第2話

 アイシャが目を覚ました時、知らないベッドの上にいた。


 今までに使っていたものよりもかなり良いもので、起きてすぐに二度寝してしまうほどのものだった。


 二度寝から目を覚ました時、ベッドの横には一人の大人が座っていた。


「おぉアイシャ、目が覚めたか」


 声自体はかなり渋いものだったが、声色が優しいものだったのでそんなに怖くはなかった。


「ここは孤児院で、親がいない子供たちを保護するための施設だ。

 君にはここで生活してもらう」


 建物の中を歩いて紹介しながらそのことを告げる。


「とりあえず、これでも食べろ。

 普段はここまでのものは出せないが、今日は特別だ」


 渡されたトレーには美味しそうな肉と野菜、それと一切れのパンとフルーツが一つのさらに盛り付けられていた。


「何これ。

 これ、本当に食べ物なの?」


 アイシャは問いかける。


 彼女にとって、食べ物とはペースト状のものとゼリー状のものだが、これはそれとは全く違う。


「これが本当の食べ物だ。

 君がいつも食べていたのは、見た目も味も度外視した栄養を摂るためだけのものだ」


 アイシャは渋々、それらを口に運んだ。


 一口食べてからは止められなかった。


「美味しい!これ何!?」


「いっぱい食べていいんだぞ」




 ご飯を食べ終わってから、アイシャには一冊の本が渡された。


 今までアイシャが持っていた図鑑のようなものではなく、文庫本サイズのものだ。


「これは、君が今から生きていくために必要なことがいろいろ書かれている。

 何か困った時はこれを見るといい」



 そのあとは他の子と顔合わせをしたり、勉強をしたりして1週間が経った。


 他の子との関係は良好であるものの、アイシャはどこか疎外感を感じていた。


 彼らと彼女の間にはいろいろな違いがあるからだ。


 常識や身体能力、18時間と24時間1日の長さ、他にも大小様々なところに違いがあった。


「オーロラ、見てみたいな」


 孤児院の敷地からは出られず、夜は窓から空が見えるが雲に覆われて見えない日ばかりだ。


 この1週間、何回もあの施設とここを比べただろうか。


 あそこだと嫌なことも多々あったが、ここで感じる疎外感はなかった。


 ここだと、嫌なことはほとんどないが、疎外感をいつも感じてしまう。



{旅立ち編 第3章

 自分の落ち着ける場所を自力で見つけよう}


 その言葉を渡された本で見つけた時、彼女は決心した。


「ここから出て、自分にあったところを探し出そう」と。

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