第6話
赤暗くなっている部屋をぬけ、子供たちを集めていた部屋にたどり着くと、暗さと赤さも相まってそこはまるで地獄のように見えた。
ほとんどの子供は体に穴を開けてそこら中に倒れている。
もとは白か薄い空色だったであろう壁は赤黒く染まっている。
ここにきていたはずの隊員は噛みちぎられたり引っ掻かれたりした痕がいくつもあり、部屋のあちこちに散らばっていた。
生き残ったのは来る途中で合流できた一人だけだった。
彼は部屋の端にいたから大きな怪我はなかったそうだ。
「アイシャはいたか?」
死体を一箇所に集めながらその死体の中にアイシャは含まれていないかを確認する。
「……いませんね。
それに、どこにいったかもわかりません」
「あの部屋がどこにあるのかさえわかればいいのだが…」
ここに来るまでにいくつもの部屋を探してはいたものの、それらしい部屋を一つも見つけられなかった。
その上、ιたちが全員倒れたので案内役もいない。
コントロールルームのホログラムを見たかぎりではまだ確認していない部屋が、小さい部屋も合わせると40以上あるようだ。
「アイシャがバッタの緊急装置を作動させたのだとすると、あと三時間ほどは寝ているはずだ。
その間に他の部屋を探索しよう」
このまま闇雲に探していたら撤収予定時間が過ぎてしまう上に依頼も一部失敗扱いとなってしまうだろう。
少しでも評価を良くするための追加の資料を探すことにする。
「隊長、これ」
神で埋もれていた部屋で隊員が見つけたのは1組の資料だった。
―――――――
定期報告
個体名:I-1
戦闘能力:基準値を突破
特記事項:なし
追記事項:
・
・
・
個体名:I-3
戦闘能力:基準値を大きく下回る
特記事項:不必要な思想も確認
廃棄処分を申請
追記事項:申請却下
埋葬室への侵入を検知
突出した物理的・電子的解錠能力を確認
経過観察の後、Sシリーズとの合流を検討する
個体名:I-5
・
・
・
・
──────
この書類はアイシャたちの教育担当が書いた定期報告のうち、一番最近のものだった。
1枚の紙に1個体についてが書かれてあり、
「誰か、埋葬室の場所がわかるやつはいるか?」
『コントロールルームの情報によると、隊長がいる部屋の3つ隣の部屋みたいです。
それと、30分ほど前にそこからアイシャが出て、あの子供部屋に戻ったみたいです』
「わかった。
持てる範囲の資料を持っていくから運搬用の簡易車を用意してくれ」
見つけた中で、特に重要そうなものを選んで用意していた袋に入れていく。
「隊長、こっちももう入りません」
「これだけか……
いや、こんなにもだな」
思っていたよりは少ないが、突入前に予定していた量の数倍は集めることができた。
「撤収するぞ」
子供部屋に戻る前に、埋葬室のバッタを回収しに行く。
埋葬室の扉は何かがひっかかっているように少しだけ開いていた。
下を見ると、周りに景色に溶け込んでいるバッタが落ちていた。
このまま触ると緊急装置が作動しかねないので、充電用の端末を操作して緊急装置を切る。
充電端末とバッタを回収して部屋を出る。
他に忘れ物がないか確認していると、換気口とは真逆のところに幾つかの石が置かれていた。
それぞれに大文字のアルファベット1文字が彫られていた。
また、後ろには線が何本も書かれていた。
「隊長?」
「なんでもない」
隊長は目を瞑って少しの間動かなかったが、隊員に呼びかけられると共に動き出した。
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