第五十一話 森は怖いところ
俺たちの分隊は奥に進んでいくにつれて深く鬱蒼としている森の中を周囲を警戒しながら黙々と進んでいた。
俺達が補給大隊の進軍から離れて森の中を進んでいるのには理由がある
帝国兵の捕えた山賊達の親玉を探しているのだ
ルイス曰く山賊達の動きはある程度効率化されていてあの正面から突っ込むことしかできない粗野な連中では襲撃タイミングを選ぶことはできないそうだ。なので背後にある程度話のわかるやつがいる可能性が高いのだそうだ
ソイツに捕虜達を売りつける、ないし押し付けてしまえばいいらしい
そんな目的で俺たちは森をかれこれ1時間も歩いているわけだが山賊の痕跡どころか獣道すらない
「おい、本当にこっちの方にお目当ての連中がいるのか?未開の部族でも出てきそうな森だぞ」
俺が先頭を歩くルイスに不満たらたらで文句を言うとルイスが肩をすくめながら振り返りニヤリと笑う
「安心しろ、地政学上この辺りに部族がいたとされる証拠は出ていない。それに、大して広くもない森でいまだに見つかってない部族なんていないさ」
「そう言う話じゃないんだけどな」
「あのー、そろそろ一休みするのが得策だと思うんっすけど」
俺たちが軽口を叩き合っているとヤウンが後ろから声をかけてくる
そう、ヤウンがだ。ちなみにドグも最後尾にいる
俺たちが山賊の親玉と話をつけると決まった時にドグが「貴様らだけ送り出すのは危なっかしいから着いていく」と言って聞かなかったからだ。意外と面倒見いいのか?コイツ
「そうだよ、少し休もうよー」
ベル君も限界みたいだ
「そうだな、ここで休むか」
そう言って俺たちは目についた大きな木に腰掛けた
と、同時に俺の頭の後ろをヒュッと何かが通り過ぎていった
「なんだ!?」
俺が慌てて立ち上がり風切り音が通り過ぎていった方を見ると小さな矢が刺さっていた
おいおい、フラグ回収が早いぞ。未開の部族はいなかったんじゃなかったのかよ
分隊員達はライフルを構えて周囲を警戒するがヤウンだけは欠伸をしながら突き刺さった矢の確認をしている。
「あー、心配ないっすよ。この矢は野生動物を狩るための罠っす。多分、小動物を狩るために低い位置に仕掛けがあったようっすね。腰掛けた時に踏んでしまったんでしょう」
なるほど、罠だから付近に敵はいないってわけね
「にしても、随分とくわしいな」
「コイツは実家がマタギなのだ。森なぞコイツの庭のようなものだ」
マタギ出身で近衛師団の出なんだ……。コイツの人生だけで大河が撮れそうだ
「森が庭なら目当ての相手くらいパッとみつけられるだろ」
ルイスが意外そうな顔をしながら俺も気になっていたことを指摘するとヤウンが肩をすくめてため息を吐いた
「給料以上の仕事はしたくないっす。それにさっきから自分らの後ろを尾けてくる奴らがいるっす。ソイツらじゃないっすか?」
「「「は?」」」
コイツ頭おかしくなったんじゃないかと俺らが疑った時、後ろの草からガサガサと音が鳴った
俺たちが銃口を向けるとガサガサと言う音は大きくなり生き物が飛び出してきた
「な、なんだ。犬かぁ。脅かさないでよ」
いけない、ベル君!それはフラグ…
こう言う時は大体俺らの後ろから人が出てくる
そう思い振り返ると、チェーンのついた片眼鏡をかけこの森には不釣り合いなタキシードを着込んだ男が驚いた様子で目を丸くしていた
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