第十四話 先生

俺が名刺に書かれた住所にマリーを従えて行ってみるとそこは少し寂れているが塀で囲われたおおきめの家があった。


入り口とおぼしき部分にはこれまた錆が目立つがそれなりのサイズの門があり門には家の家紋なのかライオンのようなシンボルまである


あの野郎、あの英国紳士風の格好はエセじゃなかったってことか

だがさっきから聞こえる金物が打ちつけられているような音はなんだ?


まぁ良いそんなことよりあいつとまた話さなきゃならないと思うとげっそりしてくるがここまできてしまったんだ仕方ない


そう思い門を叩いた


誰もででこないのでもう一度門を叩く



やっぱりでてこないので今度はもっと強めに門を叩く




流石にイライラしてきたのでご近所さんにこの家の有る事無い事言いふらしてやろうかと思っていると


マリーの体がぶれた


ドゴン‼︎

と大きな音を立てて門がたたかれた

右を見ると観音開きの門の片側が凹んでいた


え、いやいやいや、そう言うのってジャンプ漫画にしかないんじゃないの!?

てか、今のマリーがやったのか!?いや流石に見間違いか…


て、ことはなに?奇襲か?この家、実はウシ◯マくんみたいな怖い借金取りに追われてて俺は今から怖いお兄さんに連れて行かれて連帯保証人だか相保証だかなんだかを結ばれちゃうのかよ!?いやだよそんなの…俺どうなっちゃうんだってばよ


そうやって一人で盛り上がっていると門が開いて昨日の英国紳士風の男が出てきた。頭には昨日のシルクハットではな耳栓のようなものがついている

その分昨日は見えなかったオールバックの黒髪の主張が強い


「あぁ、もうこんなになるまで門を叩かなくたって良いじゃないか。あぁあー、門が凹んじゃってるじゃないか。高いんだぞこういうの直すのって。」

「ちゃんと3回ぐらい間を開けてノックしましたよ」


俺がそう抗議すると耳栓のようなものを外して男は参ったなという顔で額に手を当てた


「何も射撃訓練中に来ることはないだろ?なんだい?昨日の件の当てつけのつもりかい?冷やかしなら帰った帰った」


自分から名刺を渡して呼びつけたくせに冷やかしとは

ふてぇ野郎だとっちめてやろうか

てか、右後ろのマリーが腕をミシミシ言わせているので一旦話を戻した方がよさそうだ


「あの、えっと色々教えてもらえると聞いたので。戦地に行く前に色々教わっておこうと思って…きたんですが…」

そういうと男は「ほぉ」というと門を開けて手招きをした。


「君は学費はちゃんと支払えそうだし大丈夫そうだ!ようこそ私の私塾へ!兵学、徒手格闘、歴史から算学までなんでもござれさ!」


コイツなかなかキザなやつだが能力は優秀だ、ここまでの古い家を構えている以上

カナリアの出身だろう。だとすれば今のカナリア人が学を治めるのは至難の業だ。



この土地には大学以上の学校は設置されていないしそもそもその学校にすら入ることが許されているのはカナリア人でも一部だ。帝国の占領政策の一環で現地人に知識を与えないというものがある。


なぜってそもそも馬鹿なら現状が不幸せであるということも感じないし今以上の生活水準を知らないから反乱を起こそうという気も起きない。

帝国にとっては好都合な話だ


そういうわけでこの土地で私塾を開けるほどの知識があるというのは逸材と言っても過言ではないのだろう

まぁ、このさびれ具合を見るにそこまで儲かってはいなさそうだがな



そんなことを考えながら案内されるままに屋敷の中に入っていくと教室のようなところまで通された


懐かしいなぁ学校なんて何年ぶりだろうかいじめられて行くのがつらかったから

あんまり良い思い出はないけどやっぱり数年は過ごした空間と似たところに来ると感慨のひとつも感じるというものだ


昔の癖で生徒席の方へ向かうと男は以外そうな顔をした後すぐに教壇に乗った


「さて、これからよろしく。

私の名前はアラスター、”アラスター・レッドラップ”だ。

すまないが君も頼む」


「あ、はい僕の名前はルーク。”ルーク・バックハウス”です。」


お互いに名乗り合うとアラスターはニヤリと笑って

「それで?何を学びたい?やっぱりあれか?酔っぱらいを吹っ飛ばしたあの技か?あぁ皆まで言うな。わかってる。だがあれはすぐには教えられない。なにせ、基礎が大事なんだ。いいかいまず第一に…」


「この国の歴史を教えてください」

長くなりそうだな、と思い話をぶった斬ると

アラスターは眉をピクリと動かした


「なぜ、この土地に昔国があったことを知っている?」

「父さんに聞きました」


するとアラスターは納得したような顔をしてこう続けた


「バックハウスと聞いた時からもしやと思っていたが君フランツ殿の御子息か。道理で賢そうなわけだ。そうだなあの人からじゃ偏った歴史しか聞けんだろうしな

いいだろう歴史を教えてやろう。だがそれに付随して君は体術と射撃を教えてやる」


俺が少しいやそうな顔をするとアラスターは肩をすくめながら

「さっき戦地に行くとか言ってただろ?どうせ帝国の差金なんだろう?奴らの考えつきそうなことだ」


「だがまずはお前の知りたい歴史から教えてやろう。そうだなこの国がこんなことになったのは50年前まで遡らなくちゃならない。」


そういうとアラスター先生の授業が始まった

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