番犬
口羽龍
番犬
ここは東京郊外の住宅街。昼下がり、文代は近所の主婦と立ち話をしている。いつも通りの昼下がりのように見える。ここは閑静な住宅街で、この時間帯は特に静かだ。多くの人は仕事で出かけているし、大半の子供たちは学校に行っている。
「うーん・・・」
文代(ふみよ)は悩んでいる。ここ最近、靖(やすし)の様子がおかしい。帰るのが遅い。靖は、遅くまで飲んでいるらしいが、本当に飲んでいるんだろうか? 仕事が大変なんだろうか?
「どうしたの?」
隣にいる真世(まよ)は文代の様子がおかしいのが気になった。何か、悩み事があるんだろうか。もし会ったら、話してほしいな。
「最近、ポチが毎晩、変な所に行くのよ」
ポチとは文代と靖の家の飼い犬だ。今の家で住み始めた頃から飼っていて、もう8年になる。長男も長女もポチが好きで、かわいがっている。
そんなポチは毎晩、靖を駅まで迎えに来るのが日課で、一緒に帰るのが定番となっている。だが、帰るのが遅くなってから1人で家に帰ってくる。それに、そんなポチが夜になるとまた別の所に行くという。だが、どこに行くのか、全く見当がつかない。
「ふーん」
「靖と一緒に帰ってくるんだけどね」
だけど確かなのは、靖と帰って来る事だけだ。それを見ると、今日も普通の日常だと思う。きっと靖の帰りが遅いから不審に思って、一緒に帰ってくるんだろう。
「ご主人が恋しいんじゃないの?」
「そうかな? 何か秘密があるんじゃないかと思って」
だが、それは靖が何かを隠しているという証拠だ。靖が毎晩、どこに行っているのか、調べたいな。
「そうね。靖さん、最近帰りが遅いからね」
真世も感じている。靖は帰る途中に何かをしているんじゃないだろうか? とても気になる。
「遅くまで飲んでるんじゃないかな?」
靖は文代同様、よく居酒屋で飲む事が多い。だが、こんなに居酒屋で飲んだことはない。もっと飲んでいるんだろうか? 体に悪いのに。
「だけど、こんなに遅くまで飲むなんておかしいよね」
「うーん・・・。言われてみれば」
真世は首をかしげた。と、文代は何かをひらめいた。真世は文代の表情が気になった。何を考えたんだろう。
「明日の夜、ポチの後をつけてみようよ」
「そうだね」
文代は決めた。今夜、ポチの後をつけてみよう。靖が夜遅くまで何をしているのか、わかるかもしれない。
その夜、文代はポチの様子を見ている。いつ、家を出るんだろうか?今日はポチの後をつけなければ。
文代は食器を洗い終えて、バラエティ番組を見ている。2人の子供は2階のそれぞれの部屋にいる。とても静かな夜だ。だが、靖がいない。靖がいればもっと楽しいのに。靖は最近、帰りが遅い。
その時、ポチがどこかに出かけようとして、玄関に向かった。それを見た文代は玄関に向かった。
文代は玄関を開けた。すると、ポチがどこかに出かけていく。どこに行くんだろう。文代はポチを追いかけ始めた。
「向かったわ!」
ポチは夜の道を歩いていく。ここの夜は暗くて、静かだ。家の明かりがよく見える。それらの家の主人はもう帰っているんだろうか? うちの主人も早く帰ってきてほしいな。
文代は駅前にやって来た。ポチもそこを歩いている。駅の近くには焼鳥屋がある。この店は、文代とよく行った。だが、ここ最近、全く行っていない。どうしてかわからない。たぶん、新しい飲み屋を見つけたからだろうか?
文代は大きな通りから少し入った、狭い路地裏にやって来た。ここに飲み屋があるんだろうか? ここに靖がいるんだろうか? ポチは全く気にせずに進んでいく。
「ここか。一体何をしてるのかしら」
しばらく進んでいくと、小さなバーがある。何やら怪しい雰囲気の外観だ。その前にはポチがいる。ここに靖がいるんだろうか? ポチは靖を待っているんだろうか?
「ここ? こんな所に行ってるの?」
文代はその店に入った。店の名かは何やら怪しい雰囲気だ。いやらしい雰囲気の女性が働いている。
「いらっしゃいませ」
会計にいる女がお辞儀をした。その女は厚化粧で、とても美人だ。
文代は辺りを見渡した。と、そこには女とイチャイチャしている靖がいる。靖は驚いた。文代がここまで来るとは。なぜここにいるとわかったんだろう。
「あなた、何をしてるの?」
「あっ、あっ・・・」
靖は戸惑っている。秘密にしておいたのに、不倫がバレてしまった。どうしよう。
「どうして女とイチャイチャしてるの!」
文代は怒っている。不倫をやっているなんて、絶対に許さない。
「す、すいません・・・」
靖は謝った。だが、文代の表情は変わらない。許していないようだ。
「あなた、帰るわよ!」
文代は靖のスーツを引っ張った。靖はなすすべなく、引っ張られている。そして、がっかりしている。
「ほ、本当にすいません・・・」
どうにか許してくれ。今日の事はなしにしてくれ。だが、それでも文代は許そうとしない。
「話は家に帰ってからね」
「はい・・・」
文代は靖の財布を取り上げ、会計を済ませた。靖は下を向いている。
「ポチ、行くわよ!」
バーの前には、ポチがいる。ポチは何も知らないかのように尻尾を振っている。
「ポチ・・・」
靖はポチを見て思った。まさか、ポチが文代を連れてきたんだろうか? それとも、いつもやって来るポチを追いかけてきたんだろうか? いずれにしろ、今夜はポチにやられた。この後、俺はどうなってしまうんだろう。
番犬 口羽龍 @ryo_kuchiba
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