第2話 魔法精霊少女は、おもちゃの魔法ステッキから炎を出す
前略、母さん
陶兵です。
理由あって今、異世界にいます。
で、今、目の前にはめっちゃ可愛い12歳くらいの女の子がいます。
ただ、その娘、羽が生えてます。
あと……もっと驚いたことに、俺の背中には……
「だめだ、俺、母さんにあわす顔がねぇよ!」
俺は天を仰ぐ。
真っ青な空と、真っ白な太陽。
太陽の光を浴びて、キラリと光る俺のガチャマシーン。
爽やかだぜ。
……って、現実逃避してる場合じゃねえ。
こんな姿になってまで生き恥晒したくない。
「ね、あなた。落ち込んでる場合じゃないの。あなたは選ばれた者なの!」
フェリアスとかいう女の子は、俺の鼻先にステッキの様なものを突き付けて、そう言った。
淡い紫色した☆マークが散りばめられた柄。
ステッキの先端には丸い宝石が埋め込まれていて、俺の顔が映り込んでいる。
まるで魔法少女もののアニメに出て来る魔法ステッキって感じだ。
「選ばれた者?」
「そう! シルウェストリス神話第一章・第二項! 魔王現れし時、伝説のガチャマシーンを背負いし勇者降臨す! 知らないの!? あなた相当なもぐりね!」
もぐりって……
俺は、埼玉県さいたま市大宮区の普通の高校一年生、小杉陶兵だ。
と、自己紹介しようと思ったけど、やめた。
それどころじゃねぇ!
フェリアスの背後の茂みから、ゴブリンの大群が飛び出して来た。
目がぎらついてる。
仲間を黒焦げにされた復讐に燃えているに違いない!
「アブねぇ! 後ろ!」
フェリアスは俺の声とともに片足でグルリと反転し、ステッキを振りかざす。
「エクスファイア!」
詠唱と共に、ステッキから業火がほとばしる。
「ぷぎゃ!」
「めぎゃ!」
「ぽぎゃ!」
北斗の拳の雑魚キャラみたいな断末魔を上げ、黒焦げになるゴブリン達。
「はい。残念でしたー!」
フェリアスは三白眼で、燃えカスになったゴブリンを見下ろす。
「残念でしたって……」
俺は目の前で起きたことがイマイチ理解出来ん。
「今のは……一体?」
「ちょっとした魔法? スキル? みたいな~」
薄紫のロングヘアに、紫紺の瞳、逆三角形の形のいい顔。
白と薄紫色のひざ丈のワンピース。
ランドセルを背負わせたらどう見ても小学生くらいの女の子が強力な魔法を使う世界。
「……もう、受け入れるしかない様だな」
俺は背中のガチャマシーンと、目の前の女の子……そしてこの世界で生きることにした。
◆
「色々訊きたいことがあるんだが、フェリアス」
「なに?」
「その、選ばれし者っていうのは何をすればいいんだ?」
「魔王を倒せばいい」
「で、このガチャマシーンは?」
「トウヘイのスキルだ」
街へ向かう途中での会話がこれだ。
フェリアスは俺の前を、小さな羽をパタパタさせながら進んでいく。
もっと話したいと思った。
だが……
「おいおい、お前ら、ここは俺たちの縄張りだ。金を置いてさっさと引き返せば、命までは取らねぇ!」
突然目の前に現れたのは、凶暴そうな盗賊。
頭が禿げあがりギョロ目で毛皮を着てるのが親分か。
「フェリアス……」
さっきみたいに、ゴオオオって炎を出して蹴散らしてくんない?
「だめだ。次は陶兵のスキルで倒すんだ」
「え?」
「なにゴチャゴチャ話してるんだ! さっさと、金を出さんか!」
親分の陰に隠れて子分の盗賊がわめく。
「くっ……」
俺は背中のガチャを回した。
ポンとカプセルが排出される。
いつもの要領でパカっと開けた。
「え?」
紙が一枚入っていた。
そこには『伸びしろハンパねぇ』と書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます