第1話「出会い」

朝、いつも通り眩しい光がカーテンの僅かな隙間から俺の目元を照らす。

眩しいけど、この方法が1番目を覚ましやすい。

重い体を起こし、俺はいつもよりテキパキと支度をする。

今日は幼なじみの2人と買い物に行く予定があったからだ。

時間に余裕を持たせ、俺は支度を済ませた。

あとはインターホンが鳴るのを待つだけ__

胸に期待を持ちながら俺は幼なじみを待った。


階段から眠そうな足音が聞こえてくる。

「お兄ちゃん朝早いね。今日はお出かけ?」

妹が眠そうに目を擦りながらリビングへと降りてきた。

「まぁね。2人と買い物に行ってくるよ。」

「■■ちゃんと■■くんか!!楽しんできてね」

妹はそう言うと冷蔵庫から野菜ジュースを取り出す。


数分後、ピンポーンとインターホンは音を鳴らした。

「あ、来たみたいだね!いってらっしゃい!お兄ちゃん!」

妹はそう言い俺を玄関まで見送った。

妹に手を振り返し、俺はドアノブに手をかける。

「おはよう綴。」

「おはよ〜!昨日はよく眠れた?」

幼なじみの■■と■■が笑顔で俺を迎えた。

「あぁ、おはよう。よく眠れたよ。」

俺はそう言って2人の元へと足を進めた。

2人は笑顔で歩き出した。

「そっか!それは良かった。私は怖いよ、」

「僕もたくさんね、たす?け」

そう言って■■は優しく微笑む。

血の香りがする。

「2人はどうして傷だらけなの?」

俺は■■と■■にそ、いた

「それは、


綴が助けに来てくれなかったから。






____るくん、

__づるくん目覚ましなさい。


暗闇の中、声だけが聞こえる。


_綴くん、聞こえてる?


あれ、ここはどこだっけ。


「信条 綴くん、聞こえてますか?」

俺はハッとする。目の前には見知らぬ女性が座っていた。どうやらこの女性が俺に話しかけていたようだ。

「綴くん、私の声は聞こえてる?聞こえてるなら頷いて欲しいな。」

俺はその人の言う通り頷いた。

しかし、ここはどこだろうか?確か、幼なじみの水戸と春樹と出かけていたはずなのに…

「そう、良かった。」

女性は安堵した表情をした。

辺りを見回すとここはどうやら事情聴取をする場所らしい。ドラマで見たことあるものに似ている。冷たい色の部屋、目の前の女性、端の方にいる男性警官。

自分の手を見下ろすと、覚えのない傷が沢山あった。その傷を見た途端、痛みが俺を襲い意識がハッキリとしてきたことがわかる。

「どうやら、記憶が混乱しているみたいだね。無理もないよ、あんなことがあったんだから。」

女性は俺の顔を見ながらそう言った。

あんなこと…?あんなこととは、何があったのだろう?何も思い出せない。

「…どうやら思い出せないみたいだから、一緒に整理しようか。まずは、事の発端から…」

女性はペラペラと喋り出す。

どうやら、何があったのか教えてくれるみたいだ。もしこの人が嘘をついていても俺にはわかる。だから今この状況を知るには話を聞くのが1番だろう、そう思い俺は静かに女性の話を聞くことにした。


「事の発端は6月12日、君の幼なじみである解峰 水戸ちゃんと剣城 春樹くんが行方不明になった。このことは覚えているかな?」


水戸と春樹は俺の幼なじみの名前だ。しかし、2人が行方不明…?


「…これも覚えてなさそうだね。まぁ、話を進めれば思い出すかもしれないし、このまま行こう。その日の夜、君は2人と連絡が取れなくなり違和感を覚えた。そして、2人を探しに出た。」

これにも覚えがなかった。しかし、この女性は嘘をついていない。どうやら本当のことのようだ。

「君は幼なじみとの最後のメール、『欲しかった本が買えた。』という解峰さんからのメールで本屋さんに行っていたことから、近くの建物を隅々まで訪ねた。その結果、次の朝まで彼女らを見つけ出すことは出来なかった。」


……痛い。手の、身体中の筋肉と傷が悲鳴をあげていることに気づく。


「そして次の日の6月13日、朝5:12。君は雨の中血だらけで倒れている2人を見つけ、すぐさま警察に連絡した。そして、疲労とショックで意識を失った。こうして君はここに連れてこられた。」

…そうだ、俺は見たんだ。

大好きな幼なじみが雨の中、血の中で倒れているのを。傷だらけなのを。

雨水に滲む血を見たことを。思い出した。


「どうやら思い出したみたいだね。」

「2人は…無事なんですか…?」

俺は疲れきった体からこの言葉を絞り出した。

「命に別状はなかったよ。が、意識は戻っていない。」

女性は深刻そうな顔でそう言った。

俺は、これ以上声を出すことが出来なかった。

誰が2人を?どうして2人が?どうして俺はその場にいなかった?

頭の中であらゆる感情がグルグルと回る。

それと同時に胃もグルグルと回り出す。

気持ち悪い、今にも吐きそうだ。


「今の君の精神状態はかなり不安定だ。しかし、事件解決のため事情聴取という形でここに連れてきたんだ。」

女性はそう言うと、自身の名刺をこちらに渡してきた。


【虹奈 蘭舞(ニジナ ランブ)

OZ警察所属 能力管理課 課長】


どうやらこの女性は警察のようだ。

しかし【能力管理課】という部署は授業でも聞いた事がなかった。


「…能力管理課はあまり表には出ない部署なんだ。君が知らなくても無理はないよ。」

彼女は俺の心を見透かすように話し出す。

「私たち能力管理課は君達が巻き込まれた事件を調査しているの。この事件を解決するために、君の力を貸してほしいんだ。」

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