アラカルト15

小林飛翔(Al)

アラカルト15

暗い時代遅れの誇りの部屋


博覧強記の万年筆が語り出すところ、


「以前、私の主はとある立派な人物でした。


その主がどうなったかというと、


天に迎えられました。」


重みを支え続けるだけではなく、暖かさを預けら


れたソファが語り出すところ、


「以前、私の主はとある一角の人物でした。


その主がどうなったかというと、


この世を去りました。」


よく長考という沈黙にうてなとなっていた書斎の


机が語り出すところ、


「以前、私の主はとある由緒正しき人物でした。


その主がどうなったかというと、


他界しました。」


万年筆とソファと机が、まだ企んでいた。


この3人が哀しそうか。


大丈夫。


こまめにあの世と通信している。


え?もう死んでいるじゃないか?


そんなことはない。


私は幽霊となってこの3人と会っているのだ。


え?ものだから、人じゃない?


もう人みたいに話すじゃないか。


「もの」が語り出すというのは本当に自然なこと


だ。


ほら、ごらん。今、後ろの扉が話したよ。


「閉めるの忘れているよ」、ってね。


これで、もう眠れない夜の始まりだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アラカルト15 小林飛翔(Al) @alpacahisho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る