ep6 詐欺師と守護者
実夕に目の前が寮だということを説明すると、彼女は顔を真っ赤にして「あたしのこと騙したんだー!」と言って走り去った。
「滅殺します 」
「誤解だ! 」
彼女はポケットから拳銃を取り出して銃口を向ける。 俺は銃に驚いて腰を抜かして尻餅をつく。 体が危険だと感じたかのように耳鳴りがし始める。
――――
そう心から聲が漏れた。 陽菜って誰だ……?
「あなたも近づかない方がいいですよ、この人の身が惜しければ 」
「そんなことしてても直に風紀局が来るわよ、そしたらあなたは法務局の学生裁判にかけられて逮捕されるわ 」
「この銃は実銃じゃないから大丈夫ですよ。 ただの水鉄砲です 」
ただの実銃には見えないほどの重厚感、何より俺に向けられた殺気が本物だった。 その水鉄砲に詰められているのは本当の水ではなく酸性、あるいはアルカリ性の刺激性の液体なのだろうか。 もしくは彼女の能力発動のための
「お察しの通り普通ではありません。 ですが、この銃単体では基本無害です 」
彼女は上に銃を向けてトリガーを引くと水の塊が銃口から勢いよく発射された。 その瞬間彼女の目がきらりと光り、上に発射された水が弾けて勢いよく落ちてくる。
「入学前に傷つけて申し訳ありません、これに懲りてあの子に一切近づかないでください詐欺師さんたち 」
「違うつってんだろうが……!! 」
手を上に掲げ、手のひらから内側に巻き込むような風域を作る。 水の玉は風域に触れた瞬間ガラスのように砕けて粉々になる。 ひんやりとした冷気が風域から伝わってくる。
「条件はわからないけど、水分のある物を凍らせる能力ね 」
「そうです、あなた方の体内にある水分を凍らせる事も容易いことです 」
「いいや、それは無理だな。 お前の能力は大方指定位置の座標にある水分を凍らせることはできても位置がわからない物を凍らせることはできないんだろう 」
「そこまでわかっているからその拘束具を外さないんですね 」
鳥肌がブワッと立つ。 その瞬間俺は無意識に咲夜を左手で突き飛ばした。 上から雨粒くらいの水滴が肌に落ちる。 その瞬間冷たいなんて言葉では語れない刺さるような冷たさが左腕に響く。 体から抑えられていた力がどんどん溢れてくる。 下を見ると拘束具が地面に砕けて落ちていた。 前からスタスタと雪和が銃を眺めながら歩いてくる。
そして、銃口を俺の眉間に合わせてトリガーに指をかける。
「藍斗!逃げなさい! 」
「このくらいの怪我どうってことない、それに誤解も解かないとな 」
何故かわからないがそうしなきゃいけないっていう気がした。
「私だってみーちゃんのためなら本気を出します 」
空気が張り詰めて苦しい、だがやらなければならない。 その時だった。
「いやああ! 」
と実夕の悲鳴が空に響いた。
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