第1章 地獄の海外出張編
第1話 ステータス
自分語りで大変恐縮だが、まずはボクの自己紹介をもう一度しておこう。
僕の名前はラフ・フォックス。通常キツネ。
どこにでもいる脂ののった30代後半の、ゲームやサブカルが大好きなよくいるおっさんだ。
職業は外資でIT関係の会社に勤めていて、アプリや電子ツールにおけるプロジェクトの
元々はゲーム開発やVR関係などのエンタメ系コンテンツのディレクターを14年ほどやっていたのだが、何の縁があってか、今はそんな仕事をしている。
学生の頃、英語の成績は最下位。見かねた親が、実費で英会話スクールに通わせるも、日本語もろくにできない勉強大嫌いな少年の僕が、真面目に英会話などするわけでもなく。毎月親に8千円の月謝をどぶに捨てさるという悪い息子だった。
そんな罪を犯したからだろうか? 神は見かねた僕を20年越しにお仕置きすることにしたそうで、今はマレーシアを本社に持つ、とある会社に勤めている。
当然、マレーシアで使われる言語は英語と中国語、そしてマレー語とバイリンガルな国であり。大人になってもややコミュ障をこじらせている僕は、毎日カカシのようになりながら、なんとか仕事をこなしていた。
そして今の会社に入社して1年半が経過したという頃。
一つの転機が訪れる。
会社で新しいプロジェクトが始まったのだ。
◆
「あ、キツネさん。来月から新しくプロジェクトが始まるので、新チーム結成となります。」
そう、にこやかに告げたのは、上司(仮に上司Xとする)だった。
「新チームとなると、ちょうどAさんやBさんがアサインですかね?」
「そうですそうです。キツネさんはいつも通り、プロジェクトのPMとして活躍してほしいんです」
「了解です。要件の方もさっき資料を大体確認しました。無理なくできるかと思います。」
「よかったです。ではそこで相談なんですが…チーム内で顔合わせと企画説明も兼ねて、キツネさんには是非、私と一緒にマレーシアに飛んで欲しいんです」
「…ええっと、いつでしょうか?」
「企画が始まるのが4月からなので、4月上旬で」
「4月!?」
この話しがあったのは3月下旬の頃だったが、困った問題が起きていた。
僕はこのころ、丁度15年住んだ1Kアパートを退去し、念願の新しい賃貸へ引っ越しを予定していたのだ。
引っ越しの予定は4月8日。当然前後に手続きや処理関係が多発し、とてもじゃないが海外へ飛んでいる余裕などない。
おまけに数年前に鬱と、メニエールという奇病にかかり、三半規管が弱い為か、長距離の飛行機は乗ることができず、毎月通院もあってか非常に微妙な気持ちでいっぱいになった。
「あー前もって連絡してたと思うんですが、来月は8日に引っ越しがあるんで諸々含めて無理ですね…」
「はい、なので1週間ずらしました! 飛行機の予約はもう取ってあるんで!」
「え、あ……」
ブツン
こうして僕は、マレーシアに飛ぶこととなった。
フライトは4月17日。
人生で社会人になって初めての海外出張。
すべてが唐突に、かつ濁流のように決められ、僕は当日まで頭を抱えながら、医者に多めに薬を処方されることとなる。
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