証人がいるから誤魔化しようがないというのもある。


「是非、特許の申請と我が商会での販売を許可して頂きたい」


 家としては元々特許の申請は考えていなかったが、申請が出来て不労所得が入るなら、販売は自由にしても良い、だけど特許の申請が男爵領では出来ない。


 商業ギルドがないからね。それをする為にはグーテン領に行かなければいけない。


「特許の登録でしたらこちらで代行します。それでお願いできませんか?」


 普通なら代行なんて頼まないだろうが、商売っ気が少ない父ちゃんはそれならとOKした。


 まぁ騙されても問題ないから、俺もそれで良いと思った。


 俺は平穏には生きられないだろうとは思っているけど、出来るだけ目立ちたくはないからね。


 それから、特許の申請から販売に関してまでの契約書を作ってお互いにサインして、父ちゃんが書いた設計図を持って、ライデンは帰って行った。


 すげーあっさりしてたね、まぁこっちがごねないんだから、そうなるわな。


 特許料は通常販売価格の3~5割らしいけど、父ちゃんは2割にしたそうだ、その代わり販売価格を下げてくれと言ったらしい。


 販売価格を下げて尚且つその2割が特許料だから家に入って来る金額は下がるけど、ポンプは使う人が楽になる商品だから、出来るだけ多くの人に行き渡るようにしたいのが父ちゃんの気持ち。


 父ちゃん、カッケー 嘘つきで保身しか考えていない俺とは大違い。


 そう言えば家も商売してるから、商業ギルドには登録してるらしいが、父ちゃんが商売を始める時にグーテン領に行って登録と口座を作ってからは、税金と更新料を納めに1年に一度行くだけだって。


 確かに1年に1~2度父ちゃんがいない日があったような? 知らんのか~~い!


 だって俺ってしょっちゅう昏倒してたから、時間の感覚がおかしかったんだもん。


 ライデンがうちを訪問してから2か月後に父ちゃんが税金と更新料を治めにグーテンに行ったんだけど、一応見ておくかと口座を確認したらとんでもない金額が入っていたんだって。


 端数は別にして白金貨5枚、物価的に円換算すると500万円


 この世界のお金

 銅貨  1枚→100円

 小銀貨 1枚→1000円

 銀貨  1枚→10000円→1万円

 金貨  1枚→100000円→10万円

 白金貨 1枚→1000000円→100万円

 黒金貨 1枚→10000000円→1000万円


 うひょ~~500万円、たった2か月で……。


 家の場合、家庭菜園もあるから月に金貨1~2枚の間ぐらいで生活出来てると思うんだよね。多くても3枚もあれば十分だとすると、約1年半ぐらいは遊んで暮らせる金額。


 これたった2か月の金額だからね。当然これからも増えるから、間違いなくもっと長く暮らせるんじゃない?


 いやいや、それは人として拙い、まして5歳児が考える事じゃない。


 5歳で500万か、ポンプ一台金貨一枚で売って250台、倍の2枚で売ったとして125台か、そんなもんだろうな。


 前世なら一台高くても3万円以内だったけど、この世界の技術だと10万~20万で売らないと割りに合わないな。


 これで異世界定番のリバーシなんて売ったらどうなるんだろう?


 凄く怖いんですけど、絶対目を付けられるよね、特に俺。お金がギルドに入るなら、俺を誘拐して身代金というのが、パターンだよ。


 リバーシは販売する気は今は無いけど、現状でもあり得るから、これは早急にレベル上げが必要な気がする。


 魔法が全属性使えるので一応戦えるドワーフに分類されると思うから、加護のレベル上昇より、取りあえずはそこらの魔物でレベルUPしよう。


 それにはトンネルを早く完成させなきゃ、最近時間が無くてあまり進んでいないんだよね。


 あ! そうか、その前に地下室のポンプも作らなきゃ、本当にトンネルはいつ完成するんだろう?


 地下室と言えば、ポンプもそうだけど、明かりが欲しいんだよね。


 生活魔法のライトがあるから必要なさそうに思うだろうが、生活魔法のライトは魔力をずっと持って行かれてるのが分かるからうざいんだよ。


 だから村のみんなはライトが使えるのにランプを使っています。


 勿論それだけじゃなく、生活魔法は魔力を多く使わないと言ってもレベルが低い人、例えば子供なんてレベルが1~2でしょ、そんな魔力量じゃ直ぐに枯渇してしまいます。


 そうするといつも子供の傍に大人が居なくてはいけなくなるからランプなんです。


 なんでこんなこと言ってるかって、俺の鑑定って(解析)があるでしょ。この解析って超優れものな訳ですよ、解析の能力を検証してる時に偶然見つけた能力の一つに、魔法解析があるんです。


 この魔法解析で魔法を見ると魔法陣が見えるんです。その魔法陣を書き写して、それに魔力を流すとその魔法が発動するんです。


 但し、普通の紙に書いたものは直ぐに燃えてしまって一瞬なんですけどね。


 じゃ燃えない物に書けば継続して使えるという事でしょ。それと魔力を流し続けるのは非効率ですから、魔力の供給源も必要です。


 此処まで言えば理解できますよね。魔道具が作れる可能性を見つけてしまったんです。


 これが神様の狙いの一つですね。魔道具を作らせたいんです。 そうですか 

 そうですよね あはは……。

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