第6話 村デビュー

 3歳に成って少し経った頃、朝食の時に母ちゃんが、


「マーク 今日は昼食の後出掛けるからね」


 お? 出かける? 何処に? 今まで家の周辺しか駄目って言っていたのに?


「どきょに?」


 俺は? な気持ちが体に出たのか、首を傾げながら母ちゃんに聞いた。


「今日は収穫祭があるんだよ。去年まではマークがまだ小さかったから出かけなかったんだよ」


 お~~収穫祭! お祭り! これは是非見て見たい。この世界の事がもっと分かる大チャンス、村デビューですよ!


 父ちゃんの店の客か近所の奥さんと母ちゃんの井戸端会議しか見ていないから、まだ俺ぐらいの子供は見たことが無い。


 近所には大きな子供ばかりで母親とは一緒にいないから殆ど見る事が無い。


 勿論、ドワーフじゃないよ、この村でドワーフは家だけ。


 ドワーフって元々少ないんだって、それに多くても2人ぐらいしか子供を産まないから、人口が増えないそうです。


 エルフは子供が出来辛くもっと少ないかも、しかし寿命が短いけど同じぐらいの人族や獣人は2~3人は子供を産むので人口は増えています。


 勿論ハーフもいますよ。ハーフの場合特殊で種族特性のどちらが多く出るかで寿命も色々で、子供の出来やすさも変わってくる。


 種族的なことは後から聞いたことです。


 この頃知ってたのはドワーフがこの村には家だけと言う事だけ。


「うひょ! うひょ!」


「何言ってんだろうねこの子はそんなに嬉しいかい?」


 あれ? 俺言葉に出てた?


 村デビューの、あまりの嬉しさに態度と共に言葉に出ていたようです。


 こう言う所は体に引っ張られているな。


 言葉にするのが恥ずかしくて、短い指のVサインで返して置いた。


「お~~すぎょい」


 沢山の人や沢山の屋台が広場にひしめき合っていた。


 お! 子連れの獣人がいる。


 あれは何系なんだろう? 耳が尖っていないから熊系?


 あっちの獣人は犬? 狼?、猫耳少女はいないのか?


 エルフはいないな、やっぱりこの村は人族が一番多いな。


 そんな事を考えているとひと際良い匂いが漂ってきた。


「かーありぇにゃに?」


「あぁあれかい、ホーンラビットの串焼きだね」


 お~~~異世界定番の魔物の串焼き、これは是非食べて見なくては。


「かーありぇほちい」


「串焼きかい、いい匂いだね1本食べようか」


「1本おくれ」


「はいよ、1本銅貨3枚だ」


 あ! そうか俺お金の事全然知らないや、家にだってあるのに全く気にしていなかった。


 まぁ3歳児がお金のこと聞いたらおかしいから良いか。


 銅貨3枚で串焼き1本か、そういえばこの店もそうだけど、殆どの店に商品名や値段が出ていないな。


 これってもしかして読み書き計算が出来ない人が多い世界?


 家の両親は両方とも読み書き計算は出来るのは知っている。


 計算は商売をしてるんだから当たり前として、読み書きは手紙のやりとりをしてるから当然出来る。


 そう言えば手紙のやりとりは誰としてるんだろう?


 じいちゃん、ばあちゃん? それとも父ちゃんや母ちゃんの兄弟、姉妹、兄妹?

 聞いたことないな? 訳アリ? 駆け落ち?


 そんな思考をフル回転させていた時、母ちゃんが指さして、


「マーク5歳に成ったらあそこで洗礼を受けるんだよ」


 あそこか、村だから大きくないけど小奇麗などう見ても教会という建物があった。


「ちぇんれい?」


 知ってるけど知らない振りして母ちゃんに聞いた。


「そうだよ、5歳に成ったらあそこで職業を授かるんだよ。良く分からないだろうけど、どんな職業でもマークの好きに生きたらいいからね」


 そうなの? 家は鍛冶屋を経営してるんだから、当然俺が後を継ぐものだと思ってたけど、それにチートはどう見ても生産向きなんだから当然俺はそのつもりなんだよな。


 敢えて無視していたけど鑑定の横の(解析)ってどう考えても、これで何かやれってことでしょ。


 それに、魔技で物作りしたらレベルが上がるんだよ、店を継いだ方が良いに決まってる。


 鍛冶カッコいいじゃん、刀とか作ってみてぇー、 男のロマンだよ。


 その後この際だと思ったのか母ちゃんが村の中を色々見せてくれた。


 その度に面白い物を見つけ


「うひょー」


 とか言ってる俺を見て微笑んでいた。



 今回の村デビューでの収穫は、ミルクや玉子があったから、そういう生き物がいるんだろうとは思っていたけど、見た目は地球の物とは違っていた。


 俺からしたらどう見ても魔物に見える。家畜化してるんだから魔物とは言えないのかも知れないが……。


 だって牛は足が6本もあるし、鶏は足が3本、思わず馬じゃないけどスレイプニルと八咫烏か~いと言いそうだったよ。


 そう言えば豚はいなかったな? もしかして豚肉はオークていうパターンかな?

 もしくはボアという可能性も……。


 家の食卓にも肉類は上ってるけど、何の肉か聞いたことなかったな。


 ドワーフの3歳児は歯や胃腸が丈夫だから、もう大人と同じ物を食べている。今日食べたホーンラビットの肉も食べた事があった。


 食事情について言って無かったね。 誰に?


 基本味付けは塩とハーブ、発酵食品は無し、当然ながらバターやチーズも無し。


 ミルクはあるんだから作れよ! と言いたい。


 主食はパン、芋も結構食べる、芋は前世で言うジャガイモなんだけど、母ちゃんは違う名前で呼んでるけど、俺の中ではジャガイモ。


 その事で一言申したい、野菜の名前が短縮英語風というのはどうしてなの?


 だってね、ジャガイモ=ポテ、ニンジン=キャロ、キャベツ=キャベ

 豆=ピー、かぼちゃ=パンプ、玉ねぎ=オニ、他にもあるけど殆どこんな感じ。


 まぁ分かり易くて良いけどさ。


 飯テロも行けそうだけど、わざわざね~~ でも自分の食生活は充実したい。


 元日本人としては味噌、醤油は欲しい。最も欲しいのは米、これは自分で探すしかないよね。


 母ちゃんに説明するのもおかしいしね、今回は収穫祭だったから、収穫が済んでいたから、米が飼料とかに使われていたら分からない。


 甜菜もあるかな? 




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