Side 軍
第1話
「総員、突入!」
この施設の正規の入り口を突き破って兵たちが入ってくる。
数だけは多いことを活かして、まるで迷路の中を水で満たしていくかのように兵たちが施設の隅々まで行き渡る。
『A班より本部。
重要書類は全て持ち去られた後のようです』
『B班より本部。
データも全て消去された模様』
『C班より本部。
大量の死体を発見。
子供の死体が多く、幾つかの同じ顔も見えます』
いくつもの報告が上がってくるが、指揮官である彼にとって有益な──昇進するのに十分なものは見つからない。
「一体誰がこんなことをしたのだ!」
持ってきていた高級な机に拳を振り下ろす。
彼こそが反政府組織と通じている指揮官だ。
彼自身の指揮能力はこの地位にふさわしいものであったが、生まれがスラム街であるためになかなか出世できずにいた。
そこで彼が頼ったのが反政府組織だった。
最初は組織を利用してやろう、十分利用したらまとめて検挙してやろう、そう思っていたが組織から与えられる嗜好品などを何度も受け取っているうちに組織の忠実な犬になってしまった。
今回の作戦は彼の昇進のために行うように言われているが、実際は組織から離れた研究者のラボも兼ねていて、そこを破壊することで見せしめを行う予定だった。
「どうして何も出てこないんだ!
このままだとなんの成果も無いまま帰ることになるぞ!」
報告こそ上がってくるものの、爆発した重要そうな機械や死体、どうでもよさそうな書類のことしか聞こえてこない。
『外1班より本部。
賊の基地と思わしきところを発見。
場所は突入場所の反対側の地中にありました』
施設周辺の探索班からの連絡が来た。
『タイヤの跡は3方向に分かれており、追跡には幾つかの部隊が必要かと』
「外3班から5班までは探索が終わっていたはずだな。
彼らに追跡の指示を出せ。
1班はその基地を外部から観測して安全かどうかの確認をしろ。
他の班との合流後に内部の探索を始めろ」
腐っても彼は指揮官だ。
詳細を聞き終わるとすぐに指示を出し始める。
「突入班は定刻まで施設内の探索を続行し、少しでも情報を集めろ。
外班は担当地域の探索を終わった班から1班に合流後、賊の基地を探索しろ」
このままうまくいけば、彼は昇進できるかもしれない。
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