第3話
「院長!
アイシャが!」
職員の1人がノックもなしに院長室に入ってきた。
「落ち着け。
アイシャがどうしたって?」
「アイシャが、部屋にいません!」
肩で息をしながら報告をする。
「なんだって!?」
そう言うなり、部屋を飛び出して行った。
部屋に向かって全力で走る。
部屋の近くには何人かの職員が集まってどこに行ったか、痕跡がないかを探している。
「ここの担当は誰だ!
ちゃんと鍵はかけておいたのか!」
「僕が担当ですが、鍵はかけたはずです。
見回りの副長もかかっていたのは確認しています」
「どうやって……そうか!鍵開けか!」
院長は施設にあった資料に載っていたことを思い出す。
アイシャは他の子供にはない突出した鍵開けの能力を持っていた。
おそらく、自分で鍵を外して出て行ったのだろう。
『アイシャは外に行きました!
カメラに映ってました!』
無線で報告が来る。
この建物がある地域はお世辞にも治安がいいとは言えない。
外に行ってしまっては彼らでは何もできないだろう。
「アイシャ……どうして」
「ここなら、大丈夫かな」
アイシャは孤児院から少し離れたところにいた。
手には施設で作った鞄と、図鑑、そして孤児院でもらった、これからどうやって生きていけばいいかが書いてある手書きの本がある。
「これから、どうしようかな」
アイシャは暗い夜の街に姿を消した。
外への道 ミンイチ @DoTK
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます