ep13 つんつん頭とホログラム

 「私の能力は一瞬で見破ったのにこの人の能力は見破れないんですね、ヘンテコ顔面ローマ絵画さん 」


 ビシュと水鉄砲の音が聞こえて水が後ろにいた方のつんつん頭に当たる。 その瞬間そいつの形が歪になりやがて形があらわになる。 ただの柱だった。


像投影ホログラムの類ですね、あなたの能力 」


「むぅ、なんでばらしちゃうんだよ…… 」


「昨日の借りがあるのです 」


 借りなんて作った覚えはない、昨日助けたことを借りと思っているのだろうか。


「これ濡れタオルです、このペン水性だと思うので水で軽く落ちますから拭いたら顔洗ってきてください 」


「あ、ありがとう。 でもとりあえずこいつを締めないと俺の気がすまないからそこに置いといてくれると助かるぜ 」


彼女は頬をむくっと膨らませると、持っていたタオルで俺の顔をゴシゴシと拭き始める。 タオルが暖かい。 そんなことよりも顔が近い、頬が熱くなるのを感じる。


「これであらかた取れました 」


「あ、ありがとう…… 」


 ご馳走様です、何がとは言わないが。 捕まえていたつんつん頭の方を見ると、ペンをチラチラとさせてニヤニヤしている。 その姿は「またやってあげようか」と言わんばかりだろう。 また腹がたったので、そのままロープで縛り上げてエントランスに吊り上げておいた。

 その後何度か偽物に騙されそうになったが、何となくあいつの能力がわかった気がする。

 光の焦点を作り上げて偽物の像を作り上げる、そんな感じだろう。 簡単に言うと虹のようなものだ。

 とりあえず昨日入れなかった風呂に入り、やりたいことも特にないので今日はこの辺を散歩でもしようかな。

 部屋に戻ると、部屋の中が少し埃っぽかった。 まあ昨日掃除してないからきっとそのせいだろう。 とりあえず、窓を開けて換気しよう。


 俺は大事なことを忘れていた。


 窓開けた瞬間に強風が入り込む。 その勢いで直線上にあるドアまで吹き飛ばされる。 すっかり忘れていた、


「ああ…… やっちまった…… 」


 外を見ると猫とかゴミ箱が空を飛んでいる。 そこに人がいないのが幸いだ。 俺はゆっくりと猫とゴミ箱を地面におろし、能力を徐々に下ろす。

 俺はすかさずポケットからスマホを取りだし、この辺一帯の天気予報を調べる。 案の定突風警報が出ていた。 でも突風が吹き荒れていたのはこの辺だけのようだった。 前に忘れていた時は東京全てを今のような突風が吹き荒れていた。


「さすがにまずいな…… 」


 でもどうしようもない。 俺は重たい体を動かし風呂に向かうことにした。

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