第5話 死闘
一部、内容を変更致しました。
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死霊術師になってからだいたい10日程がたった。
あれからずっと、スキルの検証を行なって来た。
その結果、死霊術スキルについてある程度のことが分かって来た。
先ずは初期で影に入れておける数は5体までで、その内同時召喚は2体までしか出来なかった。
支配出来る対象の制限に関しては、自分が倒した相手なら今のところは100%成功している。
自分が倒した訳ではない、既に死んでいる対象に関しては、自分と同程度、もしくはそれ以下の強さであれば成功し、自分より強い相手には効果がなかった。
化け物に関しては今のところスキルの対象であることは何となく分かって来たが、コレが人間あいて、もしくは知能の高い相手に対して効果があるのかは今のところは検証のしようがなく、不明だ。
そして、検証途中に鑑定の存在を思い出し、ゴブリンもどきを調べた結果、奴の名前が判明した。
名はブラックアニスでどうやらゴブリンではなく人喰い妖精だったらしい。
そんなゴブリンもどき改め、ブラックアニスを検証の為に倒し続けた結果、レベルが51に上がり、死霊術師もレベル6まで上がった。
結果、影の容量が15体、同時召喚数は7体まで増えた。
おまけに奴らのアジトから食料(人肉ではない。そもそも人がいない)も手に入りこの理不尽なダンジョン内での生存率が飛躍的に上がった。
ほんの少し心に余裕が出てきたため、俺は出口の捜索を開始することにした。
捜索の過程でブラックアニス以外の奴らとの戦闘経験を積む事も目的の一つだ。
現状、レベルだけ上がっていても意味がない。其れだけでは生き残れない。
技術と経験が全く追いついていないのだ。
なので場数を踏んで経験を積むしかない。
たとえ死んだとしても確実に次への糧になるのだから。
ここから脱出する為にも利用できるモノは何でも利用しなければならない。臆してはいられないのだ。
今の俺にとってこの命ほど利用しやすいモノはないのだから。
そんな訳で森の中を索敵しながら走り回る。
今回は場数を踏む為に隠密は使用していない。
走り出してからだいたい十数分。
既に2度、戦闘を行い死んでいる。
ただやはり、得るものはある。
極限の緊張感。命の削り合いの中での経験は多くの気づきを与えてくれる。
そうして戦闘をしながら走り続けていると、とうとう奴が現れた。
初日に俺の頭を噛み砕いた熊もどきだ。
すかさず鑑定を行う。
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名前: なし
種族:バラム
LV: 172
MP:6200
STR:12800
VIT:8930
AGI:7260
INT:5100
MND:6620
DEX:4190
LUK:350
スキル:
○獄炎
地獄の業火を自在に操る事が出来る。
○斬鉄爪牙
その牙と爪は鋼鉄すら容易く切り裂ける。
○魔力纏身
任意の属性魔力を身に纏う。
○剛力
STRに高い補正が入る。
○気配察知
周囲の気配がわかる様になる。
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あまりのステータス差に絶句した。
明らかにこの森の中にいる化け物の中でも格が違う。
もしかするとこの森のボス的なポジションなのかも知れない。
俺は粗末な剣を構えなおし、奴の出方を窺った。
奴も此方が臨戦状態になった事に気がつくと、低く唸り声を上げて飛びかかってくる。
襲い掛かるバラムは一瞬で距離を詰めると、右腕を振り下ろしてきた。
俺はなんとか紙一重で避けながら奴の脇腹に剣を振るうも、まるで鉄でできているのかという様な硬い感触とともに跳ね返されるだけだった。
奴は此方に向き直ると口から大量の黒い焔を吐き出した。
俺はそれを近くの岩の後ろに投げ込む事で防ぎ、すぐ様隠密を用いて姿を消した。
流石にこいつ相手にスキル縛りなんて言う舐めプは出来ない。
スキルを使い近くの木の影に姿を隠して奴の様子を窺う。
奴は突如消えた俺を探して辺りをキョロキョロと見回している。
どうやら俺の持つ隠密スキルの方が、奴の持つ索敵スキルよりも上なのか奴は完全に俺を見失っている様子だった。
奴の様子が分かったので、俺はすぐ様、奴の背後へと周り込だ。
そしてスキルによって奴の近くにブラックアニスを召喚した。
「グギャギャッ!?」
ブラックアニスに気付いたバラムは何かをする動作をした。するとブラックアニスの足元から黒い焔が噴き上がり、ブラックアニスは一瞬で消し炭になった。
「囮にもならないか…」
プランを変更して、俺は走って近づきスライディングで奴の首元へと滑り込み、真下からその喉元を斬りつける。
ただ、喉元ですら硬過ぎてダメージが殆ど通らない。
「クソッ!」
すぐに起き上がって体勢を立て直した。
バラムは、起き上がった俺へと大口を開けて襲い掛かり、俺の左肩を噛みちぎる。
襲いくる痛みに耐えながらその左眼に剣を突き立てる。
「ガァァァァアアッッッ!!!」
剣が深く突き刺さるよりも速く、奴の左腕に払い退けられ吹き飛ばされる。
「…カハッ!!」
木に背中から思いっきり叩きつけられる。
意識が飛びそうになるのを必死で堪え、奴の姿を見る。
片目を潰された痛みと、格下相手にしてやられた事に対する怒りからか、激昂しながら全身から黒焔を噴き出していた。
そこから発生した猛烈な熱波に、離れているというのに吹き飛ばされそうになる。
俺は全身の痛みに耐えながら立ち上がる。
一度深呼吸をして、剣を構え直し、奴を見据える。
バラムも噴き出した黒焔を全身に纏うと、此方を怒りで真紅に染まった片目をこちらに向けた。
走り出すのは同時だった。
奴との距離が近づく毎に熱波の勢いが増し、襲いくる熱が容赦なく肌を炭化させる。
炭化し、崩れゆく身体を気にすることなく走り続ける。
バラムも焔を纏った右腕を持ち上げ俺が間合いに入った途端、振り下ろした。
すかさず剣で逸らそうとするも、豆腐を斬るかのようになんの抵抗もなくその爪に斬り落とされ、落ちる刃を右手で咄嗟に掴み取る。
勢いの落ちないその爪を、先程の攻撃で使い物にならなくなった左腕を犠牲にする事でなんとか躱し、右手に掴んだ刃を奴の口の中に突っ込んだ。
全体重を乗せて突き刺した刃は脳へと達した。
バラムが力尽きた事を確認し、俺はすかさず死霊術スキルを使った。
「汝、調伏せよ」
スキルを使うとバラムの下に魔法陣が出現し、眩い光に包まれる。
光が収まると、そこには起き上がったバラムが平伏していた。
それを見届けると俺の意識は遠のき力尽きた。
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