ep5 3つ子と肉まん
肉まんをおもむろに貪りながらじーっと目を見つめてくる女の子がいた。 身長171cmの俺の胸のあたりの身長で、まだ新品相応のうちの制服に身を包み大きいバックを背負ってる。
「……なんの用だ? 」
沈黙、もぐもぐしてるだけ。 最後の一口を放り込む。 それをごくりと飲み込むと、カバンのポケットから水筒を取り出し、ごきゅごきゅと飲み干す。 その様はまるでハムスターのような可愛さ、小動物の愛くるしさを感じた。
「あんまりあの子に近づかないで 」
「え? なんて……? 」
小さくか細い声。 はっきり聞こえた、聞き間違えかもしれない。 そう思うのは彼女の目からは一切敵意を感じないから。 そう、まるで
「どうしてもあの子と友達になるなら止めつもりはない。 でも裏切った時は覚悟しといてね 」
半端な気持ちで友達になるなということだろうか。 余程あの子に執心なのか、独占欲からくる保護愛なのか。 俺にはわからない。
「あ!ゆきー! ゆきがどっかいっちゃったから迷子になっちゃったんだよ! 」
「待ってて言ったじゃないですか…… 」
この子の名前はゆきというのか、なるほどなるほど…… 俺もゆきちゃんと呼ぼうかと思ったが咲夜に殺されそうな気がするので辞めておいた。
ゆきはカバンを開くと彼女にも肉まんを渡した。
「実夕は知り合いなのか? 」
「ひもうふぉふぁふぉ 」
「みー、食べてる時は喋らない 」
春の暖かい空気から一転、マイナス以下と思わせる冷たい殺気、間違いない。
「まあまあ」と宥めながら実夕はごくりと飲み込むと、一息ついた。
「三つ子の妹の
「……三つ子? 」
一度の出産で3人生まれた子、または一腹に同時に妊娠した三児のこと。 検索したらそう出てくるはずだ。 つまりこんな感じの子がもう1人…… 雰囲気も性格も真逆、でもどこか似ている気もしなくもない。
「似てないのもそう無理はないですよ。 私ともう1人が2卵生双生児で、みーが1卵性双生児ですから 」
「なるほど、でも身長とかは同じくらいなんだな 」
「小さいとでも言いたいのですか? 」
「ごめんなさい 」
気だけで殺された、怖すぎ。 身長とかは体重はタブーな女の子が多いらしい。 咲夜は自分から明かして勝負しに来てたからそんなもんかと思っていた。 尽く俺に負けては泣いてたっけな。
「小さい方が女の子は可愛いもんだよゆき 」
「うるさいです。 こんなに沢山寝ていっぱい食べても体重が増えるだけで身長は一切増えないのです 」
「ふくよかには見えないから大丈夫ですよ、私は好きですよ 」
にこやかに咲夜が微笑む。 身長はほぼ俺と同じ、しかも同年代にしては恵まれた体つきをしている。 そんな人に言われれば誰だって反抗したくなるものだ。 ほらみろ、今にも凍り付かせそうな雰囲気を醸し出している。 こいつ人の心読めるくせして空気読めないのかよ!
「そんなことより、なぜ目の前に寮があるのに入らないのですか? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます