ep14 詐欺師と大捜索作戦
「うっ、ひっく 」
散歩から帰ってきたら実夕がエントランスで泣いていた。 水性ペンと縄を持って。 失敗した、見せつけにしようと思っていたがまさか優しい心の持ち主が開放してあげるなんてこと考えもしなかった。
「つんつんペンがぁ…… 」
「つんつんペン? 」
彼女によるとつんつん頭にこのペンを僕そっくりにしてあげるよと唆され、つい興味を惹かれてしまった私は下ろしてしまったと。 どんな事情があるかはわからないけど助けてあげないとって思ったから……
善意のように見えてめちゃくちゃ物につられてるじゃねぇか。 でも口には出さなかった。 いつから後ろにいたか分からないが末代まで呪い殺す殺気を感じるからだ。 めっさつって言葉が聞こえそうだ。
「みーちゃん、もう甘い言葉で騙されちゃだめだよ。 お菓子あげるって言ってもついていっちゃだめだよ 」
「う、うん…… 」
雪和はそうっと実夕の頭を撫でる。 これじゃどっちが姉かわからなかった、でもどこか微笑ましい。 そして俺の方を振り向くとさっき感じた殺気再び蘇らせる。 ダジャレじゃないよ。
「さて、目標とする相手は同じなはずです。 もちろん手伝ってくれますよね……? 」
「……はい 」
NOとは言えなかった。 言ったら俺もやられていた。 まあそもそもNOと言う理由もない。
実夕に聞くと外には出ていないからこの寮のどこかにはいるらしい。 ならば簡単、これだけ狭い寮だ。 外に出られるよりは遥かに楽だ。 この寮の構造は2階が女子部屋、3階が男子部屋となっていてあくまで噂だが女子部屋の階には電磁網発射装置がついていて不審な動きを確認したら確保できるようになっているらしい。
というわけで雪和に2階を探索してもらうことにした。 そんなわけないじゃないですかとか言いながら2階に向かってもらった。 俺もとりあえず3階を探すことにする。 まあそんな簡単に見つかるわけがなく。
「3階は無し、とりあえずエントランスで雪和を待つか 」
「やぁ少年、さっきから何を探しているの? 」
声が聞こえた後ろを向くと、白いショートの髪に碧い目の男の子がそこにいた。 その手には紙パックのジュースが握られている。 そして肩からヘッドホンをかけている。 制服の上から灰色のパーカーを着ている。
「あぁ、いやちょっとな…… 人を探してるんだ 」
「どんな人? 」
「つんつん頭……アイツ特徴ないじゃん 」
つんつん頭の髪の毛、若干茶色がかった髪色。 メガネなどはかけておらずさっきまでは制服だった。 そう考えるともしかして俺たちは非常に難関な者を追いかけてるのかもしれない。
「特徴がないなんて心外だなぁ 」
「うるせぇ、お前が特徴ないのが悪い…… あ、そうそうこんなやつってかこいつだよ! 」
つんつん頭はひゅっと俺の縄を避けると壁に激突し、シュワッと溶ける。 幻影だった。
「こんな特徴のやつね、覚えたよ 」
そう言うと彼はヘッドホンを耳に装着し、そっと目を閉じた。
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