ep4 迷子と会合
駅から寮まではだいたい10分くらいのはずだった。 俺の分の弁当を食ったはずの咲夜が出店で焼き鳥やたい焼きを買いまくったおかげで30分もかかってやっと着いた。
しかし寮と言えど、一見マンションにしか見えない建物だ。 オマケに隣の建物はマンションやアパートが沢山並んでいる。 方向音痴の人は永遠にたどり着けないだろう。 ちょうど目の前にスマホ片手に彷徨っているセミロングの女の子がいる。 うちの制服着てるしやけに大きいリュックサック背負ってるし多分そうだろう。
いや、小林先輩のこともあるしもしかしたら…… そう思っていたその時ふと目が合ってしまい、きらきらとした目で近づいてきた。
「あの! ここの高校の方ですよね! つかぬことをお聞きしますが、あなたも迷子ですか? 」
「おい、どうして迷子前提として話すんだ 」
「え、だって明らかに迷ってます感してましたもん! みいにはわかります 」
彼女はうんうんと腕を組んで縦に首を振っている。 お前に何がわかるんだと突っ込みそうになったが泣かしてしまったら俺への風評被害が富士山以上にふくれてしまう。 なんか背も小さくてきらきらとした目がまさに小動物みたいでほっとけなくなってしまう。
隣でボソッと「ろりこん…… 」って聞こえた。
「私たち別に迷子ではないのだけれど。 もし迷子だとして、どうして私たちに声をかけたのかしら? 」
「えっとですね、人は多いほうがいいってお母さんが言ってたので一緒に探そうと思って。 それに新しい友達もこうしてできますし! 」
そう言って俺と咲夜の両手をぎゅっと握って、ニコッと笑った。 よく見るととても整った顔立ちをしている。 こんなの男なら誰だって恋という深い穴に落ちてしまうだろう。 理性を保て、藍斗。
「
「鷹雨 藍斗だ、同じ能力科。 敬語はいらない、これからよろしくな 」
「速水 咲夜、私も敬語はいらないわ。 よろしくね」
「わぁ!二人とも能力科なんだね! どんな能力なの? 」
「俺は風を使う能力で、こいつは…… 」
咲夜は実夕の頬をそうっと優しく触れる。 多くの人は能力発動のための条件がある。 こいつの場合は触れた相手のみ発動するという条件だ。 一度触れた相手ならいつでも発動できる。 こいつ曰く思念にはセキュリティのようなものがかかっていて、触れることでそのセキュリティを突破できるのだとか。
ちなみに俺みたいに発動条件がない人もいる。 しいて言うなら力が大きすぎるが故に発動時の細かい制御が非常に難しくなる。 だから普段は腕輪としてつけている拘束具が必要になってくる。 おっといけない、つい自分語りが……
「ふわ…… 心でおしゃべりできるんだ、すごいね! 」
「そうかしら、褒めてくれてありがとう 」
咲夜は心なしか照れているようだ。
その時横から「……ない方がいいですよ」と何かが囁く声が聞こえた。
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