第11話 波乱の始まり

 地下室完成から数日、井戸の水の汲み上げ方法を考えた結果、手押しポンプが最適であると考えたのだが、どうやって? 誰が? 作るかという問題に直面していた。


 この世界の井戸は掘り井戸だから、弁がパイプの先端とポンプの付け根にあればいいから、これさえ作れれば手押しポンプは作れる。


 前世で読んだラノベによく出て来てたから、ネットで仕組みや構造を調べたんだよね。


 けっこう面白いのよそういうの、石鹸の作り方とかシャンプー、リンス、化粧水、蒸留酒の作り方、天然酵母とかね、食用重曹があれば炭酸水だって作れちゃう。


 あ! そうか、金属で作る事ばかり考えてたけど、これ木材と竹でも作れるな。


 気密性をかなり気を付けないといけないけど、試作としてなら問題ないかも?


 問題はこの世界の気圧がどのくらいかだよな、地球の気圧だと10mが限界なんだよな。


 それなら初めから実物大の物を作るより、太い竹と細い竹でミニチュアを作って原理だけ解らせれば問題ないかな? 上手くいけば玩具と勘違いしてくれないかな?


「とー、ふといたけと、ほそいたけがほしい」


 作戦はこうだ。先ずは竹で水鉄砲を作る、水を吸い込む原理から、ポンプを想像する、それを井戸に使えないかと誘導する。


 大雑把にはこんな感じ。 どうだ?


「竹で何をするんだ? 前にもなんか作ってただろう」


「おもちゃをつくる」


「おもちゃね~~マークが作るのか?」


「そう、ひらめいた!」


「あはぁはぁ!そうか、閃いたか、良いだろう用意してやる。どんなのが欲しいんだ」


 俺は父ちゃんに、水鉄砲に丁度良さそうな竹の太さを教えた。


「かー いらないぬのちょうだい」


「いらない布? 何に使うんだい?」


「おもちゃ」


「ボロキレで良いのかい? それならあげるよ」


「それでいい」


 良し! これで材料は揃った、後は作るだけだ。


 水鉄砲なんて超簡単、魔技を使うことも無くものの1時間で作ってしまった。


 でもこれは本命ではない、本命は手押しポンプのミニチュア。


 一番の難関は弁の製作、それもパイプの中に作らなければいけない先端の弁、厚すぎても、薄すぎてもいけない。


 厚すぎると上がらないし、薄すぎると圧に耐えられない。それと開閉できるようにしないといけないから、これの加工が一番難しい。


 いや~超難しかった、出来たのは良いけど、これどうやって作ったって聞かれたら答えようがない。どうしよう……?


 5歳児が道具も無しで作れるもんじゃないんだよ、道具があっても普通に無理。


 魔法で作ったからなんとか出来たけど、それでも何度も失敗したからね。


 先ずは水鉄砲で2~3日遊んで、その1週間後ぐらいにミニチュアのお披露目と行きますか、説明できない事が多いけど、そこは「作れた」「出来た」で乗り切ろう。


 どうせこれからこんな事が多くなるんだろうから、うちの子天才で片づけてくれるように仕向けるしかない。


 お披露目当日、畑でミニチュアで遊んでいると母ちゃんが畑にやって来た。


「マークそれは何だい?」


「おもちゃ」


「ちょっと見せてくれるかい」


 母ちゃんはポンプのミニチュアを俺がやっていたように使いながら、段々真剣な顔に成って行った。


 そして黙ってミニチュアを俺に返すと家の中に戻って行った。


 暫くして戻って来たのは母ちゃんだけではなく、父ちゃんも一緒だった。


「マーク そのおもちゃエンターにも見せてあげて」


「うん いいよ」


 父ちゃんは母ちゃんに使い方を教えてもらいながら、ミニチュアを操作した。


「こ! これをマークが作った?」


「うん、そうだよ、おもしろいでしょ」


 あくまでも、玩具という設定は崩さない。


 少し離れた所に移動して、二人はそこから真剣に話し始めた。


 多分井戸に使える事に気づいたよね。


 二人は職人だし、物作りに長けてるドワーフだもん、気づかないわけがない。


「マークこれ少し借りていいか?」


「え~~~ぼくのおもちゃなのに~~」


「また竹でも何でも欲しい物を採って来てやるからな、な!」


「もう~しょうがないな~~」


 よし! これで俺はお役御免かな? 


 後は大人が考えて、あれ? 地下室の井戸のポンプどうしよう? しょうがない材料は揃えてくれるって言ってたから、地下室のポンプは木製にしよう。


 またあの作業をしないといけないのか、まぁ今度は普通サイズだからミニチュアよりは細かくはないから機密性だけ注意すれば作れるだろう。


「ふむふむ、ここがこうなって、こうなるから、水が出るのか」


 父ちゃんはポンプのミニチュアを動かしながら構造と仕組みを調べていった。


「エンター、あの子の頭の中はどうなってるんだろうね? 何日か竹で作った玩具で水を飛ばして遊んでるかと思ったら、これでしょう」


「モリーよ、マークはこれを玩具だと言っていたが、これは玩具で終わる物じゃない、モリーもそう思ったから、わしを呼んだんじゃろ」


「エンター私ね、マークは天才なんじゃないかと思うの、小さい時からちょっと変わった子だったけど、読み書き計算を少しづつ教えようと思ったら、覚える速さが尋常じゃないのよ。そしたら今回のこれでしょ。マークは他の子のように育てちゃダメなような気がするのよ、だからこれからはマークのやりたいことは出来るだけやらせてあげない? 出来るだけ止めないで……」


「そうじゃな」


 両親がこんな話をしているとは知らなかったが、それから1週間後父ちゃんは青銅でポンプを作り上げていた。


 流石、鍛冶屋だね錆びにくい金属を使ってる。パイプは鋳型で作ったんだろうか?


 さらに数日後、近所の井戸にポンプがつけられ試験された。


 その結果は最良で近所で評判に成り、それが瞬く間に村中に広まり注文が殺到して、父ちゃんは仕事に追われた。


 その騒ぎが落ち着いた、1か月ぐらい経ったある日、一人の商人がうちの店を訪問した。

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